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呪われた精霊使いの探しもの  作者: ルンド


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第五話 今度こそ村へ

四話は難産だったのに何で五話はこんなにサクサク進んだんだぁ――――

「ったく、あのまま森に放り出そうかと思ったぞ」

「ご、ごめんなさい

でもあんな物を行き成り出したあんたにも責任はあるわよ!!

っあ、っあんな・・・貴重な物・・・・・」

二人は今、薄汚れた灰色のフード付きのマントを羽織って旅人を装っている。

昨夜シンがまとっていた黒いローブは夜の森で身を隠すにはいいが、黒は悪魔の色という認識があるため旅人を装って村に入り込むならこちらの方がいいというシンの判断によるものだった。

正直に言えば最初にマントを差し出されたとき、煤や砂ぼこりで汚れたそれにリイナは難色を示したが、都心の近くは別としてそれ以外の場所で旅人清潔な身なりをしているのは逆に怪しまれるのだという。特にリイナの村の様に一番近くの村に行くのにも数日かかるような辺境では旅の汚れがないのは逆におかしいのだと、旅の間、荷物は最小限、水は貴重でそれは殆どは飲み水で身を清めるには川や湖などの水辺が近くにあるときのみになる。

それだっていつ野生の獣や盗賊と出くわすかわからないのだ、できて精々が濡らした布で体を拭くくらいで服など洗っている暇はない。

洗ってしまえば乾くまでそこを移動できないからだ。

もちろんあまりに汚れていると病を持ち込む事を恐れて村に入れない事もあるため最低限の節度は守るがそれにも限度というものがあるのだ。

そういった事情から旅人があまりにも清潔だと逆に疑いを産むのだという。

「お前だって、数日間マントにくるまって地面に横になるしかないただの旅人が汚れ一つない綺麗な格好で現れたらおかしいと思うだろう。」

「それは確かにそうだけど・・・」

シンの説明は確かに納得できるものだが、年頃の少女としてはやはり今の薄汚れた格好に我慢ならないのだろう。

不満げにリイナ文句を言う。

リイナの村は山間にある辺鄙な村ではあるが、水が豊富で火山があるおかげで温泉も湧いており、村人はいつも村にある公共の大浴場で自由に湯あみができた。

本来なら暖かな湯につかるというのは貴族でもなければ滅多にできない贅沢だが、リイナの村では皆が楽しめる癒しのひと時だったのだ。

そんな環境で育ったからこそリイナは貧しい農民の出にしては珍しく身ぎれいにする事が当たり前だという考えを持っていた。

他の村ではせいぜいが川や湖での水浴びがせいぜいで、暖かな湯につかるのは夢のまた夢だというのを知らないのだ。

「その腕輪を外さないのなら、村に着いてからお前の言う温泉とやらに入ればいい。

精霊様のお告げで巡礼の旅の間決して外すなと告げられていると言えば問題ないだろう」

術を掛けてある影響で錆びる事はないから安心しろ。

そう言ってやれば現金なもので途端に嬉しそうに足取り軽く歩き出すリイナにシンは苦笑しながら付いて行く。


ガラガラガラ

暫く歩いていると後ろから荷馬車を引く音が聞こえてきた。

「あんれまぁ、こないに辺鄙なところに旅人さんとはめんずらしい。

あんたら、こないなところに一体どないな用事で来なすった」

人の良さそうなのんびりとした訛りで話すのは初老に差し掛かった一人の男だった。

リイナはその姿を見て体を強張らせる。

よく、知っている人だった。

リイナの様子に気付いたのだろう、シンはさりげなく男に近づいて男の視線を自分に向けさせた。

「初めまして、私はシン。

こっちは私の妹のラナです。

私たちは病気の母のために病平癒の巡礼に出ているのですが、一つ前に訪れた教会で精霊様からこの先にあるアルカ村に行けば母の病は良くなるとお告げを頂き向かっている最中なのです。」

そう言ってシンは警戒を解くためだろうマントのフードを外して、丁寧にそう告げる。

男はシンの顔の仮面に一瞬驚いたようだが、仮面で隠されていない左側に浮かぶ柔和な表情と穏やかな顔立ちを見て警戒を解いたのだろう。

「おうおう、そうかそうか!

病気のおっかあのための巡礼か!

そりゃいい、あんたらが行こうとしとるアルカ村はオレの村じゃきぃ

あんたら良かったら荷台に乗ってけ、あんたら二人ぐれぇなら問題ねぇ」

オレの名前はルルドじゃきぃと名乗って二人に荷台に乗るように勧めた。

それにシンは目を丸くして『よろしいのですか?

御迷惑では・・・』と遠慮がちに尋ねるとルルドは遠慮するなと言ってシンの肩を叩きながら乗るように促した。

それに、控えめに笑いながら『では、お言葉に甘えて』と言った後、リイナの元に戻って来て。

「ラナお前も疲れただろ。

ここはお言葉に甘えて乗せてもらおう」

まさに妹を気遣う優しい兄という風にシンはリイナに声をかける。

その時ルルドに聞こえない様に小声で告げてきた。

「怪しまれないように、荷台に乗ったらフードを外せ。

大丈夫、腕輪の目眩ましであいつはお前には気付けない。」

『いいな』というシンに小さくうなずき返してリイナはルルドの馬車の荷台に乗った。


ルルドじいちゃん・・・

リイナはルルドを見て複雑な気持ちが胸に湧き上がるのを感じていた。

ルルドは村で取れた農作物を町で売ってその金で村では手に入らない生活必需品を買ってくる仕事を任されていた。

今荷台に乗っている品は村に着けば村人に平等に分配されるのだ。

ルルドは子供好きで町に行った際には必ず子供たちに土産を買ってきてくれた。

リイナも子供の頃から可愛がって貰っていた。

でも、それもあの時までだった。

ルルドは表立ってリイナたち家族を虐げる事はしなかったが庇ってくれる事もしなかった。

分かっている。

もし、迂闊にリイナたち家族を庇えば次に槍玉にあげられるのはルルドとその家族たちだルルドは家族を守ろうとしただけで、決してリイナたちの家族を虐げはしなかった。

頭では分かっている。しかし、感情は別だった。

確かにルルドは表立ってリイナたち家族を虐げる事はしなかった。

だが、同時に裏で助ける事もしなかったのだ。

『裏切られた』と、どうしてもその思いが拭い去れないのだ。


荷台に乗った後、リイナは震える体を叱咤してフードに手をかける。

シンの姿を見れば目眩ましがきちんと働いているのは理解できるがそれでも不安でしょうがなかった。

もし気付かれたらどうしよう。

そう思っているとシンがフードを握りこんでいるリイナの手を優しく包んだ。

「どうしたラナ?

母さんの事が心配なのかい?」

精霊様名のお告げがあったんだから大丈夫きっとよくなるよ。

と、告げる穏やかな笑みを浮かべるシンの顔が目に入る。

森にいた時とは違う亜麻色の髪にハシバミ色の瞳、少しだけ日に焼けた肌、整ってはいるが美しいというよりも温和で人に安心感を与えるような愛嬌のある顔立ち右側を覆う仮面も銀の染料で魔除けの文様を刻まれている以外は素朴で朴訥な印象を見る人に与えた。

森にいた時とは全く似ても似つかないその姿を見てリイナは唐突に理解した。

自分は今、リイナではなくラナなのだ。

だから大丈夫。

リイナはフードを外しながらラナとして、シンに答えた。

「うん。

お母さんまた元気になるよね、お兄ちゃん」

もちろんだよラナ。そういってシンは慰めるようにリイナの頭をなでる。

そんな二人のやり取りをルルドは微笑ましそうに見つめていた。

二人が座ったのを確認するとロバに進むように促し、三人はアルカ村へと向かうのだった。

登場人物の名前は実を言うとその場のノリと勢いで付けてます。

シンだけはあらかじめ意味も含めで考えてましたが、それ以外はリイナもルルドもその場の思い付きで決めました。

というか、リイナに関してはシンに好意を持つ女の子として存在自体は決めてたけど出そうとしか思ってなくて名前も何も決めてなかったうえ、ルルドじいちゃんは五話を書いてる途中でそうだ向かってる途中で荷馬車に乗ってる村人に会って乗せてもらうのもありだなと、唐突に閃いて勢いで出してしまいました。

五話を書き始めたときは影も形もなかったのに、でもルルドじいちゃんのなまりのある口調を書くのは楽しいです。

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