ニートにも華やいだ話がありました。
説明回。
サロンにつくとメイドたちがお茶とお菓子を持ってきてくれた。
どこに座ろうかと少し考えてから兄が座ったソファの隣に座ることにした。
「それで、話なんだけどね」
「あれは少々進み過ぎて提出するのに堪えない出来でしたの。私たち何も悪くないですわ」
「……何を作ったのかは後で聞くことにしよう」
怒られる前に言い訳しようとしたが、もしかして私間違えた?
額に手を当ててため息を吐く殿下と困った笑みを浮かべる兄をみてそっと視線を二人から離す。
いやあ、驚いた。違うんだ、まったくもって。
殿下はこほんと咳払いをして話題を元に戻す。
「あの話が舞い戻ってきてな。本当に、第二妃には困ったものだ」
「あの話、ですか?」
「ああ。そうか、エルヴィーラ嬢は知らないのか」
「エルに話す必要もなかったからね」
何の話かと首をかしげると納得したように殿下が瞬きをし、兄が少し怒ったようにこぼした。
「元々君と第二妃の子、第二王子との婚約の話があったんだ。まあ、ご両親の件があってその話はなかったことになったんだがね」
殿下の話によると、私の第二王子との婚約の話は私が生まれてすぐ、第二王子も生まれて間もないころに現れた話だったらしい。
私の両親はその後まもなく亡くなり、我が家がゴタゴタに巻き込まれることになる。
そのごたごたは我が家――フォルツァーノ一族の中ではあまり大きな影響はなかったのだが、外の奴らがとにかく口を出すしうるさいしでとても困った、らしい。
私、当時はまだ一桁だったから詳しくは覚えてないんだよね。
兄は渦中にいたから大変だったようだ。その頃、手を貸してくれていたのが第一王子。その縁から我が家は第一王子一派扱いになっている。
両親が健在だったら第二王子一派だったのかな、でも兄は殿下の幼馴染だしなあ。
そんな風に消えたはずの縁談を、最近第二王妃がもう一度取り戻そうと画策しているというのが今回の主題だ。
「でも、我が家は殿下一派ってことになってますよね?どうやってつなぎを取るのでしょうか」
「まあ、第二妃の実家もそれなりに力を持っているからなあ。それでも、自分から一度破談にさせた物をもう一度持ってくるのはどうかしているよ」
「うちの妹の良さがわからなかった奴に渡すわけないだろう」
兄がとても怒っている。憤っている。憤慨している。
まあ、私の良さって魔法くらいだからね、おそらく当時は私の魔法は世間に知られてなかったのだろうね。
そして今は私が≪魔法使い殺し≫を習得していることが貴族界に知られるようになったために関係が欲しいというわけだろう。
「それでも、第二妃側から申し出が正式に出てくると、侯爵では分が悪いだろうな」
本当に困ったと殿下が眉間を揉んでいる。私もそれは困るなあと思う。
まあ、本当に嫌な相手と結婚させられるってことになるんなら私は自分の魔法を頼りにこの国を出るけどね。
私はそう思っている分割と余裕がある。
しかし兄は苦虫を噛み潰したような顔でぐぬぬぬと唸っていた。
「まあ、その前に婚約したら困らないと思うがな。うちの派閥のぼっちゃんはどうだ?顔合わせの場ならいつでも整えるぞ」
「可愛いエルをその辺の馬の骨に渡すわけないだろう」
殿下のからかうような言葉に兄のとてつもなく冷たい視線が突き刺さる。冷たいというか人一人くらい殺してそうな視線である。
「お、落ち着いてくれ。冗談に決まっているだろう」
「許されない冗談もある」
そのまま二人がじゃれ始めたので暇になる。
楽しそうだなあと思いながら紅茶に口をつけた。




