ep25.悪女は価値を証明する(2-2)
第一皇女に、ストーカー被害は私が何とかしてみせると言ったその約束を叶えるべく、私は第二騎士団の団長兼、侯爵に手紙を送った。
【第一皇女殿下のことで、お話ししておきたいことがございます。侯爵様と皇女殿下の今後に関わることです。どうか、一度だけ会う機会を設けさせて下さい。 エヴァ・ウェルズリー】
この手紙を見た侯爵はすぐに会う機会を設けてくれた。
だがもちろん、良い顔はしていなかった。私を警戒している。そんな目だった。
警戒するのは侯爵にとって当たり前のことだろう。
突然第一皇子の婚約者となった私に2人で会いたいと言われているのだから、不敬でも浮気を疑ってしまうのは仕方のないことだった。
「突然のお願いを聞いてくださりありがとうございます。ホワイト侯爵様」
「いえ、大丈夫です。それよりも、僕と殿下の今後に関わることとは一体どういうことでしょうか?」
流石、皇女殿下が思い合っていると言っていた人と言うべきか、早く私と話す時間を終わらせたいのだろう。
さっさと目的を言えという気持ちがひしひしと伝わってきた。
「…侯爵様は、皇女殿下が人に弱みを見せる人ではないことをご存知ですよね」
「ええ、もちろんです。だからこそ頼って欲しいのですが、まだ難しいようで」
侯爵は少しだけ悲しそうな顔をしていた。
けれど、幸せそうだ。
皇女殿下も、侯爵も、互いを思い合っているからこその思いなのだろう。
「これもきっと、私から話すべきではないのですが、これ以上見て見ぬふりを私は出来ません。だから、私の口から、お話させて頂きますね」
そうして、私は皇女殿下が複数の男に付き纏われていることを話した。
侯爵としても複雑な心境であるはずだ。
大丈夫なのかという心配の気持ちや、どうして言ってくれなかったのかという悲しい気持ち。
侯爵なら、分かってくれるはずだ。
皇女殿下のことを私から話したのは、それなりに良くない状況であること。
側から見れば、皇女殿下は強い人だ。だが私から見れば、皇女殿下は弱い人だ。
どんな屈強にも負けず、表情には出さない。
だからこそ、弱い。
人に頼れず、いつかは自分の中の何かが崩れ落ちてしまうことだろう。
そうならないためにも、人に頼るということは、人が人である以上必要なことだった。
人に頼ることは難しい。私も、出来ていないから。だから私も弱い。
でも私は、結局死ぬ。
だから弱いとか強いとか、全部どうでも良いことで、関係のないこと。
それなら、これから国の未来を担う皇女殿下を強くすることの方が、私にとっては自分のことよりよっぽど大切なこと。
皇女殿下が一歩を踏み出せないのなら、私がその手助けをすれば良い。
「そんなことが…到底許されざることです…」
侯爵は、静かながらに怒っていた。
それもそのはず。
侯爵は正義に忠実で国への忠誠心も高い。そして何より、皇女殿下のことをとても大切にしている。
そんな彼が、皇女殿下の置かれている状況を知って、怒らないはずがなかった。
「私もそう思います。ですのでホワイト侯爵様。私のためではなく、皇女殿下のために、お力添えをお願いしたいのです」
「…!」
侯爵は驚いていた。それと同時に、少し不思議そうに尋ねた。
「…どうしてあなたは、そこまで皇女殿下のことをお考えになられるのです?」
…どうして……?
そんなこと、私にも分からない。
別に、特段好きと言うわけでもない。
ただ皇家の人たちは、私に居場所をくれたから。
その恩返しとして、やっているのかもしれない。
ああ、分からない。分からない振りを、しなければ…。
「…これでも一応、家族ですから。家族の心配をするのは当たり前のことですわ」
嘘。
私なんかが家族と言っていいものじゃない。
私は人質で、皇女殿下は皇族。
身分以前の問題を抱えている以上、私たちが家族になれることは決してない。
「…そうですか。すみません、あなたを酷く誤解していたようです。ご無礼をお許しください」
「無礼だなんて思っていません。突然話したことのない人間から2人で会おうと言われて警戒しない方がおかしいですもの。なので気にしないでください」
しかもその人間が隣国から来たとなればそれこそ不思議だっただろうし警戒せざるを得なかっただろう。
だから全部、仕方のないことだった。
「寛大なお心に感謝いたします」
「いえ、それでは私はそろそろ帰りますね。長居して噂が立ってしまっては元も子もありませんから」
「そうですね。…あなたは聡明ですね」
何を、言ってるんだろう?
私は聡明なんかじゃない。
ただ自分の保身で手一杯な弱い女だ。
「侯爵様こそ。私の言ったことを信じてくださってありがとうございました。例の件、よろしくお願いしますね」
「はい。お任せください。その、ウェルズリー令嬢」
「はい?」
何かを言いたそうにしている侯爵に、私は聞いた。
「どうされました?」
「殿下を救うチャンスを僕にくださってありがとうございます。おかげで殿下の隣に立つ覚悟も定まりました」
侯爵の目は、確かに何か決意をした目立った。
彼なら大丈夫だ。皇女殿下もきっと幸せになれる。根拠のない確証ではあるけれど、それくらいには彼は信用出来る人だった。
「そのチャンスを手にしたのも、どう活かしていくかも、掴み取ったのは、考えるのはホワイト侯爵様です。私は何もしていませんよ。それでは、またいつか」
私は帰りの馬車に乗って離宮まで帰る。その間、皇女殿下がすごい形相で離宮で待っているとは、その時は知らなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
次話も見てくださると嬉しいですm(_ _)m
投稿大幅に遅れてしまって申し訳ないです(・・;)




