ニート、犯人を特定する。
たくさん並んだ教師たちの中。
一人だけ、真っ赤な矢印で頭上から指示されている教師。
私はあの教師を知っている。見たこともあるし会話したこともある。
私の案内役として何度も顔を合わせていた相手。
最後に会話したのは試験の前日だったか、ドンナー君を先に帰して、すべてが終了したことを報告に行った時だ。ごく普通に、ドンナー君は大丈夫かと聞かれたから大丈夫だと返しただけなんだけど。
ありきたりな世間話や案内のときは笑顔で、ドンナー君のことを心配していたときは苦しげな顔をしていた。
この学園では数少ない、私が言葉を交わした相手。
――いや、別にまさかってほどの驚きとかはないんだけどね。
だって本人が貴族嫌いって感じのこと言ってたし。
たしかにここまでいろいろとやるような度胸がある人には見えなかったけどね。人は見かけによらないよね。
宮廷魔術師長は表情を変えない。彼にとっては知らない人だからね。
いや、知っている可能性もあるけれども年齢も職場も違うし、知らない可能性のほうが大きいだろう。
というか宮廷魔術師長は人の名前をすぐに覚えるたちなんだろうか、私は彼女とわりと会話してたし名前を聞いたと思うのに名前がすぐに出てこないぞ。
ハルもいつも通り無関心。ハルだって私と同じくらい顔を合わせていると思うけれど、会話はしていないからね。名前を憶えていても答えてくれないだろうしね。
そんな中、理事長だけは彼女の上にある矢印を見て「ああ」と呻いた。
顔を片手で覆う理事長に宮廷魔術師長が声をかける。
「理事長、あの教師の名前は?」
「彼女は、アイマー先生です。もともと学園を首席で卒業したのですが、中枢での仕事が合わなかったため学園に教師として戻ってまいりました。得意属性は確か、風だったかと」
まあ、貴族は嫌いだって言ってましたからね。貴族がたくさんの中枢での仕事は無理でしょうね。
魔法使いとだけ関わっていられるならまだましかもしれないけれど。それでも貴族は多いのか。
魔法研究署でも魔法省でも、上に上がれば上がるほど貴族とかかわることが増える。主席ならエリートコース。普通に一般職員として入った場合よりも貴族とのかかわりは増えてしまうだろう。
もしかすると、そこで嫌なことがあって貴族が嫌いになったのかもしれない。
というか主席だったのか、できる人ではあったんだな。
学園側としても主席の彼女には国を代表する活躍を期待していたが、学園で教師をしてくれるのならそれはそれでいいことだと受け入れていたらしい。
理事長としては職場が合わずに戻ってきた元生徒のことが心配で目をかけてはいたんだそうだ。いい奴かな?
「熱心、とまではいきませんでしたが、生徒たちをよく見ている先生でした。どうして、アイマー先生が……」
よく見ているからじゃないかなー?
という言葉は飲み込んだ。余計なことは言うなよ、という圧力を宮廷魔術師長とハルからひしひしと感じたからね。




