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ep18.悪女は働き者

「あら?みなさん待っていてくださったのですか?」

「…ああ」

 

 そんな申し訳なさそうな顔をしないでほしい。


 私は私のためにしたのだから。


「…先に言っておきますね。私は、みなさんに謝罪の言葉もお礼の言葉も言われる理由はありません。これは私が国民のためにしたことです。私もここにいるからには国民を守ることは当然の義務なのです。だから謝罪もお礼もやめてくださいね」

「なら、どうすればいいの?俺たちに、君はなんて言って欲しいわけ?」


 珍しく第二皇子が私に対して口を開いた。


 少しイラつかせてしまっただろうか。


 それでも、第二皇子の言っている言葉が皮肉だろうが何だろうが私の言ったことが間違ってはいないのだから仕方がない。


 私生児が、それも人質がここの国の人を守るべきなのかは定かではないが、第一皇子の婚約者という点では間違っていないから大丈夫だ。


「どうもしないでくださいな」

「…!、どういうこと?」

「ただ一言、これからも私たちのために役立てと、そう言ってくだされば良いのです。私は人質ですのでそれくらいのご命令が当たり前ですよ」


 私が平然と言うのが気に入らないのか、第二皇子はニヤッと悪い笑みを浮かべた。


「なら、中毒のせいで回らなくなった経済を回復させてよ。以前よりも利益を増やしてね」

「…ご命令とあらば。ただ、多少時間はかかりますが、それでもよろしいでしょうか」


 病の調査をしている時に、経済を成長させるヒントも既に得ているので、そう難しいことではない。


「どれくらいの時間が欲しいの?」

「…そうですね…、1年…1年間の期間を私にください。そうすれば、必ずこの国に以前よりも多くの利益をもたらして見せますわ」

「…はは、良いね。やってみな。出来るものならね」

「承知いたしましたわ。第二皇子殿下」


◇◇◇


 あれから、私が人質になって1年半くらいが経過しただろうか。


 1年前、第二皇子の命令により、以前よりもこの国、ティラノ帝国の利益を多くもたらさなければいけなかった。


 鉛中毒の被害はかなり大きかった。


 皆、働き先を失い、お金を手に入れることが出来ず、また雇う側も、人手不足でお店の経営を続けるのが厳しいというところが急激に増えていた。


 なのでまずは手当を施した。


 鉛中毒にかかったもの、もしくは鉛中毒の関係により仕事を辞めた人、辞めさせられた人には、私から一家につき、1年は食べ物に困らない程度のお金を支給した。


 もちろんこれは税金ではなく、私の自由に使えるお金の範囲内で納めた。


 その次に、私はこの国の識字率に目をつけた。


 貴族は真っ当な教育を受けられる機会があるため、識字率は上々、働きたいと思えばどこでも働けるであろう知恵と読み書き、簡単な計算を学べる。


 問題は平民だった。


 これは決して平民が悪いわけではない。


 ただ、平民が勉強をするという機会を与えられることが少なすぎるのだ。


 いくら国が裕福になったからと言って、この状態がいつまでも続けば、今は国が裕福であっても、そう長くは続かないだろう。


 まず、誰にでも分かるような参考書を作り上げた。


 次に私は本格的にこの国の識字率を上げるため、絶対的な信頼をおける下級貴族にだけ声をかけた。


 この国の下級貴族は、準男爵、男爵、子爵までのことを指す。これらの貴族に、私はとある命令を下した。


 命令を下した後日、準男爵の持つ領地から私は転々と回っていった。


 もちろん文字を教えるためにだ。


 仮に、治めている領主の知識が曖昧であったり、雑な教え方をされるとこちらとしても困る。なので、私は直々に文字を教えに各地を回ることにした。


 領地ごとの滞在期間は大体1週間、無論多少の上下はある。私が来るまでに文字を学びたいと思っている大人を集めておいて欲しいと領主たちにお願いをした。


 多少のプライドを持っている大人と言えど、流行り病の件以降私の顔は割れてしまっているので、私が第一皇子の婚約者だとすぐに分かられるので幸い大人しく授業を受けてくれた。


 初めは渋々と言った感じで受けていた大人も、次の領地へ行く頃にはまだまだ学びたそうな表情へと変化していた。


 私が1週間で教えられるのは基礎中の基礎だけ。だが、その基礎が大事なのだ。


 私は授業を最後まで聞いた大人たちに言った。


「もしまだまだ文字を覚えたいのであれば、参考書を無償でお渡しします。代わりに1つ、お願いしたいことがございますので、そちらを聞いてください」


 私の言葉を聞いても尚、殆どの人がまだまだ学びたいという思いを抱いてくれたらしい。


 平民は参考書を手に取り私の声が聞こえるように周りに集まった。


「私の授業を受けた皆さんなら、次は人に教えることも出来ると思っています。それほどに、皆さんは自信を持って良い。どうかこの先の未来を担う子供達にも、文字を読めるようにしてあげてほしいのです」


 静かに、真剣に私の声に耳を傾けてくれることがこれほどに嬉しいものだとは知らなかった。


 この国に来てから多くのことが変わった。それもとても良い方に。


 あの窮屈な馬車から抜け出すことが出来て、本当に良かったと思う。


「ただ、無理にとは言いません。子供が学びたくないと言っているのであれば、他に好きなことを学ばせてください。それが、結果的に子供たちの才能を伸ばす良い機会となりますから。したいことを出来るように叶えるのが、私たち貴族の務めです。ですが、それにどれだけ答えるかは貴方たちが決めてください。どの道を選んだとしても、それはみんなの人生です」


 貴族になり始めたばかり、もしくは由緒ある貴族だが、下級に入る準男爵、男爵、子爵家は平民のことを思って行動する人が多い。


 伯爵以上になると、お金を稼ぎたいという欲に溺れている人が多く信頼することが難しいのだが、下級貴族はその点で言うと信頼しやすかった。


 こうしてどんどんと文字についての理解を深めてもらった。


 私が信頼をおける…、正確には、第一皇子派の全ての準男爵、男爵、子爵家の領地を周りきる頃には、半年が過ぎていた。


 次に私が行ったことは、文字を読むだけでなく、書くことや簡単な計算を学びたい人なら誰でも入ることの出来る建物を作った。


 これを各地に建てるには1年以上かかってしまうため、まずは王都にだけ建てた。


 王都だけなら私が直接教えに行くことが出来るうえ、移動も楽だった。


 参考書にも文字は勿論のこと。簡単な計算も乗せておいたので、王都以外でも学ぶことは出来るのだが、やはり聞いたり見たりしたほうが覚えやすい。


 読み書き、簡単な計算が学べるところを私は学舎まなびやと名付けた。


 そうしてまた半年が経ち、一年半が経過したのが今だ。結果は…

 


 


 









最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいですm(_ _)m

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