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21話 「戦場の架け橋」 前編

あと少しが終わらない


首都ガンダルムの西門前


 「ぐあぁぁぁ!!」


 「直撃した!! 動けなくなっているぞ。」


 「負傷した魔導士は早く中へと運べ!! 治癒士、代わりはだれがいるんだ!?」


 「ほとんど出払ってここにはもう万全な者はいません。」


 「なんだと! くそっ、配下の部隊をあたらせる。ここを突破されたら王城まで一直線だぞ。なんとかしなければ終わりだ!!」


「直ちに伝達致します。」


 指揮官を任された男は焦っていた。すでに状況は敗戦濃厚であり、最後の砦ともいえる城門だけは死守しなければならないと考えている。予備兵力は配下の部隊のみとなり、いよいよ最後の時が迫ってきたことを覚悟しようとしていた。


 「指揮官、直撃が来ます!! 伏せてください!!」


 「なにっ!!」


 気づいたときには、もう配下の部隊を通り過ぎた砲弾が目の前に迫っていた。死ぬわけにはいかないと最後の抵抗を試みようと飛びのいて伏せる。


 しかし、爆発はおこらず、体の痛みもまったくなかった。恐る恐る振り返るとそこには炎の揺らめきと共に一人の男が立っていた。




 「大丈夫か? ここは俺が代わりに行ってくる。お前たちは死ぬことなく逃げろ。」


 「あんたはっ!!」


 指揮官がそれを認識する前に一人の男は門から出撃していった。


 「・・・ああっ、死神だ。死神が駆けつけてくれたぞー!! まだまだ俺たちは負けていない、終わりじゃないぞ!!」


 「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」




 既に荒野と化している西門の前を抜けて戦場のただなかをグレンは駆け抜けていく。


 「(どいつもこいつも死にたがりばっかだな。これは、少しでも敵を倒しておかないと逃げることすらまずいか。・・・火竜創葬!!)」


 刀を抜き放つと火がまとわり始める。それは周囲へと拡散していき、竜を纏っているような姿へと変貌した。その炎は、歩兵の銃弾もCTRの銃弾もあらゆるものが触れると焼き消えていった。


 「一の太刀、紫電!!」


 敵にかまうことなく戦場を一気に駆ける。しかし、纏わる炎は駆け抜けた跡から広がるように周囲へとあふれ出し、服を、鉄を、機械を焼いていく。


 「ぐぁぁぁ、焼けるぅぅぅ!!」


 「奴を見失うな。あれを放置すれば厄介だぞ!!」


 「しかし、早すぎて追いきれません!!」


 「CTR部隊、どうにかしろ!!」


 「無茶を言ってくれる!!」


 CTRの巨体が、高速で動くグレンをとらえようとする。しかし、銃撃も剣撃も容易に躱される。逆に、差出した腕を切られて戦闘不能になっていく。


 「邪魔だ。三の型、覇黒っ!!」


 グレンは空中にいながら奥義を放つ。地面へと放たれた暴力は周囲に拡散し、兵士、戦車、CTRすらも吹き飛ばしていく。



 周囲の雑音はすべて置いていく。グレンの中にあるのはだた一つの目的のみなのだから。

敵のただなかでどのように前へ進むかを考えていると前方で突然水が沸き上がる。

それは意思をもって周囲の機械派の部隊を吹き飛ばしていった。


 「まだ戦える奴がこんなところにいたのか!?」


 グレンは驚くともに水が沸き上がった中心に降り立った。そこでは、老年に差し掛かる高位の魔導士とその配下の魔法使いたちが奮闘していた。

 彼らはグレンが降り立ったのに気づくやすぐに標的を向けてきた。それを魔導士が制する。


 「貴様、その恰好、その力、火ノ鳥グレンであるまいか?」


 「んんっ、俺のことを知っているのか? だが時間がない。先を急いでいるんだ。」


 「イラストリアの令嬢のことであろう。アクリアから話は聞いているぞ。」


 「っ!?・・・なぜあんたがそれを。それにアクリアって・・・」


 グレンは意外な名前をだされたことですぐに飛び立ちたい気持ちを抑えて、目の前の老人に相対する。


 「初めて会うな。わしはオヴザード・アンデス。娘が世話になったようだな。」


 「・・・あんたがアクリアの親か、マギウスに名を載せているっていう。なんでこんな状況で、マギウスの偉い奴が戦場のど真ん中にいていいのか?」


 「家のことはすべて娘に引き継がせておる。儂は、最期まで戦うのみよ。最期まで使えたこの国でな。」


 そう告げる老人の覚悟はグレンがいままで見てきた覚悟と同じものだった。


 「どいつもこいつも国のため、みんな死にたがりかよ。」


 「おぬしが賭けているものも同じよ。だからこそ儂はここに来た!!」


 「どういうことだ??」


「娘が世話にもなったのだ。ならば、残り少ないこの命を若者のために道を切り開こうというのだ。見ておれい!!」


 そう言うと事前に仕込んであったのだろう、オヴザードの持つ杖の先端に魔法陣が展開され、先ほど見た水流よりも大きく、竜の形をとるほどの意思を持った魔法が周囲に巻き起こる。それは、ただ西を目指し通り道にいる敵を一直線に薙ぎ払っていった。


 「行くがよい。」


 その一言のみ老人は告げる。グレンが何をするのか。それによってどのような状況に置かれるのか。すべてを見据えたうえで、国ではなく少年を選んでいた。


 「・・・わかった、すまない、助かる。」


 「なんのことやら。」


 それだけの言葉を交わすとグレンは敵のいなくなった道を颯爽と駆けて行った。

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