第十八話 取り調べ2
タッタッタッ――――
小走りに駆けながら目的の天幕まで真直ぐに向かう。
見えてきた目的の天幕を駆けてきた勢いのまま開け放ち中にいる二人に呼び掛ける。
「シン、ラナ二人とも安心しろ。
ジュール隊長が取り調べは二人一緒に行ってもよいと・・・
あっ、すまん驚かせたか」
しかし、勢いが余りすぎて逆に二人を驚かせて仕舞った様で、それに気付いたリンドカルドはバツが悪そうな顔をしながら謝罪を口にした。
くすくす
そんなリンドカルドの様子が可笑しかったのだろう小さな笑い声が聞こえてきた。
見ればラナがシンの背中に隠れながらも安心した様に笑っていた。
「ラナ、あまり笑っては・・・」
そう妹を窘めるシンも、今にも笑い出しそうなのを必死にこらえている様だった。
「二人して、そんなに笑わなくてもいいだろう
ぷっ、あはははは」
文句を言うリンドカルド本人までが最後には笑い出し、天幕の中には結局、三人の笑い声が響き渡っていた。
騎士団の天幕が張られた駐屯地の中、一際大きな天幕の中から聞こえてくる笑い声に苦笑しながらジュールはレイヴンに話しかける。
「ほら見ろレイヴン、リンドカルドの奴あの兄妹と早速打ち解けたみたいだぞ。
あいつのあれは天性のものだな、取り調べの際に関係者たちを怯えさせたり怖がらせずに済むに越した事はないがそれが出来る奴はそうそういないからな」
関係者ならまだ別だがな
そうぽつりと零す自らの上司にレイヴンも笑いながら『ええ、本当に』と返した。
しかし、だからこそ心配にもなる。
果たしてあの青年にこれから待ち受ける出来事を受け入れる事が出来るのかどうか。
それによって彼の未来が決まると言ってもいい。
『願わくば彼の未来が明るい者でありますように』
今までも、これから行われる出来事に耐え切れずに騎士団を去った者、耐えて堪えて終いには心を壊してしまった者。
そう言った者たちを数え切れないほど見てきた。
明るい未来が訪れた者などいないと言っていい程に、しかしそれでもレイヴンはそう祈らずにはいられなかった。
「リンドカルド、隊長たちがお呼びだ」
しばらく、天幕の中でシンとラナと談笑していたリンドカルドは先輩の騎士に呼ばれて後ろを振り返る。
「ガラナ先輩!」
呼びに来た騎士を見て、嬉しそうに声を上げながらリンドカルドはガラナと読んだ騎士の下へと行く。
「相変わらず犬っころみたいだな。
隊長と副隊長がお呼びだ。
その二人に話を聞きたいから連れてきてくれとさ、お前も同席する様にだと」
そう言って、ガラナはリンドカルドの肩に手を置き耳元で何かを告げる。
「えっ
それは一体・・・」
「まぁ、上手くやれや」
告げられた言葉に思わず聞き返そうとするリンドカルドだがガラナは構わず背を向け手を振りながらそう言って立ち去って行った。
「あの、リンドカルド様
どうかなさったのですか?」
立ち去ったガラナの後姿を呆然と見つめながら立ち尽くすリンドカルドを心配したのだろうシンが躊躇いがちに話しかけてきた。
「あっ、いやなんでもない。
それよりも隊長たちを待たせる訳にはいかないから早く向かおう」
慌てて安心させるように二人に笑いかけながらリンドカルドはそう言って二人と共に隊長たちのいる教会に向かうのだった。
しかし、その脳裏には先程ガラナから言われた言葉が何度も繰り返されていた。
『あの兄妹にあまり深入りするな』
何故、ガラナはあの様な事を言ったのだろう。
あの兄妹に何かあるのだろうか。
結局答えは出ないまま3人は教会に着いた。
今朝見た光景を忘れられないのだろう、教会に近づくにつれて陰り始めていた二人の表情は教会に着いたことで完全に恐怖で覆われてしまっていた。
そんな二人を見てここから遠ざけてやりたいと思ってしまう自身の心を抑え込みながらリンドカルドは扉を開き、敬礼をしながら声を張り上げる。
「リンドカルド、お呼びと伺い重要参考人の二名をお連れいたしました」
扉の外の気配に気づいていたのだろう。
扉の前にいる三人の姿をしっかりと見据えながらジュールが声をかけた。
「ご苦労様リンドカルド。
やぁ、君たちがシン君とラナちゃんだね。
怯えなくても大丈夫だよ。
ちょっと君たちに聞きたい事があるんだ」
穏やかな目の奥に冷酷な炎を宿した騎士と怯える善良な一般市民の仮面を被る悪魔に呪われた青年との騙しあいが始まった。




