第二十話 取り調べ4
正直、この話を取り調べにカウントするかどうか悩みました・・・
「着いたぞ」
騎士の言葉通り、呼び出される前までいた天幕に辿り着いた。
「いろいろ不便かもしれんが、今村の中は精霊使い様が亡くなられて事で村中気が経っている。
こちらの方が村の中よりも安全だろう」
「はい、ガラナ様でよろしかったでしょうか?
お気遣いありがとうごさいます」
シンたちを天幕まで連れてきた騎士は先程自分たちを呼びに来た騎士と同じ人物だった。
名前は確かリンドカルドがガラナと呼んでいたはずだ。
シンは名前を確認しつつ感謝の言葉を述べるが、ガラナは答える事はせずに中でおとなしくする様にだけ伝えてその場を立ち去った。
パサリ、ガラナが立ち去ったあと、シンはリイナを連れて天幕中に入るとドカリと地面に座り込み前髪をかき上げて天を仰いだ。
言葉こそ発していないが、『ああ、くそ』と騎士たちを罵る声が聞こえてきそうな程だ。
「本当に、あなたの言う通りになるの?」
「ラナ」
リイナの呟いた言葉にシンは短くラナと呼ぶ。
その声は一見優しげであるにも関わらず声を発したシンの目はリイナを射殺さんばかりに剣呑だった。
その目を見てリイナは自分の失態に気付いた。
「兄さん、ごめんなさい全部兄さんに任せっきりになってしまって」
慌てて謝罪の言葉を口にしながら、リンドカルドが席を外していた時の出来事を思い返す。
「ラナ」
それまで誰もいないときはリイナと本当の名前を呼んでいたシンが初めて周囲に誰もいないにもかかわらず、リイナをラナと呼んだ瞬間だった。
「なに!?
いっ・・・・・」
『一体どうしたのよ』と、続く筈だった言葉をシンは人差し指を口元に持っていくことで遮り黙らせた。
周囲を見回し何かを警戒している様なシンの様子にリイナも自然と黙り込んだ。
リイナが何も発さないのを見るとシンはおもむろに立ち上がり、天幕に置かれていた水差しを手に取ると天幕の隅の方に移動し、手を水で濡らしてその手で地面に何かの紋様を描いた。
それをさらに三か所、計四隅に描き終えるとリイナの方を振り返り矢継ぎ早に話し始めたのだ。
「いいか、時間がないから必要最低限の事だけ話す。
質問も受け付けない。
まず、騎士団の連中は信用するな。
奴らは狂信者だ、少しでも悪魔と関わりがあれば殺す事を一切躊躇しない。
今回の奴らの目的はまず間違いなくこの村の人間を皆殺しにする事だ。
俺たちも今この村に居合わせた時点でその皆殺しの対象に入っている。
奴らがすぐ行動に移さないのはあの紛い物の精霊使いと契約していたはずの悪魔が今どうなっているのか分からないからだ。
悪魔の行方が分からないまま村人や俺たちだけ始末してしまえば、最悪悪魔に逃げられる可能性があるからな、悪魔を見つけるまでは騎士たちも俺たちや村人を如何こうする事は出来ない。
だが、それも俺たちがぎりぎりグレーの存在だからかろうじて見逃されているに過ぎない。
もし、俺たちが最初から完全に精霊ではなく悪魔に縋るつもりだったと思われたら終わりだと思え。
もしそうなったら、十中八九悪魔を見つける前に始末される。
それからたとえ周囲に誰もいない時でも気を抜くな、騎士たちは教会に伝わる術や道具を使う事が出来る場合がある。
つまり、こちらの行動や会話は筒抜けだと思え、今は俺の術で誤魔化しているが誤魔化せる時間は短い上に気付かれずに使える回数はあと一回か二回、良くて三回が限度だ。
分かったか!」
そこまで一息で話し終えた瞬間シンは舌打ちをした。
それを聞いてリイナは先程シンが言っていた術の効果が切れたのだと理解した。
正直に言えば、シンの話の半分もリイナは理解出来ていない、いや理解などしたくはなかった。
まだ悪魔に操られておらず正気だった村長の求めに応じてやって来た筈の騎士たちの目的が村人たちを助ける事ではなく殺す事だったなんて・・・・・・・
結局自分シンから聞いた話を受け止めきれないまま取り調べを終えてしまった。
・・・彼は一体どうなのだろう、彼は知っているのだろうかつい先日正式に騎士になったばかりでこれが初めての任務なのだとうれしそうに語っていた彼は・・・・・
教会に所属する人間は最初から二種類の人間を考えていました。
自分の欲望を満たす為なら悪魔とだって契約す人間と純粋に精霊を信仰しているけどそれが行き過ぎて狂信者となっている人間です(笑)
狂信者の方は悪魔絶対に許さないマンで無理矢理生け贄にされた人間やただ同じ村や町に住んでいた人間も彼らにとっては粛清対象です。
なぜなら、悪魔と少しでも関わりを持ってしまうのは前世で重罪を犯した罪人だからだと彼らは本気で思っているからです。
ゆえに悪魔と少しでも関わりをもった人間は粛清しなければならない、それが罪を清める唯一の方法だからというのが彼らの言い分です。




