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18話 「時代の狭間」 後編

お久しぶりです。3か月ぶりの更新となりましたが生きています。

 規則もあったものではない戦列が、城壁の門を越えて入城していく。戦列には活気がなく誰も彼もが疲れ切っていた。この戦列はクロスストリートから敗走後ひたすら歩き続けてここまでたどり着いたのである。ここは首都ガンダルム。遥か地平線まで広がっているであろう城壁に囲まれた魔法派最大にして最後になるであろう拠点だった。


 「やっと着いたか。ほんと疲れたもんだ。」


 グレンは道中の苦労をものともせずに言い放った。


 「誰もがお前みたいには強くはないさ。」


 ランスロットは今ではもう言い飽きた返しをする。


 「いや、今回は本当に疲れたんだって。」 


 「まあいい。それよりグレン、俺はこれから報告を兼ねて新たな任務を拝命しなければならない。だからしばらくは会えなくなる。なにかあっても俺には頼るなよ。」


 ランスロットは今までの経験からあらかじめ釘をさしてきた。


 「そうなればいいもんだ。俺もしばらくは休むとするよ。じゃあな。」


 「ああ、また後でな。」


 グレンとランスロットは、疲れ果てて地に腰を落ち着けている他の兵士達をわき目に見ながら別れていった。




 ランスロットと別れたグレンはとりあえず兵士用の宿舎で自身の寝床を確保してから街を散策することにした。


 「しかし、すぐに寝床を確保できるとは思わなかったな。そこまで名前なんて広まっているなんて一年くらい前からじゃ考えられないもんだ。」


 グレンは宿舎の従業員に寝床について聞くや否や個室へと案内された。理由を聞けば戦場での活躍が伝わっており、そんな人をせまっ苦しいところに入れることは矜持が許さないとかだった。


 「名誉なんて、誇る相手がいない俺には必要ないものだ・・・っとあれは、ルークスか?」


 グレンはふと雑踏の中に知り合いの顔を見かけた。しかし、その顔をとても沈んでいて周りなんてみえていなさそうだった。


 「撤退直後だから疲れているのか?・・・だが、気になるな。行ってみるか。」


 グレンは少し考えてから、見えなくなりそうだったルークスへと駆けていった。幸いにして見失うことなくたどり着くことができた。


 「おい、ルークス。久しぶりだな。」


 「・・・・・・あっ、グレンさん・・・ですか。」


 久しぶりに会ったルークスはとても沈んでいた。グレンのこともまとも認識できていなかった。


 「大丈夫か?」


 「はい、いえ・・・大丈夫ではないですね。」


 「戦場帰りだ。疲れているのか?そうならこんなところをうろついていないでとっとと休むべきだぞ。またいつ戦闘が始まるか分からんからな。」


 「そうさせていただきます。」


 以前しなくていいと言った敬語を使いながらルークスは去ろうとした。しかし、なにかを思いとどまってグレンへと振り向いた。


「グレンさん、ひとつ聞いてもいいですか?」


 とても重要なことを言いそうなただならぬ雰囲気を感じてもグレンは重く受け止めなかった。


 「なんだ?」


 「その・・・グレンさんは大切な人を亡くした時、どんな気持ちですか・・・?」


 「・・・」


 予想はしていた質問だった。グレンにとって今のルークスのような人間は特に分かりやすかった。だからあらかじめ分かっていたことを言う。


 「それがどうしようもないものなら仕方ないとしか言いようがないさ。抗っても、どうしようもないなら受け入れる。だが、それが他者によるものなら俺はそいつを許さない。その仲間もだ。」


 かつて故郷をどうしようもないもので奪われ、その存在も既にこの世にない。だから俺は、そいつと同類の存在を殺すことが復讐になるんだ。グレンはあの日誓ってからずっとそうだった。


 「そう・・・ですか。僕はそんなことできないです。今でも出来ていないです。」


 「彼女はなぜ死ななければいけなかったのか自分には分からないんです。そして彼女を殺した人を倒すことも出来ないです。彼女は機械派の人間で殺したのは魔法派の人間なんですから・・・」


 ルークスからとめどなく気持ちがあふれ出て来ていた。喪失の大きさが、禁忌とされている内容すら話していた。ルークスはそれを理解していながら話を続ける。グレンも同じような境遇であったため自然と話に聞き入っていた。




 「最初に出会ったのは、中央平原がまだ僕たちの手にあった頃です。戦場で仲間とはぐれてさまよっていたところで、同じようにはぐれていた彼女と出会いました。」


 「お互いに素性を隠して接していたからでしょうか、彼女の強さに惹かれてしまったんです。その時はお互いのことをそんなには知らずに別れました。次に会ったときは敵同士でした。彼女はCTRに乗っていて僕は魔法派の兵士で、正直グレンさんに鍛えられていなければ今もこうして生きてはいなかったです。」


 「CTRに乗った女性か・・・珍しいな。」


 グレンは激闘を繰り広げた部隊の一人を思いだす。


 「そうですね。だから彼女が乗っていることが信じられなかったんです。彼女がCTRを捨てて僕の前で銃を突き付けてきたときは、信じられない気持ちでした。でも彼女自身も信じられなかったようで、錯乱していました。」


 「再び戦場に取り残されたかからでしょうか、彼女は敵対するのは無意味だとして協力を申し出ていました。僕自身も彼女と話したかったから協力することにしました。初めはお互いぎくしゃくしていたんですけど、やっぱり敵対しているようには思えなくなって、世間話をしながら生き延びていたんです。」


 「そして彼女は、戦争は早く終わらして魔法派と機械派が手を取りあっていく世界が出来たらいいなと語ってくれました。そんなこと、この戦争の推移を見ていれば不可能に近いんですけど、あの時の僕らの状況だったらそう思わずにはいられませんでした。」


 「そうしてそれぞれが帰還するための準備を整えるまで話して込んでいざ別れるとなったとき、彼女はまた会おうって言ったんです。僕もそれに応えました。・・・でももう無理なんです。その後の噂で彼女が死んだって聞いてしまったから・・・」


 「噂だったらまだ可能性はあるんじゃないか?」


 「彼女の部隊はスレイプニル隊だったんです。その数が減れば一目瞭然でした。」


 「なんだって!?」


 グレンは今日一番の驚きを示した。それこそ2度に渡って戦闘を繰り広げた部隊で、その中の唯一女性であった人間を知っていたからに他ならない。


 「彼女はどこでどうやって死んだかすらも分かりません。僕自身も彼女のことは2度の邂逅でしか知りません。それなのに僕が感じているこの気持ちはなんなんですか?これほどまでつらい思いをしたことは今までになかったんです!!」


 ルークスは嗚咽をこらえきれずにすべてを吐き出していた。隣で聞いていたグレンもただ黙っているしかなかった。そんなルークスが落ち着くまでグレンはある考え事をしていた。しばらくして落ち着く頃にはすでに陽は傾きかけていた。


 「すいません、グレンさん。僕の話に長々と付き合わせてしまって。勝手な言い分かもしれませんけどグレンさんに話したことで気分が軽くなりました。」


 「そうか。それなら師匠として少しは仕事したかな。だが、このことはあまり他の奴らには言うなよ。」


 「えっ!?」


 「そこまで考えてなかったのか? 機械派の人間と親しくしていたなんて他の奴らに話したら殺されていたかもしれないぞ。あいつらはみんな恨みを持っているんだから。」


 「あっ、すいませんでした!!・・・でも、グレンさんはどうなんですか?やっぱりあのお嬢様と一緒にいたから恨みは少ないんですか?」


 「そうだな。俺は・・・・・・もとからないような気もするが、ルークスが言うように彼女に会って変わったのかもしれないな。恨みがあったとしてもそれは仲間を殺されたから相応の仕返しをするだけか悪事を働く奴らを許せない時ぐらいだ。正しいことをしている奴らを憎むことなんてない。」


 グレンはクロスストリートが落ちてからずっと考えていたことを少し話した。この戦争を通して様々なことを学んできた。それは強くなること以外にもたくさんあった。


 「やっぱりグレンさんはすごい人です。あっ、そろそろ帰らなければいけないですね。今日は話を聞いてくださってありがとうございます。」


 すでに日は落ちて辺りは闇が支配しかけていた。


 「ああ。それと、敬語はもういらないからな。」


 「分かりました。それではまたいつか。」


 「またな。」


 二人は別れた。去っていくルークスの背中を見ながらグレンはもう会うことはないかもしれないと心のどこかで思っていた。ルークスの話を聞いたからなのかこんな時代だからなのか。それはグレンには分からなかった。分かっているのは、ルークスが吹っ切れたことだけだった。

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