↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の翼ははためかない9 〜竜王伝説〜  作者: 藤原水希
第二章 ゲートムントとツァイネの場合
PR
10/74

チャプター10

〜近くの森〜



「はっ! そうだった! あんまり危険な修行をしてたからついそっちの話をしちゃったよ!」

「あはは、そういうこと、あるよね。で、俺たちに何の用なの?」

 こういうことがあると、場は和む。が、それでは話は進まない。ちゃんと話をしなくては。気を取り直して切り株に座り直し、本題に入る。

 二人も、武器を鞘や袋に収めてくれている。しっかり話を聞いてくれるつもりのようだ。

「二人はさ、王様からのお触れを読んで、どう思った?」

「あー、あれね」

「お触れ? なにそれ。俺はそんなの知らないぞ? なあ、そんなの出てたのか?」

 よもや、ここにもフォルクローレと同じような人がいようとは。思わず、顔に手を当ててため息をついてしまう。

「あぁ〜、フォルちゃ〜ん、仲間がいたよ〜」

「え、何、俺フォルちゃんと同じなわけ? それって、恥ずかしいことなのか?」

「フォルちゃんらしくはあるけどね。いや、ゲートムントらしくもあるか。二人はどこか似てるところもあるし。じゃあ、俺から説明するよ。お触れっていうのはね……」

 エルリッヒがフォルクローレにしたように、今度はツァイネがゲートムントに説明する。それを珍しく真面目な顔をして聞いている。本来はそうであってしかるべきなのだが、真面目な姿は似合わないため、違和感を覚えてしまう。

「ーーというわけで、武具を買い揃えたいけどどう思いますか? っていう話」

「あー、うん、買えばいいんじゃね?」

「え! そんな考えもせず答えちゃっていいの? 買うって言っても、税金で買うんだよ? そもそも、冒険者って税金どうなってるの? 今まで気にしたこともなかったけど」

 国によって一律の仕組みがなされているから、だいたいの業種はどうやって税金を聴取されるのかがわかる。しかし、冒険者だけはいつも謎だった。一体どうやって税金を納めているのか。

 二人の顔を見てみるが、失礼ながらゲートムントがそういうことに詳しいようには見えない。やはり、ここはツァイネに説明を求めるのが良さそうだ。

「ねえ、その辺の仕組み、教えてくれる?」

「もちろんいいよ。俺たちの場合、そもそも依頼の報酬が依頼主の出したお金に対して、税金を引かれた状態で設定されるんだよ。だから、そこで自動で支払ってくれてるような感じかな。冒険者ギルド自体、国の運営だしね」

「おお、そいう仕組みになってたんだな。俺も今初めて知ったぜ。なんか、恥ずかしいことなんだろうな。今まで気にしたこともなかったけどよ。この話、他の仲間にも教えてやった方がいいよな」

 ゲートムントの口ぶりからは、他の冒険者たちも自分たちが冒険者稼業にあって、どのように国に税金を納めているのかを知らないのではないか、と見ていることが伺える。実態のほどはともかく、ゲートムントの見立ても大きくは外れていまい。冒険者とは、そういう難しいことを考えるのが苦手な面子が多いのは確かなのだ。ならば、あらかじめ税金が引かれているということであれば、彼らは何も考えず、それでいてしっかりと税金を納めていることになる。なんとも手軽な仕組みではないか。

「ゲートムント……やっぱり知らなかったんだね。まあ、俺の見立てでも、ギルドに所属してる人たちでこの辺のことを知ってるのは一部だと思ってはいたけどね」

「あー、やっぱりそんなもんなんだね。いかにもって感じ」

 本当なら、呆れてもいいような話だが、どうにもそんな風にならないのは冒険者という人たちのありようがなせる業なのだろう。となると、彼らは今回の話をどう受け止めているのだろうか。やっぱり、みんなゲートムントのように深く考えずに賛成するのだろうか。

 そもそも、あのあたりは誰が取りまとめをしているのだろうか。

「そういえばさ、ギルドの冒険者たちの意見はどうやってお城に上げるんだろうね。いうなれば、お城の兵士以上に戦闘に関しては専門家でしょ? 絶対、参考意見の吸い上げは必要だと思うんだけど」

「確かにねー。俺たちの意見を参考にしてくれるなら、こんなに嬉しいことはないよ。ギルドのあるあたりは他にお店も少ないから、商工会みたいなのはないし、住宅街と同じに元締めが意見をまとめるんじゃないかな。俺も会ったことはないけどさ、そういう人がいるっていうのは知ってるよ」

「おーおー、こういうときのツァイネの頼り甲斐は抜群だな。俺なんかその辺さっぱりだから、本当面目ねぇわ」

 頭をかきながらゲートムントが情けなさそうにしている。確かに、税金のことと合わせても知っているべき知識には違いない。が、今はそんなことは小さいことなのだ。相棒としてずっと一緒にいるツァイネが知識の補完をしてくれるし、大切なことは、先々訪れるかもしれない魔王軍の侵攻をどう乗り切るか、なのだから。

「みんな、どんな意見を出してくれるんだろうね」

「そりゃ、俺と同じだろ! つえー武器ガンガン使って、頑丈な鎧を着りゃ、それだけで戦力アップよ!」

「まあ、間違っちゃいないけどね? でも、その強い武器も頑丈な鎧も、誰でも扱えるわけじゃないでしょ? お城でも、より実戦的な訓練はしてるみたいだけどね」

 装備品と兵士本人のそれぞれが強くならなければ意味がない。それを一番よくわかっているのは、この二人のような戦士たちだ。だからこそ、ゲートムントの安易な意見も頭ごなしには否定しない。

 ゲートムントはゲートムントで、ツァイネに自己鍛錬について突っ込まれても気にしない。重量が同じくらい鎧なら同じ立ち回りがでるし、重量だけでなく長さも同じようであれば、戦い方を維持できるし、装備品のおかげで与ダメージは上がるし被ダメージは減る。だから、装備品だけを強化しても、それは立派な戦力アップになるのだ。

 しかし、今求められているのはそれだけではない。今までと同じ戦い方では、太刀打ちできないのだ。これまでの訓練で鍛えてきたのは、人間を相手にした戦い方なので、ゴブリンくらいであれば十分に勝機もあったが、話に聞く今のゴブリンは身体能力がかなり上がっているというし、ガーゴイルのような魔族であれば、一見人型で体の大きさも同程度だが、基礎的な身体能力はゴブリン以上であり、一方では翼が生えているので飛び上がって攻撃を回避したり、上空から攻撃したり、ということが考えられるし、何より彼らは魔法が使える。

 誰も、そんな相手を想定した訓練はしていないのだ。

「まぁな〜、今のままじゃ、まともに相手にならねーよなぁ。俺だって、シュミットたちの話を聞いてちょっとやべぇかもって思っちまったし」

「でしょう? 正直言って、俺たちはシュミットたちよりも魔物相手には戦い慣れてる方だと思うよ? それでも、これからの戦いを考えると、もっと苦戦することだって考えなきゃならないからね」

 ツァイネは、過去の戦いで苦戦した記憶を手繰って少しばかり苦い表情を浮かべる。もしかしたら自信過剰になっていたのかもしれない。そんなことも思いながら、精一杯戦ってきたし、少しでも強くなれるよう修行を重ねてきた。装備品だって、国内で手に入る一級品を身につけているつもりだ。それでも、優位でない戦いはいくらでもなった。

 ゲートムントもそれは同じで、ハインヒュッテでのドラゴン戦以来、苦戦することが増えてきた。村で手に入れた竜殺しの槍は伊達ではないし、竜素材で作った鎧も生半可な防御力ではない。それでも、それはそれまで以上に強い相手と積極的に戦ってきたからである。戦士としては、誇らしいことでもあるのだ。

「はぁ〜、課題山積だね」

「っとにな。勇者の子孫って奴が立ち上がったって聞いたけど、ぱぱーっと魔王を倒してくれりゃあいいのにな。今度こそ、しっかりとよ」

 本気かどうかはわからない。噂だけが到達している勇者の子孫とやらに頼りたくなる気持ちはわかるが、一方ではどうせなら自分たちで戦って勝ちたいはずだ。本心が見えないコメントほど返答に困るものはない。

「他人任せの姿勢って、どうなの? どうせ、本音じゃ自分で倒したいんでしょ?」

「さすがエルちゃん、わかってるね〜。どっちも本心だよ」

「ゲートムント、その回答はずるい気がするよ。あ、そうだ、エルちゃん、一個お願いがあるんだけど、いい?」

 パッと立ち上がったツァイネがエルリッヒの前に歩み寄ってきた。

「え! な、何? できることなら聞いてあげるけど……」

 急なことで一瞬身じろぎしてしまう。わざわざこの場で切り出すというのはどういうことなのだろう。変なことでなければいいが。

「あのさ、エルちゃん、俺たちと手合わせして欲しいんだ!」

「手合わせね。いいよいいよー。って、えぇ〜〜〜っ!!」

 その叫びは森中に響き渡り、鳥の飛立つ羽音が鳴り響いた。




〜つづく〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。