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遅刻したよね

 ここは前にも訪れた温泉街の駅。さきに到着してハイエルちゃんを迎えることにした。


 今日は平日、学校には法事と偽り休んだ。

 クラスにいるよね。平日に家族で旅行に出かけて学校を休む子。学業よりも家族行事が大事なのだが、私は旅行に行くと言って休む勇気がなかった。


 だって、知らない子の保護者として旅行に行くって、どうやって先生たちを説得できるの。チハルは不良になったのかいと問題視されかねない。


 ちなみに学校の予定表はちゃんと確認してある。今日と明日は行事もテストもない日だから大丈夫。


 担任の先生からも何も言われないはず、音楽の先生と体育の先生、それに家庭科の先生。……ごめんなさい。


 それに仲良くない先生たちもついでにと家のある方角を向いて拝んだ。


『チハルちん。まだ来ないのかのぉ』ロンが退屈そうに言う。

「うん。そろそろ来るころだよ。多分、電車で来るはず」


 予定の電車が到着して去って行ったが、駅舎からハイエルは出てこなかった。

「あれぇ。どうしたんだろ?」


『チハルちん。あれを見るのじゃ』

「そうだね」


 ロンが言うあれ(・・)とは、やっと買ってもらえたスマートフォン。

 画面をズズズとなぞり確かめるが、連絡は入っていない。


 ――そのとき、駅のロータリーに個人タクシーの〈ポルシェ911カレラ〉が止まった。


 誰だ誰だと駅を行き交う人々が注目する。ここは予想通りの田舎だ。

 しかし、都会でさえ目撃されることがあるだろうか。〈911カレラ〉のタクシー。

 その姿を見た者は、稀代(きたい)な奇跡と感じるはずだ。


 さらに都会を離れて見れば、珍しいのなんのと知る人ぞ知ると、その車が走っているだけならばまだしも、タクシーのあの黄色い行灯(あんどん)が乗っているとなれば、誰もが振り向く。


 しかも、車体は2シーター。お客様は助手席しか乗れない。この不便さ。

 本来であれば、誰がタクシーに使うんだと思う無駄な車種。

 燃費代や内装のアクリル板とかの改造費用もハンパないはずだ。

 豊かな国では見かけると噂されるスーパーカー・タクシーである。


「もうこれは、忘れ去られた文化のひとつじゃ。昔にポルシェのパトカーもあったのだぞ。そこのお嬢ちゃん」

 駅に向かおうとしていたおじいさんが語る。


 あんたは誰なんだよとスルーするチハル。


 しかし、タクシーを見れば、誰もが思う。きっと特別料金なんだと。

 乗っている人は金持ちなのか、はたまたマニアなのか。普通の人ならば、このタクシーをわざわざ頼まないから気になる。


 助手席のドアが開いた。そこには外人の幼い女の子。


 辺りを見れば、やっぱりかと想定内だったことにがっかりした野次馬たち。

 その冷めた反応と共に人々の日常は平穏を取り戻していく。


 だが、今の光景を見た者たちはみんな笑顔だ。

 その表情から見て誰かに話してやろうと思っているに違いない。

 だって、聞いた者は「うっそだぁ~」と言いそうだから。


「はぁ~い。チハルちゃん! まったぁ~」

 その外人の女の子は予想通りハイエルちゃんだった。


 こやつセレブだったのか。少しだけ周りに気を遣うチハル。

 直接、旅館の前で合流するべきだったと後悔する。


 ロンは去って行く〈ポルシェ911カレラ〉を眺めて見送った。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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