えび焼売
地竜を討伐してバーベキューを終えたあと。
ミディアルたちにはユイナさんのスマートフォンを借りて連絡を終える。
その際に後日、あらためて三人で面会する約束をした。
「それでは、二人とも、お疲れ様でした!」
「チハル、お疲れ様。またなぁ~」
「チハルさん。いろいろとお世話になりましたぁ」
「ユイナさん、お世話になったのはこちらです。マサミちゃんもありがとう!」
私たちはそれぞれの守護神様へ報告することを約束して解散した。
――翌日は守護神様に会いに行くため、朝早くから小高い丘の社に行く。
そして祠の前で、いつも通りロンと一緒に目を瞑った。
『チハル。ロン。ご苦労様です。無事に戻って来れましたね』
天女はいつもと同じく莞爾として私たちを迎えてくれた。
『はい、ありがとうございます。守護神様』
私は元気よく礼を言う。
『お褒めに頂き、このロン。ありがたく存じます』
ロンも緊張していない、喜んでいるように見える。
それから地竜のことを話して、ミディアルたちに連絡したことなどを伝えた。
……話が終わったところで天女はこう言った。
『では、チハル。これを授けましょう。説明はのちほどロンから聞いてね』
新しいアイテム。護符を入手した。どんな機能があるのやらと期待する。
『ありがとうございます。守護神様』と喜んで、お礼の言葉を返した。
天女は微笑み、ロンを見つめた。
『よろしく頼むわよ。ロン』
ロンも『はい、かしこまりました』とペコリとお辞儀する。
それではと守護神様のところをお暇して祠をあとにした。
――帰り道に商店街の通りを抜けて、てくてくと歩く。
歩きながら私は護符についてロンに念話で訊いてみた。
『ロン。守護神様からもらった。この新しい護符の機能ってどんなの?』
『それはのぉ。……宇宙人と宇宙怪獣を探知できる護符なのじゃ!』
……その言葉を訊いて驚く。
『す、凄いんじゃない!? これで私はどこへ行っても宇宙人を見つけられるし、逆に襲われることが無くなるってことかなぁ?』
『チハルちん。さきに言っておくが、その護符はいつも身につけることはお勧めしないのじゃ!』
ちょっと動揺して訳の分からないことを聞いてしまう。
『それって? 身近に変装している宇宙人がいっぱいいるからとか? それとも、向こうも気づいて私に近づいてくるとか?』
ロンは呆れた。
『ちがうのぉ。さして、宇宙人は多くはいないぞぇ。それにじゃ、そもそも、あっちから探知されることは無い。そいつは身につけたとき普段とは感覚が大きく変わるのじゃ。然して長時間使うと脳に負担がかかるぞぇ』
『ふ~ん。相当ヤバいやつなんだねコレって、なにかに気づいたときだけ使うよ』
(……私、深みにハマってないかなぁ)
『チハルちん。それが賢明なのじゃ』
でも、私はやれるところまでやるよ。この護符があれば鬼に金棒も同然のはず。
宇宙人はさきに見つけて対処できるし、宇宙怪獣は、……ん。とりあえずは逃げるときに見つからないように隠れるのに使えるよね。
それに地竜を討伐できたことで宇宙怪獣との戦い方は何となく分かってきた。
最近、自信がついてコツを掴んだかもしれない。あとは来たものから退治するだけと言いたい。
――あれこれと、私が考えている最中。ロンはあるものを見つけた。
早朝からお店を開けているお惣菜屋さんの前を通ると「えび焼売 新発売」の文字を発見した。ロンはめざとく「新発売」と書かれたPOPを見逃さなかった。
POPとは、商品を買ってもらうためのちょっとしたメッセージ。
チラシやカードなど色々ある。少ない言葉のフレーズにそのお店の特徴が出ていて楽しい。
ここのお惣菜屋さんはストレートなメッセージでなく、面白い言葉が書かれている。限定期間のみに貼り出されるので目にする人は常連さんが多い。
飛び出すロン。 ――目をキラキラと輝かせ、私に買って帰るんだよねと言わんばかりに目くばせしてからガラスケースの前に立ちはだかった。
私はお気に入りのポシェットから財布を取り出して中身を確認。
「おばちゃん。えび焼売ひとつ。お願いします」
八個入りのえび焼売を店のおばちゃんに注文する。
『ナイスじゃ。チハルちん』とロンからお褒めの言葉を頂く。
「おや。随分と早いね。弁当のおかずにするのかい?」とおばちゃんが言う。
「いえ、ママのお昼ご飯ですかね」と適当に答えてえび焼売を入手した。
出来立ての香りを漂わせ「あっ、焼売」とすれ違う人々に気づきを与えながら家路に向かう。
ロンは匂いに惑わされ飛びつきたい気持ちを抑えつつ家まで我慢した。
今日は祝日。学校は休みだった私は一日中。ロンと一緒に家にいる。
居間のテーブルに上に買ってきたばかりのえび焼売の包みを開いて麦茶を用意した。
「あぁ~ん」と隣で口を開いて待っているロン。
私はえび焼売をひとつ放り込む。
『モグモグ。チハルちん。ホク、美味しいのぉ』とロンは涙目で喜んでいる。
「あぁ。少し熱かった? 冷ました方が良いよね」
ロンは変わっている犬や猫が食べないような少し熱い食べ物も平気で食べる。
『うん。少し火傷したみたいなのじゃ』
「ロンの分は取っておくから私もひとつ。パクっ」とえび焼売を食べてみる。
これは中々の味だね。……旨みの乗ったえび汁がふわっと口の中に広がる。隠しに刻んだ小さなタケノコの甘さもいいね。
あたたかくおいしいものは、いつも私たちをなごませてくれる。
……少しだけの心のやすらぎ。
ふっと思う。……ロンとの出会いからいろいろあった。
ここまで無事だったのもロンと聳孤様のおかげだ。
「ロン。一度、山の守護神様にお礼を言わなくちゃね」
『うむ。チハルちん。よい心掛けじゃ。そのときは妾も一緒ぞぇ』
「うん、もちろんだよ。ロンはいつも一緒だよ」
『チハルちん。お供え物はこのえび焼売を持って行くのじゃ!』
「えっ。それ必要?」『もちろんじゃ!」
今日も和やかな一日が過ぎて行く――。
「ロン。これを食べたら散歩だよ。それといっしょに河原で練習付き合ってね」
『妾はこのあと。寝ていたい』
「だめだよ。そんなんじゃ。カイチに言われるよ」
『うぅ。わかったのじゃ』
こうして今日もチハルの特訓は続く。ロンのダイエットを兼ねて……。
こんばんわ。ラシオです。
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