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4話 「鋼鉄の軍馬」 中編

 

 照明が落とされ、真っ暗な部屋の正面にスクリーンが映し出されている。その光を受けて、いくつもの長テーブルが横に4つ、縦に5つ並べられ、それぞれのテーブルにイスがいくつか備えられておりそれに人が座っているのが浮かび上がる。それぞれのイスに座っているのは、皆佐官以上の階級章をつけた軍人達だった。今彼らは今後の作戦に関する重要な会議に参加している。


 「・・・つきましては、この中央部における支配は完全に我々のものとなりました。それによって今後はさらに奥地へと進撃が可能となります。」


 そうスクリーンの横で説明をしていた男が一旦話を切る。すると、スクリーンの手前、軍人たちから見て左手側にある前方のテーブルに相対するように座っていた数人の中で明らかに軍属ではないスーツを着込んだ中年の男がスクリーン横で説明をしていた参謀長に質問をした。


 「参謀長。たしかに中央地帯の支配は盤石となったのだな。ではロック砦への侵攻は可能か?」


 その質問に対し、参謀長と呼ばれた男は答える。


 「はい、可能です、次官殿。」


 「よろしい。大統領閣下は、一刻も早く戦争が終わることを望んでいる。我々も最大限の手伝いをしよう。」


 彼の発言を受けて会議場にいる軍人達のほとんどが不満を持った。彼の発言に不満を持ったのは、彼が官僚だからだろう。お前達は権力闘争でもやっていろ、戦争のことは俺達に任せろと。


 参謀長も同じ気持ちなのか彼の言葉に応えた。


 「はい、わかっております。しかし、今はまだ、我々だけでも十分ですのでお気持ちだけ受け取っておきましょう。」


 「そうか、後悔するなよ。」


 そう言って政治家だと思われるスーツの男は隣の軍人に会釈をしてから席を外し、会議場から早足で出て行った。その行為に会議場にいる軍人達も高級参謀達も苦笑していた。


 「おほんっ…彼のことは置いておいて、ロック砦攻略作戦の会議を始めよう。今日の議題はそこだ。参謀長、よろしく頼む。」


 「はい、分かりました。」


 ここからが本番だ。そう、スクリーン横のテーブルの中央に座っている老軍人が仕切りなおすと、説明をしていた参謀長が合図をしてスクリーンを切り替えさせた。


 切り替えられたスクリーンには、かなり遠くから捉えられたロック砦の外見が映し出されていた。


 「では始めます。」


 そう言って参謀長はロック砦の構造や仕組み、その重要性についてスクリーンを動かしたり、変えたりしながら説明した。それを聞いていた軍人達の顔は真剣であり、それだけにこの作戦に懸ける熱意もすごかった。


 「以上がこの砦の概要です。続きまして現地点をもっての敵戦力についてです。」


 それを聞いた多くの軍人の顔は先ほどとは違い一様に変化した。焦りを生む者。喜びを生む者。相変わらず真剣な眼差しで聞く者。そして、恐れる者。それらの顔をした皆が一様に息を呑んでいた。


 「まず、砦の通常戦力として魔法使いが6000前後。戦士が4000人前後。これら両方を兼任している者が2000人程です。あくまで目安ですので予想よりは多く見積もった方が良いと思います。次に配備されている兵器です。攻城兵器としてはバリスタ、岩石投射機、魔力増幅器、魔弾放射機などが予想されます。中でも魔力増幅器が厄介です。これは周囲にいる魔法使い達の魔力を増幅させさらには中身がなくなるまで無限に供給を受けるため、これはあなた方に最優先で破壊をお願いします。」


 参謀長の命令に皆一様に頷く。


 「そして、最後に、今現在この砦にいると思われる二つ名持ちについてです。確認できるだけで少なくとも5人以上がこの砦に滞在しています。」


 「5名か、多いのか少ないのか。」


 その言葉を待ってましたといわんばかりに会場は騒然となった。


 彼らにとって二つ名を持っている人間というのは、CTRをなんの偶然でもなく、ただ己の実力だけで破壊することができる人間のことを指している。魔法派にとっては魔法を弾きなすすべもなく倒された無敵を誇るCTRを破壊できる人間というのは、憧れの象徴であるが、彼ら機械派の人間からしてみればCTRを倒せるだけで化け物と言っても差し支えがなく恐怖の象徴であった


 場にいる比較的若い軍人達は声を張り上げて不満を漏らした。それと対象的に年季の入った軍人達はその騒ぎに特に関心を持たずじっとしている。少ししても騒ぎが収まらないので先ほど仕切り直しをした老将が今度は檄を飛ばす。


 「うろたえるなっ!!!。貴様らはそれでも軍人か!!その肩に付いている階級章は飾りかっ!!」


 それに反応して、うろたえていた軍人達は委縮して静かになった。それを静観していた軍人達の間からは失笑が聞こえた。

 

 「ありがとうございます、デアルド元帥閣下。」


 「ふんっ!!CTRの性能に頼りきりの青二才共なんぞこの程度だ。見てみろ、青二才共。貴様らの周りにいる軍人達を!!」


 元帥の言葉に萎縮しながら青二才と呼ばれてしまった佐官の軍人達は恐れ多くも周囲を見回した。そこには歴戦の軍人達が青二才達の視線に合わせず、ただ堂々と前を見ていた。その眼には若い軍人達など眼中にもなかった。


 彼らは皆二つ名の脅威を知ってなお、戦い続けてきたのだ。この程度で恐れはしない。それに対してまだ戦場の多くを知らない若い軍人達は二つ名を化け物として扱い、まるで殺せないような存在として扱っていたのだ。


 「分かったか!!CTRを壊せるからといって恐れていては勝てる戦も勝てない。お前達に教えてやる。やつらは結局は人間だ、殺せないことはないことを。そうであろう、オンワ准将!!」


 ジンテツは突然話を振られたにも関わらず、貫禄のある姿で応える。


 「そうでしょう、デアルド閣下。たしかに二つ名持ちは厄介じゃが。しかし、倒せないことはない。」


その姿を見た青二才呼ばわりの軍人達は納得せざるをえなかった。なぜならば、彼は、自らCTRに乗り前線を駆け、先日の戦いでは自らだけで二つ名を討ち取ってもいるのだ。


 彼らが納得をしたのか恐怖したのかは分からないが動かなくなったのを見計らい、参謀長は爆弾を投下せざるをえないことに迷いがあったが、デアルド元帥以下大将、中将の方々が目で応えていたので参謀長も意を決して言う。


 「二つ名の詳細は「七玉(セブンスバウンド)」、「氷間(アイスラウンド)」、「闇の流星(ダーク・スター)


 二単語以上の二つ名が出たことで軍人達の間で緊張が走る。二つ名持ちはその名前よりもどれだけ二つ名持ちの詳細な情報がわかるかで強さが決まる。一単語だけならばCTRを倒せるぐらいの強さ。二単語ならば戦場に影響を及ぼせる強さ。三単語以上はいまだいないが、もしいたのならば戦局に影響を及ぼせる強さと判断している。


 「そして、「剣聖(ソードナイト)」と「紅い死神(ブラッティ・ヘル)」が確認できます。」


 最後の二つの二つ名持ちを聞いたとき場は動かなかった。だれも言葉を発しない。


 長い沈黙の後、デアルド元帥閣下が言う。


 「お前達は、こいつらを攻略してもらう。そのために多くのCTR乗りの隊長を集めたのだ。二つ名持ちに通常兵力では損害が大きすぎるからな。「七玉」は第3機械科大隊が担当、「氷間」は・・・」


 そうやって、それぞれの二つ名の担当部隊を決めていった。二つ名持ちの担当は主にCTR大隊が担当をしていく。二つ名持ちは複数のCTRで当たらなければ勝てないため、確実に倒すために大隊規模で動員を掛けたのだ。また、不確定な二つ名持ちに対しては予備の兵力として2個大隊を置いておく。その中でいよいよ最後の担当が決まった。


 「「紅い死神」の担当はジンテツ、貴様の部隊で打倒しろ。」


 それはまるで死刑宣告であるかのように元帥は言い放った。




 会議が終わり、各々が持ち場に戻っていく。ある者は後方勤務に。ある者は最前線に。また、ある者は二つ名持ちの対策のために資料を得に。


 ジンテツは会議場から離れて、自分の部隊がいる最前線へと向かおうとして迎えの車のあるところまで歩いていた。その途中、隣に座っていたグラバスと事の巻末を話し合う。ジンテツは中隊未満の部隊を率いているが、本人は准将。グラバスに至っては少佐と分相応な組み合わせだが、こうした会議に副官揃って出席できることはありがたかった。


 「すごいですよ!まさかこのような形で彼と戦うことになるとは!」


 「私としては冗談のままで良かったのだがな…」


 「それでも、私達が認められているということなんですから、光栄ですよ隊長。」


 「仕方がない。押し付けられた以上対策を練るしかない。そのためにこれを借りてきたのだから。」


 そう言ってジンテツはひとつの記録媒体を取り出した。それは黒くて四角い物体だった。


 「映像記録ですか?一体彼と何の関係が?」


 ジンテツが取り出した記録媒体は、記録された映像を写すために必要な道具のひとつだった。それは主に映像が保存されているものだ。


 「奴の姿が捉えられた数少ない記録だ。とくにこれは奴がCTR以外のモノと戦っている映像らしい。命懸けだったそうだぞ、これを撮った偵察員は。」


 「それは、ますます見てみたくなりました。早く帰って見ましょう。」


 「ふっ、楽しみにしておけよ。」


 そう言ってジンテツは僅かに口を端を上げ、その後は車に着くまで二人は黙って歩いていた。





 

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