32──洞窟探検隊、世界の真実に迫る その1
みなさんお久しぶりです。オペラだよ!
「えっ、なに? コランは黙ってて、今わたしのモノローグなんだけど」
気を取り直して、前回までのあらすじ。
わたしとコランの二人は、どこかに失踪したキャニーを追って、キャニーの痕跡を辿った。お母さんお父さんと村の人達が捕まっていた場所に着くと、そこには大量のお墓が残されていた。
そこでキャニーの戦いの過酷さに思いをはせつつ途方にくれていると、ジャンゴから村でキャニーを見かけたという知らせが届く。今すぐ村に戻ってもキャニーには追いつけない、そう考えたわたしたちは、高度な推理(コランの女の勘)に基づきモリノスという街へと向かった。鍛冶屋にあたりをつけ、ローラー作戦を実行したところ、見事魔術で変装していたキャニーに遭遇、すかさず、わたしは電撃告白作戦を敢行した。
しかし、キャニーは見たこともない魔術を使って、またしても逃げてしまう。
最後に残した『ハック』という名前、暗い表情、キャニーはまだまだ何かを抱えている。
このかすかに残された手がかりから、必ずキャニーに追いついて、今度はちゃんと告白を受け取ってもらうんだからー!
「お疲れオペラちゃん」
「上手くできてた?」
「ええ、バッチリよ。お茶の間は釘付けね」
そんなこんなで、昔わたしの首輪を外してもらった場所のすぐ近く、モリノスにいた。
キャニーは全身魔術で変装していて、聞き込み調査をしても、全然手がかりがない。どこに行っているのか。何をしたいのか。
「オペラちゃんの村に来ていたのも含めると、絶対何かの目的があると思うのよね。知り合いに会いたくないなら、過去に旅した場所は避けるでしょ。あの臆病者は」
臆病者っていうのは言い過ぎだけど、実際にキャニーは変装した上に、魔術まで使って逃げ出した。
「うーん。『ハック』って人を探してるのかな」
「そんな口ぶりだったけど、別に『ハック』について聞き込みしてるわけでも無さそうなのよね。オペラちゃんは心当たりないのよね?」
「うん……」
「だったら、オペラちゃんと別れてから、出会って、そして別れたのか」
「キャニーの家族……とか?」
「あいつが家族ぅ、そんなタイプかしら……まぁ、そっちはキャニーの知り合いか、ボルタに行ってあいつの職場にでも聞き込めばいいわね」
「それと、キャニーってあんなに魔術使えたっけ?」
わたしはキャニーが変装と、幻覚? の魔術を使っていたのを思い浮かべる。
「それはそうね。あいつがあんな複雑な術式を用意できるなんて、変だわ」
「うん、戦うときは魔術も使ってたけど……」
「そうね。そういえば、オペラちゃんの村に戻る前に会ったときは、変装なんてしてなかったわね。他に協力者──は考えなくていいわね。魔術具は、変装に使う魔術具なんて聞いたことない。となると、新しく覚えた? あの感じで旅しながら研究してるわけでもあるまいし」
「魔術って誰かにもらったりできないの?」
「もらう……、術式を教えてもらうのはありえるわね。でも、あんな咄嗟に使えるようになるかしら。呪文の方式も分からなかったし。呪文を詠唱しているわけではなかったわ」
キャニーが使っていたのは、口で呪文を詠唱する呪文だった。
「だったら、やっぱり魔術具は?」
「そうね。そうかも。だとすると、どこでそんなものを手に入れたか。この付近で、見たことも無いような高度な魔術具がありそうな場所」
コランのツインテールがピョコピョコ動く。
「解呪の庵……に行くわよ」
「それって」
「ええ、あなたの首輪の魔術を外した場所よ」
ぜんは急げ。すぐに荷物をまとめて街を出て、急勾配を二、三時間。
さっきまで普通の、ちょっと狭くて人のいない山道だったけど、いきなり視界がモクモクする。
前に来たときと同じように、木造の家が現れた。扉は開きっぱなしだ。
「入るわよ」
「うん」
中に入ると、煙の中に女の子やおばあちゃんの姿が出ては重なって、一人分の姿になる。
「やぁ。わたしが、解呪の庵の解呪師だよ」
「今日来たのは解呪の依頼じゃないわ」
「ほぉ、ならキャニーのことか?」
「なんで! ……キャニーのこと知ってるんですか? 知ってるんだったら、キャニーの居場所を教えてください!」
前につんのめりそうになりながら、わたしは聞いた。
「そうなぁ。どこまで話したものか。どこへいったかは知らんが」
「キャニーはここに居ましたか」
「ああ、それはイエスだよ」
「キャニーはここで何をしてたんですか」
「ふむ。ああちょっと手伝いをしてもらってな。引き換えに魔術を教えたり、遺跡に案内した」
「その遺跡って」
「ああ、ゴト・リッチーの遺跡だよ」
「それって、どこの」
「それは教えられない」
色んな声が同時に聞こえて、ズレてぼんやりとしていたのが、この一言だけピッタリと重なった。何があっても教えてくれなさそう。
「じゃ、じゃあ、キャニーの目的は?」
「そっちは……、教えていいものだろうか、うーむ」
また声がバラけて、色んな姿形が見えたり消えたりする。何かないかな。どうしたら教えてもらえるだろう。キャニーとの会話を頭をブンブン振って思い出す。
「ハックって知ってますか?」
「知らないねぇ」
他には他には──。うーんと記憶の深いところ、ごちゃごちゃになったオモチャ箱をひっくり返すように思い出す。あ。
「神様の、いんたふぇーす?」
「なんだ、知ってるじゃないか。それだよ。神様のインタフェースへ行くために、遺跡巡りをしているんだ」
「その、神様のインタフェースってなんですか?」
「それは知らない。まぁいずれにせよ話せるのはこんなものかな」
煙がさらに濃く何も見えなくなる。
「待ってください」
景色が真っ白になって、さっきまであった家も、何もかも消えて、山の中に置き去りにされる。
キャニーについてまだまだ聞きたいことがあったのに。
「そんなにしょげた顔しないの。重要な手がかりはあったわ。街に戻って、エメリーに連絡しましょ」
「あっ、そうだね。エメリーなら遺跡のこと色々知ってるかも」
エメリーはキャニーのお友達で、わたしのお手紙友達。博物館の学芸員さん? らしい。遺跡とか古いものを集めたり研究するのが仕事って言ってたから、ごと、りっちーの遺跡のことや神様のインタフェースについて知ってるかも。
夕日に背中を追いかけられながら、暗くなっていく山道を大急ぎで下る。
「お手紙、お手紙っ」
街に戻ってそのままの足で、冒険者ギルドへ直行。
普通の郵便じゃなくて、デイメールっていう、なんとその日のうちにお手紙が届くやつを使ってお手紙を出す。
お返事はなんと次の日に来た。
『新しく孤児院の地下に発見された遺跡があるので、一緒に行きましょう』
いざ、遺跡探検!
行くよ。




