第7話 幽の休日
起きたら既に日は高く上り、時計の短針は12を少し過ぎていた。
欠伸を噛み殺す理由もなく盛大に息を吸って空しく吐き出す。
スウェットの隙間から腕を突っ込んで胸元を掻きながら今日何する予定だったかを思い出していた。
「あぁ……掃除しなきゃ」
見渡した部屋の惨状を見て思い出すまでもなかったことを思い出した。
掃除機を掛けるにはまず床が見えてないといけない。
散らばっているのは主に服とゴミ。
普段使う物はテーブルの上に積まれている。
まずは洗濯物をひとまとめにする。色物を分けるのは後だ。
次に散らかったゴミだ。まずは燃えるゴミを集めて袋へ詰め込んでいく。
すると残るのは缶やペットボトルだ。
これらは洗って乾かさないといけないから、まとめて台所へ持っていく。
「あぁ、そうだった……食器も洗わなきゃ」
失念していた。
持ってきたペットボトルと缶の山を一旦脇に置き、シンクの中に積み上げられた食器や調理器具を洗っていく。
それが終わると今度はペットボトルと空き缶の洗浄だ。
食器も服もゴミも洗い続けることに辟易する。
しかしそれが掃除だ。それをしないと、こうなるのである。
午後を過ぎた頃、全ての掃除が完了した。
洗濯した服は干すのが面倒だったのでこれからコインランドリーだ。
洗濯機から吐き出された湿った服達をランドリーバッグに入れて家を出る。
田舎だから車移動だ。車ならすぐなのに歩けば遠い。まったく不便極まりない。
「乾かしてる間に飯でも食べようかな」
出たついでに遅めの昼食を食べることにした。
なんてことのないチェーンの牛丼屋さんだ。
敢えて定食を頼むことを最近の趣味としている僕だが、今日は何にしようか……。
「あれ、夜崎君?」
「あっ、棚村さん。奇遇ですね」
第参調査部隊隊長の棚村ユキさんがカウンター席で定食を食べていた。
まさかこんな場所で同僚に、しかも同志に出会えるとは。
「棚村さんも昼食ですか」
食券を店員さんに渡して隣に座る。
「昼食というか、朝食というか」
照れ臭そうに笑う棚村さんだが、現在の時刻は3時ちょっと前だ。
この時間で朝食兼昼食はもうちょっと恥ずかしがった方がいいと思う。
「まぁ、お互い不定休ですし、生活リズムもバラバラですからね」
「あんまりそれを言い訳にはしたくないけどね」
「職場改善、やっていくしかないですねぇ」
それができたら苦労しないのだが……。
と、そんな話をしていると注文した定食が出てきた。
ありがとうございますとお礼を言って受け取り、いただきますと感謝を込めて肉を食う。
うーん、口内いっぱいに広がる牛の旨味。油しか勝たんのや……!
「じゃあ先行くわね」
「えっ、もう食べ終わったんですか?」
「そういう夜崎君ももう半分食べてるよ」
「あ……職業病ですね」
「だね。じゃあ、また職場で」
「はい、お疲れ様です」
いつでも動けるように気を抜けない僕達は早食い気味だった。
食事を終え、満腹になりながらコインランドリーへ戻ってくるとちょうど乾燥完了のブザーが鳴っていた。
取り出してテーブルの上で畳んでランドリーバッグへ並べていく。
手早く畳んだら今日はもう何もすることがなくなった。
「積んでるゲームでも消化しようかな……」
なんて軽く始めたゲームは存外面白く、結局夜中の2時まで遊び続けてしまった。
翌日、廊下ですれ違った棚村さんに軽い説教を受けてしまったことをここに報告しておく。




