20話 「未来への活路」 後編
8か月ぶりの投稿です。
機械派最前線野営地
首都攻略を最後にすべく野営地にいるすべての人間、兵器は慌ただしく動き回っている。持ちうる全ての燃料、弾薬を積み込み決戦へと送り出す。司令部も小隊規模の指示まで出しておりその忙しさは想像を絶していた。
特にCTRの損耗が激しく、後方から送られてくるなり、すぐさま前線に投入しなければ間に合わないほどの被害だった。今、まさに新しく来た漆黒の部隊が出撃しようとしている。
「スレイプニル隊、出撃準備完了しました!!」
「ジラート閣下、スレイプニル隊、準備完了しました。」
「うむ、把握した。ジンテツ、指令は分かっているな。新型まで用意したんだ、失敗は許されん。我々の未来を決めるこの一戦、かならず令嬢を取り戻してこい。」
管制所で軍団の総指揮を執っているジラートは通信機越しにジンテツへと話しかける。
「わかっておる、そのための我々だ。」
「隊長、各部隊員、いつでもいけます。」
「うむ・・・スレイプニル隊出るぞ!!」
八機のCTRが野営地を後にして戦場へと出撃していった。それに続いて極秘作戦とは言え、最低限の支援がなければ前線までたどり着けないため、補助の歩兵、戦車隊も出撃していった。
「ジンテツ隊長、本当にこの任務で良かったのですか? 我々は隊長に従うのみです。しかし、仇を討ちたい気持ちの方が大きくて納得できません。」
「・・・レイラのことは残念だ。私の誤った判断で彼女を死なせてしまったのだから。」
「そんなことないですぞ、隊長。あれは奴らの卑劣な罠でした。それをレイラが身を犠牲にして私たちを救ってくれた。隊長が責任を負うことではないのです。」
「それでも私は後悔してしまうのだよ。だからこそ、今回は救出の任務を受けた。激情に駆られて無用な殺しをしては彼女に面目が立たないのでな。」
「隊長・・・分かりました、自分はもう何も言いません。副隊長に任命されたからには全力で任務にあたらせてもらいます。」
「助かるぞ。さて、気を引き締めて行くとするかのう。」
「「「はっ!!」」」
スレイプニル隊は捕らわれている大統領の娘の護送ルートとしてもっとも選ばれるであろう西側へと向かっていった。後方から、遅れて支援部隊も出撃した。
首都ガンダルム内
何度聞いたかわからない開戦の合図を聞いてからグレンはすぐさま準備に取り掛かった。今回は戦場へと向かうための装備だけでなくララを救出してから逃亡生活をしなければならないことを考えて、必要最低限の日用品や金銭を身に着けていった。
「火には困らないが衣類や水は貴重だからな。なんとか詰め込んでっと。」
戦闘行為をおこなっても支障が出ない範囲で荷物を詰めていく。それを終えると、最後に自身の作戦を改めて確認する。
「ランスロット達は西門から出たら、向かう先は港街アステルダムだ。そうなると南西方面になる。しかし、そっちの敵は当然逃がさないために守りを固めているはず。ならば西を直進して魔界である山脈沿いに下っていくか?」
首都ガンダルムをずっと西にいくと南の海から北の果てまで南北に広がっている山脈が連なっている。以前グレンがドラゴン狩りをしていたのもこの山脈の一部だった。
「上位騎士あたりが護衛ならば実力が伴っているから問題はないはずだ。それに機械派は戦争が終わる間近で命が惜しいからあまりあそこには近づきたくないだろうしな。」
作戦を確認し終えたグレンは短い間世話になった部屋を後にして街を駆け出した。街中はすでに度重なる砲撃で被害が出始めている。がれきを、戦士たちを避けながら駆けている。
街を駆けて西門へと向かっていく途中で、右往左往する戦士たちの中にルークスを見つけた。
「(ルークス・・・いまさら言葉なんていらないが、たった一人の弟子だ。最後に一言ぐらい声をかけていくか。)」
グレンがそちらへと行こうとしたとき、ルークスもまたグレンに気づいた。しかし、グレンの予想とは裏腹にルークスはこちらへと駆けてきたのだ。
「グレンさんっ! まだ戦場へと発っていなくて良かった。」
「ああ、ルークス。これから出るところだったんだ。」
「そうなんですか、ちょうどよかった。」
「なんだ?」
「これが最後の挨拶になると思ったのでどうしても伝えておきたかったんです。」
「最後・・・か。死にに行くのか?」
ルークスの晴れやかでしかし覚悟を決めている顔を見たグレンは生きてくれと言おうとした言葉を言い出せなかった。
「たぶんそうです。生きる理由がなくなってしまったので、せめてなにか貢献したいと思ったんです。それで、グレンさんにはいろいろお世話になりました。せっかく修行をつけてもらったのにこんな形で終わらせてしまうのは申し訳ないですけど。」
「やるべきことを決めたなら俺からは何も言えないさ。」
「すいません・・・不躾な質問になってしまうんですがグレンさんは生きようとしてるんですか?」
「俺か、そうだな、俺は生きようとしている。やるべきことがあるからな。」
グレンの返答を聞いたルークスは合点がいったようにうなずく。
「なるほど、先ほど西門から貴族様の馬車が出ていきました。なんだか強そうな騎士たちを引き連れて全速力で西へと向かっていましたよ。」
「それって。」
「おそらくララさんが乗ってると思います。・・・グレンさんは生きてください。そして大切な人を守ってください。」
「ルークス・・・ああ、分かった。早くいかなきゃな。」
「そうです。さようなら・・・グレン。」
「さよならじゃない、またいつか会おうだ、ルークス。最後まで諦めるなよ。」
グレンは走り出していた。もう迷いなど振り切れてたった一つの思いだけを想う。背後ではルークスの元気な返事が聞こえた。




