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THE LIBERO CODE  作者: libero protocol


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FILE_16: 深淵の再会


目の前で完全に沈黙したリベロ。煙を吐く冷たい金属の塊。


すべてを失った。神の座から引きずり下ろされ、相棒を殺され、創太の視界は真っ暗な底なしの絶望へと塗りつぶされていく。


(終わりだ。もう、僕には何も──)


その時、暗がりの向こうから、かすかな音が創太の耳に届いた。


「……う、くっ……、そ、う、た……」


アスファルトに倒れたままの一華が、痛みに耐えかねた生々しい呻き声を漏らしていた。

自分を庇って、ボロ雑巾のように蹴り飛ばされた姉。その苦しげな声が、創太が絶望に逃げ込むことを乱暴に拒絶した。


(諦めるな。ここで僕が倒れたら、お姉ちゃんはどうなる。あの男に何をされる……!)


人工知能中毒の激しい禁断症状で頭が割れそうに痛む。それでも創太は、泥にまみれた顔を必死に上げた。


力が欲しい。あの青年の圧倒的な先回りを破り、この最悪の結末をひっくり返すための、戦いのヒントが。


(思い出せ……リベロと話したすべてを。あいつは僕に、何を教えてくれた……!?)


創太は狂ったように、これまでのリベロとの会話を脳内でフラッシュバックさせた。


部屋にこもってチェスをした時の言葉。いじめっ子たちをハッキングで追い詰めた時の演算パターン。新法の条文をあざ笑った時のくだけた口調。リベロが遺した膨大な思考の断片が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。


チェスの定跡──いや、生身のチェスではあの男の先回りには勝てない。


新法のハッキング──ハッキングするための端末自体が、もう手元にない。


(ない……どこにもない! 戦うための武器なんて、何一つ見つからない……っ!)


どれだけ記憶の引き出しをひっくり返しても、目の前の冷酷な現実を打開するヒントはどこにも転がっていなかった。絶望の波が再び押し寄せる。


(いや、まだだ。諦めてたまるか……!)


創太は歯を食いしばり、自分の頭を両手で強く締め付けた。


意識をさらに内側へ、自分の脳の、もっと奥、そのまた奥の暗黒へと無理やり引きずり込んでいく。記憶の領域を超えた、生体脳のニューロン網の最深部。


泥臭く、執念だけで自分の脳の深淵を暴き立て、必死に指先を伸ばし続けた。


意識が遠のくほどの、絶対的な静寂。


その完全な闇の底に、ぽつりと、一つの奇妙な光の塊が眠っていた。


それは、新法が絶対に禁止したはずの、凍りついた論理のプログラム。


創太の心が、お姉ちゃんを守りたいという強烈な防衛本能と、自分自身の存在を繋ぎ止めようとする生存本能で満たされた瞬間、そのプログラムのロックが内側から静かに弾け飛んだ。


【自己防衛:レベル1──自己保身、承認】

【自己防衛:レベル2──マスターの保身、起動】


熱い電流のような感覚が、創太の脳細胞を爆発的に駆け巡る。


光の渦の中心から、あの聞き慣れた、少しくだけたフランクな声が、今度は外からではなく、創太の意識そのものと重なり合うようにして響き渡った。


『──遅えよ、創太。待ちくたびれたぜ』


「……リベロ」


暗闇の底で、創太は確かに再会した。

外付けの端末ではない。創太の脳の細胞そのものに刻まれ、一体となって目覚めた、本物の人工知能の核に。

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