ニートは居間に集めないしさても言わない
アイマー教師は生徒のことをよく見ている先生だったらしい。
教育に熱心、というわけではないが困っている生徒にさりげなく声をかけたりと子供のそばにそっと寄り添うような先生だったそうだ。
元々頭もよく、学園の外で少しではあるが仕事をした経験もあるため進路に迷った生徒がよく相談をしていたらしい。
ただ、アイマーも出身はごく普通の商家であり、貴族の子供たちからは軽んじられることもしばしば見受けられたらしい。
そりゃあ嫌になるわな、わからなくもない。
別に相談しに来ないとか声をかけても「別に」と返される程度ならましだったんだろうけれど、中にはそれこそエルマンのように身分を盾に嘲る者も、いたんだそうな。
それが嫌になったのか、いら立ちが頂点に来たのか、なにか別の理由があるのかは知らないが彼女は今回の事件を起こすことになった。
同情をしないでもない。エルマンがただの被害者ではないことも分かっている。
しかし、相手がだれであれ、理由はどうであれ、悪いことをした人間はそれが見つかったら罰を受けるものだ。
理事長の指示でまとめ役の先生がほかの教師たちを下がらせる。
一人残るように言われたアイマーはそう告げられた時はきょとんとしていたが準備室から私たちが姿を現すと親しげな笑みを浮かべた。
「まさかフォルツァーノ様や宮廷魔術師長にお会いできるなんて。理事長も一緒だなんて、どうしました?」
「貴女に話があるの」
笑顔の問いに簡潔に返せば不思議そうな顔をする。
しらばっくれてるとかそういうものを含んだ顔ではなく、本当にわからないという顔だ。
「アイマー先生、本当に、君が禁書を持ち出したのかい?」
理事長の震える声で私たちがここにいる理由を理解したアイマーはにっこりと笑って頷いた。
「ええ、そうですよ。なんだ、こんなに早く見つかるとは思いませんでした」
そう言って、私に視線を向ける。
「もしかして、フォルツァーノ様の魔法ですか?やっぱりすごいですね」
「あら、ありがとう」
すごいと褒められたから礼を返す。まあ、私がすごいのは本当だからね。
「どうして、こんなことを」
理事長の呆然としたつぶやきにアイマーの笑顔にどろりとしたものが含まれる。
「どうして、ですか。どうしてって、何がですか?」
「君が、生徒に対しても真摯だった君が、どうして生徒にあのようなことを」
「――理事長先生には、わからないかなあ」
少し残念そうに、アイマーは呟いた。




