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「まず最初は大きな帽子をかぶってた娘だね。彼女はリオンちゃん! 現代魔法を使いこなす魔女だって言われてる!」
僕は思い出す。
大きな帽子と聞いて出てくる女の子は駅で大和君と抱き合っていた娘だ。
格好は変わっていたが、ちらりと見た目を思い出すと金髪と青い目が印象的で、とても大人っぽい子だったように思う。
大和君とはなんだかとても親しそうで、恋人みたいだった。
「そして、りんごのヘアピンがお気に入りなのかな? 彼女は早乙女かりんちゃん! この子は改造人間だね! エキセントリックだと思わない?」
「改造人間だと?」
「うん。この中だと、超能力開発されたトッキーが出自は近いかな。もっとも彼女の場合改造してあるのは身体能力だけれども」
「まったく、人間というのはいつの時代もおろかよな」
ホルスト君は馬鹿にしたように言うが、時坂君的にはそこに抵抗はないようだ。
「馬鹿言うな。科学で能力を上げることは別におろかじゃねー。当然のアプローチの一つだ、古いんだよ古代人」
僕は話に入りこむことも出来ずに思い出す。
その顔はなんか気の強そうだった女の子で、大和君と一緒に、歯ブラシとコップをおそろいで買っていた。
茶色がかった短い髪の活発そうな印象の女の子だ。ちなみにツンデレである。
一見すると彼らは新婚さんみたいだった。
「まぁまぁ、そしておとなしそうな小柄な娘は、マリーベルちゃん! 彼女は植物使いらしいね!守ってあげたくなる感じがキュートだ!」
「オカルト組か?」
時坂君は眉を寄せる。ホルスト君が代わりに答えた。
「ふん、オカルトとくくるな凡人。あの娘からは私と同じようなものを感じた。おそらくは超自然的なものを体に宿しているのだろう」
「そうそう。君ほどパワーはないかもしれないけど、その分いろんな力が使えるみたいかな?」
「色んな力ねぇ。漠然としてんなぁ」
「彼女については調査中が多い。ミステリアスなのも素敵だね!」
「お前なぁ」
僕はまたまた思い出した。
まず頭に浮かんだのは大和君に手を引かれて、街中を歩いていた照れ笑いである。
緑色の髪は能力の影響なのかもしれない、小柄な印象で長い髪をした可愛い子だ。
大和君とは間違いなく面識があるのだろう。手を引いて歩いている様子はまるで初々しいデート中のカップルみたいだった。
「そして黒髪眼鏡美人さんは、マイちゃん! 彼女は科学者だ! すっごく頭がいい!」
そして話したことがある顔が出てきたので、僕も勇気を出して発言した。
「僕少しだけ話したよ。いい人だった」
「お前、いつの間に?」
時坂君が一番すばやく反応した。
そして大げさなのがべぇだ君だった。
「ええーずるいなぁ!」
「ふむ、とぼけた顔をしてなかなか行動派じゃないか」
関心した風のホルスト君だったが、僕が思うに浮いた話以前の問題だった。
「いや、軽い雑談程度だけどね……」
しかもその内容は、大和君の解説である。
この娘と大和君の関係は幼馴染という話だし、家族公認と言ってしまえば、かなり近しい間柄だと思う。
「それでー最後が今日戦ってたシーラちゃん! あの娘はシャーマンだねー。霊や妖怪の類を使役する感じの能力だ。オリエンタルな雰囲気が魅力的だと僕は思う!」
そして最後に、鬼に憑かれて、さっき助けられた女の子だ。
小麦色の肌をした彼女は、人種としてはホルスト君に近いのかもしれない。
今現在、彼女はお姫様抱っこで医務室に運ばれて大和君に看病されていることだろう。
「……」
僕は考え込む。
べぇだ君の自慢気なプロフィール紹介で名前と顔を完全に一致させて。
そして思った。
「……えーっと。恋人とかは無理なんじゃないかな?」
「なんでだよー! 大丈夫だってば!」
すぐさま反応したべぇだ君はにこやかにツッコミを入れていたが、目が笑っていなかった。
そして時坂君もホルスト君も何も言わないが、僕の答え待ちらしい。
なんと答えたものか迷う。
しかし昨日から今日にかけて見てきた物をまとめると、どうにも前向きな意見は出せそうにない。
「だって、うちのクラスの女子って、みんな大和君の知り合いみたいだから……」
特に策もなく、オブラートにいちおう包んで事実を言う僕。
だがそう答えた途端。がっしりとべぇだ君が僕の両肩を掴んでいた。
「……そこのところ、詳しく聞かせてもらっていいかな?」
そして圧は、残りの二人からもビンビンに感じた。
「重要だぞ? そこんところ?」
「ああ、面白そうな話じゃないか」
僕はこの後の言葉選びは重要そうだとなんとなく思った。
だけどこう迫られてしまうと、対人スキルの低い僕では隠し事などできようはずがない。
「え? えーっと、だから、クラスの女の子全員と大和君が知り合いなんだ。みんな仲良さそうだったなぁみたいな……」
そして僕は昨日一瞬だけ見たことをすべて白状させられた。
「……」
「……」
「……」
話し終えた後、僕の部屋に動いている人はいなくなった。
さっきまで程よく軽くなっていた空気は、今は鉛並みに重い。
「あ、あのぅ」
僕はさすがに気まずくなって、少なくなった炭酸飲料をちょっと足してみたら、泡がはじける音がしたくらいである。
いつの間にか僕の話に聞き入っていた時坂君が、とても低い声で詰め寄ってきた。
「……するってーとだ。同級生の内、少なくとも4人以上は幼馴染だってことか?」
「ええええ……そして最後の一人には入学前に通学路でぶつかって偶然出会ったって? その日にお姫様抱っことか……」
「その上、教師と姉弟か……」
「う、うん。ちゃんと聞いたわけじゃないけど……」
少なくとも、仲が悪いようにはまったく見えなかった。
べぇだ君は天井を仰ぎ見る。
「うちのクラス、女の子5人しかいないよね……」
脱力しきった呟きに時坂君が答えた。
「ああ。後は俺達、野郎だけだ。上級生も下級生も存在しねー……」
「……こんな不公平って許されるの?」
重々しい声色でべぇだ君は再び問うと、ホルスト君は頭を抱えて呟いた。
「どうかな。だがどうやらこの場は実に有意義だったようだ。戦うとしたらその順番がはっきりしたわけだからな」
「「「……」」」
一瞬の沈黙は、爆発する前の予兆だった。
三人は絶叫する。
「なんなんだ! ハーレム系主人公のつもりかぁ!? おいしすぎるわ!」
「勝負が始まる前から勝ちはあいつの物かぁ!? おかしいだろう!」
「ふじょうりだぁぁぁ!!!」
僕は非常にうろたえた。




