ニート、決意する。
ドンナー君が彼らから離れてから表情が暗いので、どうしたのかと尋ねたら自分のふがいなさに落ち込んでいただけだったでござる。
いや、気持ちはなんとなく想像つくよ?最近防御膜のお話してたもんね?
「そんなに簡単にできなくても仕方ないですわ。初めてだったのでしょう? 他人に攻撃魔法を向けられるのは」
彼は抑えるつもりもなかったようだ。ある種の殺すつもりというやつか。
どんなに武道を習った人間でも初めて本物の殺気を向けられると立ちすくんでしまうと聞いたことがある。
自分を落ちこぼれだと思って中々魔法の成果が上がってなかったドンナー君はもっと難しいのだろう。
しかし、私が望むレベルは本人の意識に左右されずに反射的に張られる防御膜である。というか最初からずっと張ってればいいのに、私みたいに。
よし、やはり徹底的に叩き込むようにしよう。なんかドンナー君たちは学園生活大変そうだしね。
「でも、悔しいです……!」
「あら」
私が勝手に決意しているとドンナー君が押し殺したような、震える声で呟いた。
彼にも悔しいなんて感情があるのか、なんて失礼なことを考える。
それはいい感情だ。それをバネにすれば頑張れるだろう。
――徹底的に叩き込んでも大丈夫そうだな。
「ドンナーさん」
「はい」
「悔むのはそれを原動力にすることができるのならばよい事です。しかし、それに囚われていては意味がありません。これからを考えてみてください。貴方が、先ほどのようなことがあったときに戦いたいというのであればその手伝いはできますわ」
あくまで選ぶのは君だという姿勢を崩さない。
自分で選んだと思う方がやる気出るしね。まあ、今までは強制だったんだけど。
「僕は、強くなくてもいいと思ってました。目立たないように過ごせればいいって。でも、さっきみたいなことがあったら僕は大切な人も守れないんだって思いました。それだけは、嫌なんです」
ドンナー君がまっすぐ私を見る。
彼の目は私よりと違って青や黄土色が混じった《宝石眼》だ。私のようにきらめく、というよりも光を放つという方が合いそうだ。暗い色合いの中に黄色が稲妻のように入っている。
そういえば、彼が私からしっかりと視線を外さないのは初めてのことだ。それだけ強い意志なのだろう。
良い目だ。二重の意味で。
「フォルツァーノ様、お願いします。僕は強くなりたい。守るために、強くなりたいです」
「いい言葉ね。では、ドンナーさん、今日から少し、やることを増やします。手は緩めませんわよ?」
「お願いします!」
いい言葉だドンナー君。
私も、もっと腰を入れて教えるとしよう。




