第二十二話 新たな契約者
―――あははは
―――やったやったぞ、ついにやったんだ
―――おい、悪魔見ているんだろう
―――契約の証だ
―――こいつをお前の贄にくれてやる
―――だから力を寄こせ
蝋燭の微かな明かりに照らされただけの薄暗い教会の中、狂った様に笑う一つの影が虚空に向かって叫ぶ様にそう言った。
その足元には少し前にこの村にやって来たばかりの精霊使いが錫杖に貫かれて息絶えていた。
影の言う贄というのはこの精霊使いの事だろう。
かつての契約者の無残に変わり果てた姿を見て悪魔はうっそりと微笑んだ。
面白い
あのご馳走を手に入れるまでの間の前座くらいにはなるだろう。
―――――いいだろう
―――――お前に力をやろう
―――――ただし、お前の足元に転がっているそいつだけでは贄としては不足だ
―――――あの兄妹を
―――――村にやって来たあの兄妹の魂を寄こせ
―――――そうすればお前の足元に転がっている木偶などよりも強い力をお前にやろう
悪魔からの返事を聞いた瞬間、影の心は歓喜に支配された。
ああ、やっと自分に相応しい場所に行ける。
いつもいつも不満だった。
自分はこんな田舎の村でただ農作業をして一生を終える人間ではない。
相応しい場所に行く事が出来ればもっと上へもっと高みへと昇れる人間なのだと、ずっとそう思っていた。
なのに周囲の人間は自分のその思いを理解しないどころか嘲笑ったのだ!
いつまでもバカみたいな夢を見ていないで現実を見ろなどと両親ですらもそういって影の話をまともに取り合おうとはしなかった。
だが、どうだ天は自分に味方した。
今や自分を嘲笑った村人たちは悪魔の操り人形となり、自分はその悪魔の新たな契約者となったのだ。
影は歓喜の笑みを浮かべたまま悪魔の申し出を受け入れた。
今ここに新たな悪魔の契約者という名の悪魔の玩具が生まれた瞬間だった。




