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閑話――シュラーク・ドンナーの誓い

あけましておめでとうございます。

新年一発目がシュラーク・ドンナー視点です。

「むむぅ」

 あれから、フォルツァーノ様の言いつけ通り家に帰ってからも絶えず体に雷を巡らせる練習をしている。

 これがとても難しい。得意属性が雷です、なんて言わなければよかったと思う位だ。

 それでも、最近は褒めてもらえることも増えてきた。彼女曰く、僕は呪文式が体に染みついていない分柔軟性があるらしい。

 言っていることがわからないときも多いけれど、それだけ色々な書物や実践で知識を蓄えてきたらしいフォルツァーノ様は本当にすごい。

 そんなすごい人に教えていただけているんだから、もっとがんばらなくちゃと思っている。

「シュラーク、頑張っているかい?」

「母さん!ごめん、手伝いしてなかった」

「いいのよう、あんたは魔法の練習があるんだろう?」

 慌てる僕に母さんはにこにこと笑いながらそう言ってくれる。

 それでも、僕たち子供だって立派な家族の一員だ。できる仕事はしなくちゃいけない。

 それに、フォルツァーノ様はどんな時でもそれが出来るようにって言っていた。日常生活を送りながら雷属性を体に巡らせる練習としてやれることはいつも通りやらなくては。

「大丈夫、普段の生活の中でもやるようにって言われてるから」

「そりゃすごい。その大先生は難しいことを言うねえ。大丈夫かい?」

「もちろん!」

「そうかい。じゃあ水を汲んできておくれ。カミラちゃんと一緒にね」

「カミラと?」

 カミラ・エックホーフは僕の幼馴染だ。

 最近は学園に行っているからあまり一緒にはいないけれど、僕に魔法使いの素質が見つかるまではずっと一緒だった。

 勝気でいつも僕を引っ張りまわしていた、ちょっと怖い兄貴分――もとい姉貴分だった。

「わかった、行ってくる」

「気を付けて行っておいで」

 母さんに渡された水桶をもって外に出れば驚いたような顔のカミラがそこにいた。

「え、おばさんは、それに、なんでシュラークが」

「なんでって、学園はずっと休暇だって言ったじゃないか。ああ、でも最近の水くみはカミラじゃなくてテオがやってたよね」

「わ、私は店の手伝いがあるから」

「ああ、そっか」

 テオ、テオフィル・エックホーフはカミラの弟だ。僕よりもずっと下で、最近ようやく水桶を一つ、持って歩けるようになったらしい。

 それでも戦力には変わりがない。カミラの家は表の通りで露店をしているからみんな忙しいんだ。

 だから僕の家と水くみは一緒にしている。さすがの僕もテオよりは力持ちだし、母さんもそうだからカミラ一家の分も手伝うのが当たり前だった。

「わ、私は持てるから大丈夫だよ!」

「え、ごめん。ついテオの時と一緒にしてた」

 共同井戸で水を汲んで、家の分2つとカミラの家の分一つを持ち上げようとしてカミラに止められてしまった。

 カミラは真っ赤になっている。悪いことをしちゃったかな。

 おっと、それより練習だ。重いものを持ちながらなんて練習し甲斐がある状態なんだから頑張らないと。

「ね、ねえシュラーク」

「なに?」

「学園生活はどうなの? ほら、貴族が多いじゃない。困ってることとか、あるんじゃないかなって」

「うーん、今はそうでもないかな。すごい先生に教えてもらえていてね、僕とほとんど歳も変わらない女の人なんだけど、本当にすごいんだ」

「え、同い年なの!?」

「同じかはわからないけど、同じくらい、だと思う」

 さすがに年齢なんて聞けないから正確にはわからないけれどもエルマンが学園に通っているのか聞いていたし、そんなに変わらないんだろうなと思っている。

 あのいつも偉そうな――子爵位があるから本当に偉いんだけど、そんなエルマンを気にもしないところもかっこいい。

「そ、そう。しかも女なんだ」

「うん。落ちこぼれの僕でも色々な魔法が使えるようになったんだ。まだ卒業していないし特訓中だから見せることはできないけど、許可が出たらカミラにも見せるからね」

「! た、楽しみにしててあげるわ!」

 なぜか顔を真っ赤にしてそっぽを向くカミラの挙動が不思議だったけど、幼馴染のカミラにもそう宣言したことで決意がもっと強まった。

 フォルツァーノ様に許可がもらえるくらい完璧に使えるようにならなくちゃいけない。


 だって、僕は守りたいものがあるんだから。


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