宇宙人なのね 3
――そして、目的の配置に着いたユイナさん、私。それにロン。
ここからは、鹿たちに気づかれないように念話を使う。
『……マサミちゃん。マサミちゃん。こちらはスタンバイ・オッケェー。そちらはどうぞ!』
『はい、こちらマサミ。いつでもいいよぉ』
『こちら、ユイナ。では、私が合図するので二人はよろしくね』
『『オッケェー!!』』
ユイナがタイミングを測る。鹿に似た宇宙人が地面を向いた時だった――。
『いまよぉぉおぉぉ――!』
掛け声とともにコンクリート塀に隠れていたピヨコが垂直離陸。
一定の上空に達するとマサミちゃんが刺し網を投げた。
「バッサァァ――ッ!」
青空いっぱいに綺麗に広がる網目が鹿たちの群れに被さった。
驚いて端にいた鹿には逃げられたが、網にかかった6頭と宇宙人を捕獲。
「プシュッ! プシュッ! プシュッ!」
ユイナが麻酔を付与した魔法の矢を次々に打ち込み鹿たちを倒していく。
「うりゃあぁぁー! ポコッ、ポコッ」
私はロンに巨大化させてもらったこん棒を手に鹿たちを叩きつけた。
阿鼻叫喚する鹿たち?
「うわぁぁ~ やめろぉぉおぉ! やめてくれぇぇー!」
日本語で叫ぶ宇宙人。その声と見た目のギャップが滑稽に思える。
……お前はどこぞのゆるキャラだ。
「うぅん…… Zzz...」
ユイナが宇宙人に矢を放ち眠らせた。
「ユイナさん。その矢って矢じり大丈夫何ですか?」と私は訊いてみた。
「これ、大丈夫ですよ。矢じりが魔法なの」
(……いいなぁ。魔法って)と思い、ロンを見る。
『ほれ。始めるぞ。チハルちん』と言って網に掛かった宇宙人と鹿たちをロンの力で小さくさせる。
空中に大きな黄金色の半透明な小槌が「ポン!」浮かび上がり。
『小さくなれ。……《パルウゥス》』と呪文を唱える。
あっという間に手のひらサイズ。ユイナさんがそっと拾って……。
「では、戻りましょう。チハルさん」
――私たちはミディアルたちの屋敷へ戻ることにした。
移動中に私は念のため護符を使ってみる。
たしかに、屋敷の中には赤い点が二つあることが分かるが点滅はしていない。
(……やっぱり、彼女たちも宇宙人だったんだ)
屋敷に着いたあと、気づかれないように裏庭の方へと回り、そこで捕獲した鹿と宇宙人たちを地面に置いて元に戻してもらう。
「ロン。ここでお願い」と私はロンに頼む。
再び空中に大きな黄金色の半透明な小槌が現れて……。
『うむ。大きくなれ。……《エトマグナ》』とロンは唱えた。
段々と元のサイズに戻った宇宙人と鹿たちを見て無事を確認する。
「うん。これでよし」
ユイナさんに屋敷からリディアルを呼んで来てもらい引き渡しは完了した。
……終わったね。退治するより面倒だったよ。
「皆さん、お疲れ様です。ご協力ありがとうございました!」
宇宙人を確認したリディアルは喜んで私たちに礼を言う。
念のため逃げられないように網を固定して鹿の宇宙人さんは手足を拘束。
ちなみにリディアルから聞いた話だが、彼はペリュトン人という。
鹿が進化した宇宙人なんだそうだ。そいつが祖先たちと戯れていたらしい。
(……まったく、何をやってんだか)
そのあと、ミディアルに誘われて屋敷に入り応接室でお茶を頂き、ちょっくら休憩。
ひと口飲んだティーカップをテーブルの上に置いて、私は目の前に座るミディアルに訊いてみる。
「あの。ミディアルさん。捕獲した宇宙人はどうされるのですか?」
「フフフ、彼は事情聴取したあとに母星へ送還しますわ」
口角を上げて笑うミディアル。
「そうですか。ミディアルさんたちは、そのような仕事もされるんですか?」
さらに私は問いかけた。
「うむ。どこまで話しましょう。……すべてを話すと長くなるので端的に言えば、質問通り、そのようなこともしますわ」
隣でコクリとするリディアル。
「そうなんですね」とあっさりと終わる。
これと言って会話も無く休憩終了。
……よし、今度こそ余計なことは考えず、もらうモノを頂いて帰ろう。
無事に報酬をもらい、屋敷をあとにした。
――駅に帰る途中、バスの中で相談する。私たち以外には誰も乗っていない。
ユイナさんが話を切り出した。
「チハルさん。あの人たちは警戒した方が良いですよね」
「チハル。私もそう思う」とマサミちゃんもうなずく。
二人は今日の件でミディアルたちに不審さを感じたようだ。
「それは分かっています。守護神様からも言われていますから」と私は伝える。
「なら、大丈夫よね。今回の件って、私たちがどうやって宇宙人を対処しているか確認するために呼んだんじゃない」とユイナさんは私の顔を覗く。
「私もそう思うよ。チハル」
マサミちゃんも心配してこちらを見る。
窓側に座る私は二人の方を向い応えた。
「……そうだね。あんな弱い宇宙人をわざわざ捕まえさせるって不思議だよね」
「でもさ。当分は関係することがないんやろ。チハル」
ユイナさんも心配してマサミちゃんの言葉に言添える。
「私はそうであってほしいです。でも、お互いに気を付けましょう」
「うん。私も気をつけるよ」
……今はそう答えるしかなかった。
また、宇宙怪獣が現れた場合などはミディアルたちの協力が必要だったりする。
その代償に何を要求されるかは分からない。
彼女たちが求めるこの星との友好関係とは、どこと結びたいのだろう。すべての国と結ぶのか、アメリカ見たいなところだけ結びたいのかも聞かされていない。聞いてもいない。それはこちらが関わりたくないからだ。勝手にやってほしい感じもするが、果たしてどこまでの人が彼女たちのような宇宙人を知っているのだろう。
先日、話を聞いてもらったミズキさんのひいおばあちゃんこと。先代のおばあちゃんの時代では、そんな宇宙人はいなかったと教えらえた。
(……うん。困ったもんだ)
『お主ら、何かあれば守護神様と相談するのじゃ』とロンが言う。
「はい。そうさせて頂きます」とマサミちゃんが答える。
それに合わせユイナさんも返事する。
「分かりました。ロン様」
――駅に到着すると改札口でマサミちゃんとは帰る方向が違うのでそこで別れた。
「またなぁ~。チハルぅぅ。ユイナぁ~」
「マサミちゃんも、お疲れ様でした!」
「また、連絡しましょう。マサミさん!」
さきにマサミちゃんを見送り、あとの電車でユイナさんと一緒に帰る。
待っていた電車が到着して乗り込み、誰も座っていないボックスシートを見つける。
席に腰を下ろした私たちは夕焼けの景色を少しだけ眺めていた。
ロンは子犬用バックの中で寝ている。
「チハルさん。私ね。この時間だと自宅までは帰れないので途中の街で電車を下りてホテルに泊ってから明日に帰ります」
「すみません。ユイナさん、遠くからわざわざ来てもらって」
「いいえ。守護神様からも、その目で確認してくるように言われましたので来てよかったです」
ユイナさんの表情からして、今日来れたことが良かったみたいだ。
「お役にたてたなら良かったです」と私は微笑んで見せた。
ユイナさんが私の手を掴んで感謝を述べる。
「でも、チハルさん。これからもよろしくお願いしますね。必要なときは協力してください」
「はい、それは分かっています。こちらこそ、今日はどうもありがとうございます」
ユイナさんは私の顔をじっと見つめて頬を赤らめた。
えっ……私はそんなんじゃないよ。
彼女は自分の胸のうちを話してくれた。
「チハルさん。私は今まで、ずっとひとりで守って来ました。
ある日、守護神様からあなたのことを聞いて驚きました。
それまでは、自分だけが特別なんだと思っていましたから……」
それは今まで目を向けていなかった。孤独だったと言うことを理解する。
そして、同じ目的のものがいることも知る。
「私は与えれらた力に傲慢になっていたかも知れません。
でも、あなたにお会いして思ったんです。
そんな力を頂いても、こんなに頑張っている人がいるんだってね」
何ついても絶対はない。「虎の威を借る狐」だった自分に気づいた。
私もそうだった。そう思っていた時期があった。
力があることはそれを正しいことに使ってこそ、与えらたもの。
運命に導かれ授かったことを真摯に受け止めて、さらに学び考えていく。
彼女の言葉は、私にも限りなく考えさせることだった。
「私がひとりで対処出来ない敵が現れた場合、どうしていたのだろう。
そうあれこれと考えだしたら怖くなりました。
実はそんな都合のいいことばかりじゃないんだって」
彼女の気持ちは分かる。……自分に合わせて精一杯であれば良い。
それと同じく私の隠れていた不安は流れるように溶けていく。
「でも、あなたは違う。私にいろいろと教えてくれたんです。
とても感謝します。…………ありがとう。チハルさん」
私は言葉では言い表せない感情を抱いて高揚する。
真剣に賞賛してくれて――照れた。
「はい、ユイナさん。これからも協力していきましょう」
限りない喜びで礼とも励ましとも言えない言葉を掛けてしまった。
私は今日一番の喜色満面をしていたに違いない。
ロンは寝たふりをしつつも私たちの会話を聞いているように見えた。
彼女の話を聞いて私は先代のおばあちゃんが話していたことを思い浮かべる。
……やっぱり、そうなんだ。個々に努力して苦悩したり無理をしたりと、ひとりで出来ないことを抱え込んでは駄目なんだよ。昔と今は違う。便利な世の中なんだから行動すればよい。
私は八つの祠を守るみんなと繋がらないといけないね。
これでひとつ目標ができた。何とか守護神様にお願いしよう。
ラシオです。
最後までお読み頂きありがとうございます。




