ニート、降り立つ。
すみません、遅くなりました。
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魔法が使えるということは大きなステータスだ。
普通の人間にはできないことが魔法使いにはできる。火打石や炎岩石という魔石を使わずとも火を起こせるし薪がなくても火が消えることがない。
魔法が使える子供は学園へと入れられ、優秀なものは国直属の機関に勤めることができる。貴族にとっては結婚や婚約に対して有利な状態でいられるし、ただの一般市民や貧民でも仕事が与えられ、裕福なものとの婚姻が許されるようになる。
『魔法が使えるものは平等である』
魔法大国であり続けるために、この国が唱えている方針だ。
しかし、それは幻想に過ぎない。
幻想でしかなかったと学園に入学した者たちは、知ることになる。
魔力の容量が大きいもの以外は確かに授業内容に差はない。
ただし、文字が読めないものは相当な苦労をしなければならない。魔法とは呪文書を覚え、師に呪文を教わり、習得していくものだからだ。
例えば商人の跡取り、文書のやり取りをする者、長男であればまだ簡単な読み書きや自分の名前くらいは書けるだろう。
しかしただの市民にはそんなものを学ぶ余裕なんてなかった。
貴族の子供たちは当たり前のように文字を読み、書くことができる。
家柄によっては入学前に基本的な魔法を覚えている者すらいる。
身分による差はない。魔法を扱う能力によっては差ができる。
つまりは、貴族が優先されるということだ。
それが、許せなかった。
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下の階へ降りると関係者以外立ち入り禁止の場所にずかずかと乗り込んでいく。
止めようとした関係者もいたが、私の容姿からすぐに誰なのかに気付き、慌てたように後を追いかけてきた。
「な、何かございましたか?」
「結界を張れるものを集めて観客席と控室を守りなさい」
私の言葉の意味が分からない様子だったが、尋常じゃないことが起こりそうだということはわかったのか慌てたように教師が集まる場所へと走っていく。
それを見送ることもせず、私は舞台へと向かう。
そこにいたのは己の魔法に酔った男子生徒。
エルマンは明らかに魔法を暴走させているのにおびえた様子もなく、にやにやと笑っていた。
自分の体にも傷ができているのにその表情、本当に魔法に呑まれかけているようだ。このまま放っておいたら命はないな。
「それは、貴方では使えなくてよ」
聞こえないだろうなあと思いながらも普段通りの声の大きさで忠告を投げかける。
いや、私は別にこういう場面で声を張るタイプじゃないし?大声出して喉痛めたくないし?
そんな聞こえないこと前提だったにもかかわらず、そいつはぎょろりとこちらに視線を向けてきた。いや、聞こえるんかい!
「誰かと思ったら、エルヴィーラ様じゃあないか!」
「貴方、まだ自分の意志で止めることができるのでしたら魔法の発動を止めなさい。貴方も無事ではいられませんわ」
貴方も、というか貴方は、ってな感じだけど。
私の心優しい忠告にもただ嗤って、彼は呪文を続ける。
こりゃだめだ、たぶんもう自分じゃ止められないな。




