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まったく予想しなかった答えに戦慄が走る。
時坂君も一気に引きつけられたほど、その答えは予想外だった。
「よ、嫁って、宇宙人も結婚とかすんの?」
恐る恐る、だが真っ先に尋ねた時坂君にべぇだ君は大げさな身振りで頷く。
「そりゃするよ! だから地球で強くてかわいいお嫁さんをもらうんだ!」
ホルスト君も力強く語られる宇宙人の生態に興味津々みたいである。
「……な、なるほどな。それがお前達の戦略という事なのか?」
「そうかも! 生存戦略って感じ? でも宇宙人じゃなくても君達だって興味あるでしょ? 恋愛とか」
逆に問い返され、動揺が走る。
かろうじて、わずかに余裕があったのはホルスト君だ。
ホルスト君は見た目落ち着きを取り戻し、堂々と言った。
「興味深い話ではある。が……私ほどとなれば、何をするでもなく女の方が放っておかないだろうが」
一方、時坂君の反応は結構露骨だ。
「い、いや、興味はあるよ? そりゃあ、まぁチャンスがあれば? そう言う事もしてみたいつうか?」
そして最後に僕はと言えば、いまいちぴんと来なかった。というのが本音だった。
「うーん。想像できないなぁ」
本当なら話を膨らませたいところだが、役に立てそうにない。
いや、そもそも今まで友達すらいなかったわけで、人間関係についてはあまり胸を張れるようなもんじゃないわけで。
恋人も遠い話なら、お嫁さんなんて雲の上の話って感じである。
ただ、態度が曖昧な僕らは、宇宙人的には非常に納得いかないものだったらしい。
嘆かわしいと頭を抱えたべぇだ君は大仰に嘆き悲しんだ。
「おいおい! なんだいなんだい! これだから地球人は! ラブは宇宙共通言語だよ! 愛さえあれば、星の差なんてないのとおんなじ!」
「マジでかー?」
「さすがにその発想はなかったな」
「はー……都会は進んでるなぁ。いや、宇宙は都会なのだろか?」
三人で彼の力説に感想を呟いたわけだが、べぇだ君の勢いは止まらない。
「あの校長先生も言ってたじゃない! まず行動することが大切なんだってば!」
「まぁ、そうなのかな?」
時坂君が頷いてしまって。べぇだ君は時坂君を涙混じりに掴んで、今までで最も力強く言った。
「主にHな衝動に従って!」
「あけっぴろげすぎるだろう!」
時坂君はだがしかしすぐに赤い顔でべぇだ君のこめかみをフックでえぐる。
べぇだ君は拳を素通りして疑問符を浮かべた。
「何でー?トッキー?」
「だれがトッキーだ! 大体がな、恋愛云々をおおっぴらに言うもんじゃねぇよ? そういうことはだな、もうちょっとあれだ……胸に秘めておいてだな……」
「超能力者って科学側っぽいのに、なんか徳の高そうな事を言い出したよ、トッキーが」
「だからトッキーって言うな!」
トッキー、もとい時坂君は叫んでくぎを刺す。そんな彼にホルスト君がからかい半分で茶々を入れた。
「許してやれ。本気でこの手の話に免疫がないのだ」
「ああん? そういうお前はどうなんだ?」
「私は元々妻帯者だ。まぁ前世での話だがな」
「うわー……お前それ。口に出していうと、相当痛いぞ?」
「やかましい」
取っ組み合い、ギリギリと力を込めて拮抗している二人。
僕は彼らの会話を聞いていて思った。
なんだかんだ言って盛り上がっている!
僕は戸惑っていたが、同時に深く感激した。
恋愛トークで盛り上がるとか、なんかすごく友達っぽい!
だが僕はやはりまだまだ認識が甘々だったのである。
べぇだ君の本題はまだ始まってすらいなかったのだから。
「まぁでも、心構えとか結構どうでもいいよね! それで? 君らはどうだった?」
「は? どうだったって、何がだよ?」
唐突な質問に時坂君はべぇだ君を見ると、すぐに人差し指でぐりぐり額を押されていた。
「だーかーらー。今日クラスで好みの娘はいたかって話!」
振られた質問に対して、答えを考えてしまうのが人間と言う物だ。
それは僕も例外ではなく、緊張と焦りが混じった微妙な空気が出来上がる。
べぇだ君はこの雰囲気を感じ取りにやりと笑った。
「うんうん! みんなかわいかったよねー! ボクなんてみんな好きになっちゃいそうだったよー」
「ふむ。そうだな。それに面白そうな能力者もそろっていた」
「あ、ああ……。なんか妙なことになって自己紹介も出来なかったけどな」
べぇだ君は十分に周囲の注意を引いたことを確認すると、手のひらからパリッと立体映像のようなものを映し出すあたり、やはり宇宙人であった。
「ふっふっふ! 実はもうちゃんと下調べ済みだよ!」
そして彼がこの場に提示したのは、はっきり言って爆弾にも等しい代物だったのである。
それを目にした時の男子の動揺は相当なものだった。
「な……なん、だと? いやそこまでするか? まずいだろ?」
「引かないでトッキー! 情報は大切! 大切なんだ!」
「ほほう。では聞かせてもらおうではないか」
「以外に乗り気だなお前……」
「それはそうであろう?」
「え、えーっと。じゃあ僕も」
べぇだ君の引っ張り出した情報にはしっかりと女子の顔写真が浮かんでいたのだ。
時坂君とホルスト君は身を乗り出し、僕はその場に正座である。
「そうそう 大分みんな素直になって来たようで何より!」
軽い混乱の後、絶妙に見えそうで見えないタイミングで画面はひっこめられた。
べぇだ君はうんうんと頷き僕らを手招きで集めると、さっそく本題を話し始めた。




