第十話 村への到着
リイナがラナの表記になったり、元のリイナになったりしていますがラナ表記はルルドもしくは第三者から見た視点で、リイナ表記はシンとリイナの視点として分けてみました。
分かりずらかったら申し訳ないです。
夕暮れ時、夕日に照らされた道をガラガラと砂埃を立てながら荷馬車が駆けて行く。
「おお、二人とも見えたでよ。
あれがアルカ村だで」
「えっ、本当どこどこ」
御者台から聞こえてきたルルドの言葉に、真っ先に反応したのは妹のラナの方だった。
「ラナ、そんなに慌てなくとも村は逃げたりしないよ」
そんな妹の様子を苦笑しながら兄のシンがたしなめる。
最初の頃はあまり会話に加わろうとしなかったラナも今ではすっかりと打ち解けて、三人は楽しげに会話をしながら村へと向かう。
「あ――――!!
ルルドじいちゃんだ!ルルドじいちゃんが返って来たー!!」
「わー
じいちゃんおかえりー」
「じいちゃんじいちゃん今回のお土産は何!?」
ルルドの姿に気付いた村の子供たちがわらわらと集まってくる。
じいちゃんじいちゃんと嬉しげに集まってくる子供たちの姿を見ていると昨夜ルルドから聞いた話は何かの間違いではないかと思えてくる。
「ふふ、子供たちに慕われているんですね」
その様子にシンは思わずそうこぼしてしまう。
それで荷台に人が居る事に気付いたのだろう、子供たちが一斉に顔を向けてきた。
「あれ、だれかいるよ」
「ほんとだぁ、兄ちゃんだれ?」
「何でお面何てつけてるの?」
「あっ、うしろにもうひとりいるー」
シンとラナに気付いた子供たちが次々と二人に聞いてくる。
そんな子供たちに目線を合わせる様に屈む。
「初めまして、私はシンと言います。
後ろにいるのは妹のラナです。
このお面は、子供の頃に火傷を負ってしまってそれを隠すための物ですよ」
子供たちの目を見つめ穏やかに一つずつ質問に答えていく。
シンのまとう穏やかな空気に警戒を解いたのが、子供たちがシンの周りに集まってくる。
そうやってしばらく子供たちの相手をしていると、ルルドが返って来た事に気付いた村人たちも次々に顔を出してくる。
「おお、ルルド戻ったのか」
「村長!
今戻っただよ、それに客人もいるだ!」
その中の一人が進み出てルルドに声をかけるとルルドは嬉しそうに村長と呼び、シンとラナを客人として紹介する。
「初めまして、シンと申します。
こちらは妹のラナです。
ラナご挨拶を」
「初めまして、ラナと言います。」
「これはこれはご丁寧にどうも。
初めまして、私はこのアルカ村の村長を務めるディシドと申します。
なにぶん田舎の村なので満足なおもてなしも出来ませんがどうかゆっくりと休んで行って下さい」
穏やかに微笑みながら会話をするシンと村長、その周りで土産をもらいワイワイと騒ぐ子供たち。
リイナたち家族が異端の烙印を押される前と同じ穏やかな日常がそこにあった。
その光景にリイナの胸に何とも言えない思いが込みあがってくる。
だが、それと同時に何か奇妙な違和感を感じた。
何だろう?
何かがおかしい、でもそれが何なのかが分からずにもやもやとした思いを抱えながらリイナはシンに呼ばれラナとしての仮面を被りなおす。
「ほう、病気の母親の為の病平癒の巡礼の途中でしたか」
「ええ、一つ前に訪れた教会でこの村に向かうようお告げで告げられてここに来たんです」
この村に来る途中でルルドさんに精霊使い様がいらっしゃると聞いてどんなに嬉しかった事かというシンに村長は少し心配そうな顔を向けるが、シンが胸元から昨夜ルルドから受け取った魔除けを村長に見える様に少し取り出して見せれば、意図を理解したのだろう村長はそれ以上余計な事はしなかった。
「それではすぐ精霊使い様にお会いになられますか?」
「いえ、旅の汚れも落とさずにお会いするのは礼儀に反しますし、汚れを落としてからでは遅くなってしまいので明日以降にお会いできればと思っています」
シンの言葉にそれは最もだと頷いた村長はならばアルカ村自慢の温泉にゆっくり浸かればいいといって案内を申し出るのであった。
村長の後をリイナと共にゆっくりとついて行くシンは口元に歓喜の笑みを浮かべていた。
ああ、今回は当たりだようやく手掛かりを掴めるかもしれない。
前では村長だと言うディシドが村には宿がないので自分の家に泊まればいいと言っているのげ聞こえてくるが、そんな事はシンにはどうでも良かった。
先程の自分たちが村に着いたばかりの時に村人たちの奇妙な様子。
悪魔との騙し合いはもうすでに始まっているのだ。
ここから先はほんの少しの判断ミスで命を落とす戦場だ、決して油断してはならないと自分に言い聞かせ、シンは歩みを進める。




