第8話 異常存在調査報告書 『人の卵』
【機密指定:特級秘匿案件】
異常存在調査室 特別事案管理課
案件番号:E-0001
異常存在調査報告書
対象名称:人の卵事件
危険度:SSS
分類:上位存在案件
関連事象:無花果/異界/自然発生異能者
・概要
██年██月██日 15時47分。
虎ケ崎市中心部にて、突如として直径約80cmの卵型肉塊が出現。
出現と同時に虎ケ崎市民約15,000名が瞬時に消失した。
当初は大規模失踪事件として警察及び自衛隊による調査が開始されたが、現地調査の結果、通常現象では説明不能であることが判明。
政府直轄組織「異常存在調査室」が発足する契機となった事件である。
・人の卵
対象は表面が脈動する肉質組織で構成された卵状物体。
外殻は生物組織と酷似する一方、既知の生物学的分類には該当しない。
対象へ接触した人間には二通りの結果が確認される。
『死亡』
『異能の獲得』
生存率は極めて低く、接触者の大半は魂及び肉体の崩壊により死亡する。
生還した者は例外なく異能保持者となる。
現在、人の卵は異能調査室管理施設にて第一級封印対象として収容・監視中。
・正体
現地調査及び夜崎幽隊長の証言により、人の卵は上位存在【無花果】によって生成されたものであると判明。
構成要素は虎ケ崎市民15,000名。
剥離した表皮からは少なくとも1000近い種類のDNAが検出された。
対象らは肉体・魂・存在情報を極限まで圧縮され、一つの肉塊として再構築されていた。
異能調査室では本対象を『異能の種』の一種として定義する。
接触者へ異能が発現する現象は、人の卵内部へ圧縮された『15,000人分の魂』と、その魂が持っていた未来……つまり人生の『可能性』が流入することによって引き起こされるものと推測される。
これは一種の情報汚染であり、耐えられるか耐えられないかは魂魄強度が関係してると、一部の研究者の間で議論されている。
尚、情報汚染に耐える魂であっても、その後の異能との共存ができない場合は魂堕ちと判断され、処分対象となる。
よって、生きるか死ぬかではなく、生きた後の警戒も怠ってはいけない。
・上位存在【無花果】
事件発生時、人の卵付近にて一体の存在を確認。
頭部全体が白布で覆われたような外見を有し、顔面及び身体的特徴の詳細は不明。
唯一の生存者である夜崎幽との短時間の接触後、突如として消失。
現在まで再出現は確認されていない。
異能調査室では対象を『上位存在【無花果】』と仮称し、最高危険度警戒対象として登録している。
・事件による影響
本事件を境に、日本各地において異能発現事例が急増。
また、それまで観測例の存在しなかった異界及び異界由来怪異の出現が相次いで確認された。
本件は世界そのものの可能性を書き換えた起点事象である可能性が高い。
以降発生した自然発生異能者及び異界関連事件は、全て本案件との関連を疑うものとする。
・唯一の生存者
現第弐調査部隊隊長、夜崎幽のみである。
事件当時、虎ケ崎市内に存在していた唯一の生存者。
本人は【人の卵】及び【無花果】との接触を証言している。
だが、医学的検査では異能発現反応を確認できなかった。
無花果との直接接触を経験した唯一の人間であり、本件の最重要参考人兼監視対象として継続的な観察を実施している。
・調査員所見
人の卵事件は、人類史上初めて確認された上位存在による大規模現実改変事件である。
本件以降、異能・異界・怪異という概念が現実へ定着した。
現在発生している全異能関連事案は、本事件を起点としている可能性が極めて高い。
異能調査室は本案件を最優先調査対象とし、上位存在【無花果】の追跡及び人の卵の継続監視を実施する。
・対応方針
人の卵の第一級封印及び24時間監視。
上位存在【無花果】の所在調査。
接触者の監視及び異能発現調査。
異界出現事案との関連性の継続調査。
報告書記録者:異常存在調査室室長 明星天




