20話 「未来への活路」 前編
投稿が非常に遅れてしまい申し訳ありません。
やる気と時間の都合上執筆が進みませんでした。
爆音鳴り響く大地に一陣の風が吹く。それに追随するのは破壊の跡だった。風は刃となり、機械派の兵士達が吹き飛んでいく。兵士達では止められないと悟ったのかヴァンガードがその腕の大剣で止めにかかるが、それよりも速く風は動き、懐へと入られたヴァンガードは切り刻まれた。風が過ぎ去った後に残るのは一時の静寂だった。
グレンは何度目かわからない数の戦場に立っていた。機械派による攻勢が始まってから最前線へと赴き刀を振るう。既に戦場は砲撃戦から野戦へと移っていた。ここが突破されれば攻城戦となる。そうなれば火力に勝る機械派による総攻撃が始まるだろう。それが分かっているからこそ魔法派の指揮官たちは、不利を承知で野戦を行っていた。
「いまだ。撃ちまくれー、奴をとっとと仕留めるだ!!」
グレンが敵軍を駆け抜け自軍の方へと戻ろうとすると、好機と見たのか機械派の兵士たちは一斉に撃ち始めた。
「「「サンドウォール!!」」」
それを見越して後方の魔法使いたちが一斉に壁を作り始める。グレンの背後に現れた幾層にも分かたれた壁群は放たれた銃弾や砲弾を防ぎ切る。
「すまない、助かる。」
「いえ、当然のことです。」
すれ違いざまに感謝すると、再び戦場へと足を向けた。
「一気に行くか!」
グレンは振り返るとすぐに真下の地面に魔法陣を描いた。グレンの足の裏に炎の渦が現れ一気にグレンを吹き飛ばす。その高さは優に最前線にいたヴァンガードを超え、その背後に着地するとすぐさま追随してきた炎の渦を周囲へ爆発させる。。周囲にいた兵士たちは吹き飛び、随伴歩兵のいなくなったがら空きの背中に必殺の斬撃を叩き込む。ヴァンガードはあっという間に形を維持できず爆発した。
「くそっ、化け物め。」
機械派の兵士の悪態が聞こえてきたが、主力を続けざまに失ったことで形勢が逆転していた。
「死神に続けー!! 奴らに目にもの見せてやるんだぜー!!」
砂の壁を抜けてきた魔法派の戦士たちが残っていた機械派の兵士たちを討ち取っていく。わずかな好機をつかみ取り耐えてきた鬱憤を晴らすように追撃をかけていた。しかし数分もせずに変化が訪れる。機械派の軍勢がぶつからずに下がり始めていた。
「これは・・・一時撤退だっ!!」
「もうか、早いぞ!!」
「まだいけるぞ!!」
「だめだ、撤退だ。」
グレンはそれを大声に告げた。それを聞いた戦士たちは防御態勢の形でしぶしぶと退いていく。退いていく戦士たちをしり目にグレンは新たに表れたCTRの部隊に目を向けた。機械派の方でも魔法派に合わせて撤退が告げられその殿としてCTRがついた。お互いが引いたことで戦場に一時的な空白が出現した。
この戦線は魔法派がなんとか維持してきた。しかし、それは機械派の余裕の表れであり機械派が物量で攻めてくればあっという間に崩れる薄氷のものだった。ただ、機械派は命惜しさに本気を出していないだけだった。そしてそれはどの戦線においても同じだった。
グレンは撤退した他の部隊員と共に門の内側へと帰ってきた。損害はグレンの活躍もありひどくはなかったが日に日に蓄積されていく疲労が部隊に覆われていた。
「まだまだ続くんだよな。今はそれでいいか。」
「なんでいいんだ?とっとと片付けたくて仕方ないんだが。」
グレンのつぶやきに一人の戦士が応える。
「覚悟の決めようだよ。ここで死ぬか。生き延びるかのな。」
「はっはっはっ。そんなの二つ名持ちのあんただから考えられることだぜ。俺たちゃここを死地としてるんだ。それを侮辱するか?」
男の言葉は怒りではあるが本気で責めているわけではなかった。
「悪い。だが、生き延びたくなっちまったんだ。だから迷ってる・・・本当に生き延びていいのかって。」
グレンはあと一歩が踏み出せずにいた。もうやるべきことが分かっているのに、ここにいる人々を裏切ることの踏ん切りがつかないのだ。グレン自身が悪としてきた裏切りを今まさに自分がしようとしていることに。
「「「・・・」」」
いつの間にか周囲の戦士たちも魔法使いたちも黙っていた。ここにいるのはクロスストリートにいたころからグレンと苦楽を分かち合ってきた戦友たちだった。だからこそ皆が意を決したように顔を見合わせて頷いた。
「お前は生き延びていいんだぞ。」
「えっ?」
「そうだぞ。お前はすごく強いがまだまだ子供だしな。生きたいと思っても不思議じゃないわ。」
「なにに悩んでいるがわからんが、やると決めたなら最後までやり通すのじゃ。」
「そうだ。俺たちはお前がいてよかったと思っている。今生きているのもそうだが、お前は戦場で誰よりも強くあった。それが俺たちの心の支えだった。だから、グレン。生きろ、そしてこれからも多くのやつのを救ってやれ。」
「お前たち。」
「俺たちの時代は終わっちまいそうだが、お前はこれから始めるんだ。だから、生きてくれ。何もかも失っちまう俺たちが残せたものとしてな。」
一年という短い時間の中でともに戦い、寝食をともにし苦楽を分かち合ってきた戦士たち。多くは死んでいった。そしてここに残るであろう戦士たちも。
それでも送り出してくれる戦士たちにグレンは感謝と惜別の気持ちを伝えた。
「・・・ありがとう。叶うならまた会おう。」
それだけを伝えてこの場を去っていった。
グレンが立ち去ってから残された戦士たちはようやく肩の荷が下りたのかため息をついていた
「やっと行ったか。まったく、最後まで世話が焼けたな。」
「俺たちが焼かれていたようなものだがな。最後は大人としてあれたか。」
「ともかく、これで心残りはなくなったか。」
「いや、奴はまた会おうなんて言いやがった。そんなこと言われちゃ生きたくもなってくるわい。」
「約束してないからセーフじゃないか?」
「「「はははははっ」」」
戦士たちはその最期にあってもお互いに笑っていた。
グレンは戦士たちと最後になるであろう別れを済ませて、いち早く宿舎へと戻ってきていた。そして、逃走に必要であるものを持てるだけ選別をした。そのあと、ララの現在の居所である王宮へと赴きすでに出立していないか調べようとしたが、当然最重要機密でありいないものとして扱われているララのことを聞くことはできなかった。
「正面から行っても無理か。それなら夜のうちに侵入するか?いや、ここのやつらは優秀な連中が多いって聞いたな。何らかの感知魔法に引っかかっちまうか。どうしたもんか。」
グレンは王宮から少し離れた広場で策を練っていた。すでに戦況は厳しくなってきており、明日にも総攻撃が仕掛けられてもおかしくなかった。時間がない中なんとかしなければならないと考えていると、誰かが近づいてきたため反応した。
「誰だ・・・っ!?」
「久しぶりだな。」
「・・・フルルースク、生きていたのか。」
「私はそう簡単にくたばりはしないさ。」
顔を向けた先にはロック砦以来会うことのなかった戦友の姿があった。
「そうか。だが、ここにいるってことは最後まで戦うってことじゃないか?」
「お前もそうじゃないか。いや、お前はお姫様の居所が知りたくてこんなところにいるんだろ。」
「っ!!・・・会う奴みんな俺のことを知ったように言ってくるな。」
「はっ、お前は私と違って演じることができないだろう。お前の噂やロック砦以来の奴らに聞けば簡単にわかるさ。そんでもって私はその情報を持っている。」
「どうやって知ったんだ? それよりなぜ教える?」
「お前のためだぜ、グレン。これはロック砦での借りを返しに来たにすぎねえ。」
フルルースクは軽薄な笑みを浮かべはするが、その目はしっかりとグレンを見ていた。
「ディランドの奴も協力してくれたぜ。魔法が使えないけれども教会の伝手で聞いてくれたんだ。ランスロットの奴にはさすがに聞けなかったがな。ともかく、聞いたところによると、機械派の総攻撃が行われたとき、西側の門から近衛がついた馬車が出る。その中に捕らわれのお姫様がいるってことだ。」
「教えてくれて助かる。俺だけじゃどうしようもなかった。」
「たくっ、素直に言われると調子が狂うだろ。お前はこれから奪いにいくんだ。傲慢不遜に構えていればいいんだよ。」
「言ってくれる。だが、ためらっていたのは確かだからな。やってやるさ。」
「派手に決めてやるんだな。・・・さて、私の役割もこれで終わりだ。こっから先はどうなるかわからないもんだ。」
「俺が言うのもなんだが、死ぬんじゃないぞ。知り合いは生きていた方がいいからな。」
「わかったよ。ディランドの奴はとっととここを離れていったから大丈夫だろう。私も生き延びて再び戻ってきてやるよ。」
フルルースクは自然と拳を差し出してきた。グレンも当然それに応える。
「約束だ。」
拳が交わる。それは戦士たちの誓い。死地へと赴く戦士たちの果たされぬ約束を確固たる希望とするものであった。




