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ep19.悪女は価値を証明する(1-1)

【大成功】


 そう言っても差し支えないだろう。


 半分にも満たなかった識字率は今では国全体で8割を超えている。


 さらには数字に強い人も徐々にその才能を開花させ、皇宮で働ける程の能力を発揮する者もいた。 


 経済も回るようになり、平民の働ける職種が増えたことにより、職につける人が増えた。


 そしてもう1つ、嬉しい誤算があった。


 平民の間で、本を読む人が格段に増えたのだ。


 どうやら貴族が本を読み、時たま感想を言っている本を買いたいと思っている人は多かったそうで、夢が叶ったと喜ぶ人も少なくはなかった。


 これにより、国に大きな利益をもたらした。


 今まで衣食住にしかお金を使うことのなかった平民は読書という新たな娯楽を手に入れたことにより、貯めてばかりだったお金を使うようになった。


 今日は第二皇子に国に利益をもたらせと言われてちょうど一年、それまでも第一皇子は変わらず月一の頻度でお茶をしてくれ、その時に報告をしていた。


 私からすれば義務のようなものだったけど、何故か第一皇子は楽しそうに微笑みながら聞いていた。


 まあ、つまらないと思っていないのであれば良かったと、私も深くは聞かなかった。


「よく来てくれた。どこでも良い。座ってくれ」

「かしこまりました、皇帝陛下」


 流石に1年半も経てば、私たちの関係にも多少の変化が生じた。


 みんな、私への態度が丸くなったのだ。


 第一皇子は微笑むようになり、第一皇女はツンだけだったのが、たまにデレも発揮するようになり、皇后陛下は国民を救って以来よくお茶に誘ってくるようになり、第二皇子との関係に大きな変化はなかったけど、私の実力と価値を認めたようだった。


「この1年間、大変ご苦労だった。さっそくだが、本題に入ろうと思う。もちろん、この国の利益についてだ」

 

 私は確かな確証がなかったため、多少の不安を覚える。


「今までで1番だ。ここのところ利益がまだまだ上がっていてしばらくは下がりそうにないほどにな」

「…!それは良かったですわ」

「最後まで尽力してくれたこと、感謝…いや、貴方は伝えても受け取ってくれないな。ならば、これからも私たちのために尽力してくれ」


 私の言った言葉を久しぶりであっても覚えていてくれたことに小さな感動を覚えた。


 珍しいこともあるものだ。


 あの家族には話す権利すら与えられなかったと言うのに。


「もちろんですわ」

「…お礼と言ってはなんだが、何かしたいことがあるなら言って欲しい。出来る範囲でなら叶えよう」


 したいこと…、したいことね


「では、第二皇子殿下と少しお話をさせてください」

「えっ?俺と?」

「はい。少しだけお耳に入れておきたいことがございまして」


 私は意味深な笑みを浮かべると、第二皇子もいつかの笑みを浮かべた。


 初めて会ったあの日の、楽しそうな笑顔だ。


「分かった。良いよ。君の実力は十分に知れたしね」

「ありがとうございます、第二皇子殿下」


 みんなと話をした後、個人的に第二皇子殿下に離宮へ来てもらった。


「それで?どうしたの?俺に用事って」

「第二皇子殿下は、今のご自身のお立場を鬱陶しく思っていらっしゃいますよね。出来れば今の状態から自由になって貿易面で国に貢献したいと」


 この1年間、経済を回復させるために動いていた間、ずっと感じていたことだった。


 私は金銭面で国に貢献し、私が得た金銭で第二皇子は他国との貿易を効率的に回し物資の面で貢献していた。


 貿易の時、交渉し終えた後の満足そうな顔を見ればこれくらいは予想がついた。


「それで?そのことを君が知って、君はどうするの?俺の弱みでも握ったつもり?」


 随分と余裕そうな態度を見せるが、多分余裕ではないだろう。内心焦っているはずだ。


 だって、先の態度とはまるで違う。質問ばかりで、私の言葉を聞こうともしない。こういうのは嫌いだ。


「いいえ違います。私の話を最後まで聞いてください。殿下が自由に動けるようにするには、密かに存在する第二皇子殿下の派閥を無くせば良いのでしょう?」

「そうだけど、君がその方法を知ってるの?」

「貴族の総入れ替え」

「…!それ、本気?」

 

 第二皇子の楽しそうな顔はどこへやら。


 まるで敵を見るような目でこちらを見てくる。


 敵ではないんだけどな…


「本気です。既に第一皇子殿下が皇帝の座を継ぐことを皇帝陛下自らが明言しているにも関わらず第二皇子殿下を皇帝にしようとするのは、立派な皇家に対する反逆と取れるでしょう。そこを利用してください」

「…詳しく教えて」


 食いついた。


 第二皇子が貿易の交渉を殆ど担っているけど、誰も私が交渉を出来ないなんて言っていない。

 もちろん私も。


「反逆罪の罰は1番重くて死刑、軽くて爵位剥奪、そして辺境の地に追い出すまでがセットですよね」


 これでも一応公爵家の娘だったため、どこからが反逆なのかは重々教えられた。


 それからも本をたくさん読んでいたし、他の貴族たちよりは知識がある。


「私が貴族に噂を流します。【第一皇子の婚約者が第二皇子を好いている】という噂を。ですが、万が一信じない人もいるかもしれません。ですので殿下、殿下にもほんの少しだけ協力して頂きますがよろしいですか?」

「まあ、俺のことだし。構わないよ」


 1年半前の狂気さは姿を表さないので助かっている。


「ご協力感謝します。殿下はまずご家族に自分がしたいことを正直にお話しください。それから今私が説明したことも。きっとご理解くださいますよ。後は、どこか貴族がよく通うお店に一度だけ一緒に行ってください。そうすれば噂に信憑性が増しますので」

「その噂を流してどうするの?まさか流して終わりなわけないだろ?」


 これでも一応第二皇子のためにやってるんだけど、当の本人はどこか面白そうに聞いてくる。


 これやめておけば良かったかな。


「そこからは待つだけですわ。…あ、パーティーに出席してください。貴族と話をした時、1番初めに第一皇子殿下に私の噂を報告したのであればそれは第一皇子殿下の派閥。逆に、1番初めに第二皇子殿下のところへ報告に来たのであれば、それは密かに第二皇子殿下の派閥にいる貴族です」

「へえ?面白そうだね」


 顎に手を当ててニヤッと笑う姿を見て確信した。


「お気に召して頂けてなによりですわ」


 期間は1ヶ月、1ヶ月で全てが明るみに出るだろう。






 











最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいですm(_ _)m

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