第四話 村へ
今回は少し短くなりました。
「出立する前にこれを身に着けておけ」
そういってシンは自分の荷物から取り出した物をリイナに投げて寄こした。
それは何の変哲もない木の腕輪だった。
「目眩ましの術が掛かっている。
それを着けていれば誰もお前だとは気付かないはずだ。村では決して外すな」
何の変哲もないと思ったがそうではなかったらしい。村に戻るとなれば確かに自分だとばれるわけにはいかない『ありがとう』と言って左腕に付けようとして、僅かに違和感を感じた。
よく見てみれば木製だと思った腕輪の内側は何かの金属らしい。
「この内側の金属って何?」
リイナはわぜ態々隠すようしているのか疑問に思ってシンに尋ねた。
「外側はただの張りぼてだ。
実際に目眩ましの効果があるのは内側の銀の腕輪の方だ。
銀というだけで目立つのに、さらに目眩ましの為に細かい細工が施されているそんな物身に着けて人が滅多に訪れないような小さな村に行ってみろ、せっかく目眩ましで誤魔化しているのに別の意味で目立って仕方がない」
そう言ってシンは自分の荷物をまとめ終えると、最後の仕上げとでもいう様に自分の仮面に手を添えて何か呟く。
すると、それまで銀色だった仮面が木製のありふれた仮面へと変わる。
僅かに目元に銀色の飾り模様があるがそれも護符として一般的で回っている模様で、銀色で描くのも縁起がいいからと良くされている事だった。
銀色の染料自体は安いと言えないまでもリイナのような農民でも少し頑張れば買えるような値段で教会が販売している。
銀は古来から魔除けとして珍重されて来た。本物の銀はそれこそ王族や貴族、教会の司祭くらいしか手にできないが染料ならば庶民でも簡単に手にできるし、本物の銀ほどではなくとも魔除けの効果がある事が証明されているから、多少高くとも村人皆で少しずつお金を出し合ったりすれば十分な量が買えた。
教会も値段を釣り上げて信者の不満を煽るよりも庶民や貧しい農村でも買えるくらいの値段で販売したほうが信者をえやすい上に安くとも大多数の者が購入するのだからその金額は馬鹿にするほどの者でもないという判断なのだろう。
つまり、何が言いたいかというと・・・
「ぎっ、銀ですってぇ―――――!!」
本物の銀など農民であるリイナにとって伝説上の存在に等しいのである。
「ったく、いくら術でお前を追っていた奴らが来れないようにしているとはいえ、完全に隠れきれるわけじゃないだぞでかい声を出すな」
居場所がばれるだろうが!と怒るシンにリイナは混乱しながら捲し立てる。
「で、でも
こっこっこっこ、これ、っぎ、ぎんなんでしょ
何でそんなも・・・・」
こいつ何だか鶏みたいだな、などとシンが思っているとも知らずリイナの視線がシンのつい先程まで銀色だった仮面に注がれる。
染料の使い方は実に多種多様だ布を染める以外にも鉄などの金属に混ぜて魔除けの効果のある装飾品を作るのに使われたりもする。
染料を混ぜらた金属はその魔除けの効果と銀色の光沢を帯びる事から昔から庶民に人気があり広く広まっていた。
リイナ自身も両親からそういった魔除けの髪飾りを誕生日に送られ大事にしていた。
だからこそ、シンの仮面が銀色をしていてもあまり不思議には思わなかったのだが、態々目眩ましで木製の仮面に偽装するという事は・・・
「っま、まさか、あんたの仮面も・・・」
「うん?
俺の仮面もお前に渡した目眩ましの腕輪もどちらも純銀だ分かったらとっとっと着けろ村に着くのが遅くなるぞ」
「っじゅ」
純銀。
シンの口から飛び出したその単語にリイナは声にならない悲鳴を上げながらこれは夢なのではないと思えてきた。
自分は本当はまだあそこから逃げ出す事ができずに意識を失っていてそのまま悪魔の贄にされるのではないか、純銀など個人で持てるはずが無い国宝か、首都の大神殿の奥深くに安置されるかの二択で下手をすればリイナたち庶民だけでなく貴族たちにとってすら伝説の中のにしか存在しないと思っている者もいる程の貴重な代物なのだそんな貴重な物が今自分の目の前にある。
正直に言えば昨夜の様に意識を失いたいと思ったが、痺れを切らしたシン『いい加減にしろ』と、いわれて目眩ましの腕輪を腕に填められてしまうのだった。
なぜだ、村への出立とその道中をと思っていたのにふと思いついた銀の設定と驚くリイナを書くのが楽しくて出発すら出来てないだと・・・




