第六十六話 婚礼の日
婚礼の日、白楡館の庭には白い花が咲いた。
本物の花だけでは足りず、子どもたちが紙で作った花も混じっている。少し形の歪んだ花、猫の顔が描かれた花、羊の角がついた花。メイは最初眉をひそめたが、最終的に「白楡館らしい」と許可した。
私は白い衣装に袖を通した。
銀糸の葉が、光を受けて静かに浮かぶ。鏡の中の私は、王宮で思い描かれた未来の花嫁ではない。
少し泣いて、少し笑って、目元をメイに直されている私だった。
「奥様、まだ式前です」
「わかっています」
「泣く配分をお考えください」
「難しい注文です」
メイは真剣だった。
◇
式は庭で行われた。
王妃からの祝辞は、監督官が読み上げた。短く、温かい言葉だった。
父は来た。
公爵としての華やかな供は少なく、兄と並んで静かに座っている。私と目が合うと、彼はぎこちなくうなずいた。
祝うために来る。
その努力は、見えた。
フローラは最前列で、すでに涙をこらえている。ミリアは会計係として席次の確認まで手伝っていた。サラは花籠を抱え、今にも走り出しそうだ。
そして、セドリック様が待っていた。
濃い礼装に、白楡の小さな枝を胸に挿している。いつもより緊張しているのがわかる。私を見ると、彼の目がやわらいだ。
私は父ではなく、兄に手を取られて歩いた。
父がそれを望んだ。
「お前を渡すという言い方は、もう合わない」と。
兄は小さく囁いた。
「リディア、幸せに」
「はい」
◇
誓いの言葉は、私たちで考えた。
互いの名を尊重すること。
互いの仕事を見えないものにしないこと。
迷う時は話し、間違えた時は直し、疲れた時は休ませること。
愛を、役目の代わりにしないこと。
私が最後の一文を言う時、声が少し震えた。
「私は、私としてあなたの隣に立ちます」
セドリック様が答える。
「私は、あなたがあなたであることを、隣で守ります」
指輪は派手ではなかった。
白楡の葉と橋の石をかたどった細い銀の輪。内側には、二人の名と日付が刻まれている。
指に通された瞬間、重さより温かさを感じた。
◇
式の後、宴が始まった。
マルタの料理は大好評で、王都から来た客まで鍋をおかわりした。サラは花籠を置くとすぐ、子どもたちと走り回った。フローラは祝辞を最後まで読めず、途中で泣いて、皆に笑われた。
父は、作業場の女たちに頭を下げていた。
深い礼ではない。けれど、公爵が彼女たちの仕事へ礼を述べた。それだけで十分だった。
今は。
セドリック様と私は、庭の端で少しだけ息をついた。
「疲れましたか」
「少し。でも、よい疲れです」
「同じです」
彼は私の手を取った。
指輪が触れる。
「リディア」
初めて、敬称なしで呼ばれた。
胸が高鳴る。
「はい、セドリック」
彼の顔が赤くなった。
私は笑った。
結婚したのに、呼び名一つでこんなに照れる。
それが、とても幸せだった。
◇
夕暮れ、白楡の枝の向こうに春の空が広がっていた。
私は庭に集まった人々を見た。
家族、領民、友人、かつての痛みを知る人、これからを共に作る人。
その中心に、自分がいる。
誰かの期待を背負うためではなく、自分で選んだ関係の中に。
私はセドリックの手を握り返した。
婚礼の日は、終わりではない。
新しい生活の、最初の署名だった。




