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呪われた精霊使いの探しもの  作者: ルンド


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第九話 朝の一時

「ルルドさん、起きてくださいルルドさん。

朝ですよ、起きて」

自分を呼ぶ声に意識が浮上していく。

薄っすらと目を開ければ、見慣れない青年の顔が薄ぼんやりと見えた。

はて、こんな知り合いいただろうか?と、疑問が浮かんだが頭がはっきりしてくるとすぐに誰だか分かった。

母親の病気を治すために兄妹で病平癒の巡礼をしている青年だ。

一つ前の教会でお告げを貰い、自分の住む村に行くのだと言っていたからこれも何かの縁と思い荷馬車に乗せたのだ。

確か名前はシンと言ったか。

「おお、態々起こしてもらってすまねぇだな。

おや、妹さんも起きてただか。

おはようさん。

すまねぇだな、おらぁ昔から朝に弱くてのぉ、なかなか起きれんのじゃきぃ」

申し訳なさそうに謝罪するルルドに、人好きのする穏やかな顔に笑みを浮かべながらシンは挨拶を口にする。

「おはようございます、ルルドさん。

気にしなくても大丈夫ですよ」

そんなシンの穏やかな笑みを見て、ルルドは罪悪感を抱かずにはおれなかった。

昨夜、あんな話をしてしまって本当によかったのだろうかあんな彼らの希望を奪って仕舞う様な話を・・・

「ラナ、すまないけど向こうの湖で水を汲んできてくれないかい?

残りの水が少し心もとないかもしれなくてね頼めるかな?」

「ええ、いいわよ」

そういうとリイナは皮袋をシンから受け取り、水を汲みに湖へと駆けていく。

それをシンは『走ると危ないぞ』と言いながら微笑ましげに見つめた後、ルルドに向き直る。

「ルルドさん、もし昨夜話した事について気にしているのなら大丈夫です。

確かに信じたくない話で、嘘だったならという思いはあります。

でも、昨夜話してくださった噂自体は私も知っていたんです。

だからアルカ村に精霊使い様がいると聞いたとき実はその精霊使い様は本物なのか疑う気持ちも確かにあったんです。

だから、精霊使い様に対する疑いの気持ちは私の中に元々あったもの、だからルルドさんは気にしないでください。」

不安を押し殺したような声で告げるシンにルルドは何も言えなくなる。

シンはもう覚悟を決めているのだ。

覚悟を決めてアルカ村に行くと、ならばせめてせめてこれだけはとルルドはシンにあるものを手渡した。

渡された物が何であるのか分かったのだろうシンは受け取れないと伝えるが、村に行くなら持っていたほうがいいというルルドに押し切られてしまう。

「ありがとうございます。

それと、ラナ、妹には不安を与えたくはないので何も伝えないで欲しいのですが・・・」

シンの頼みにルルドは『ええだよ』と快く答えると、それを見計らったかのように水を汲み終えて戻ってくるラナの姿がルルドの目に入る。

その姿を見て一瞬、本当にほんの一瞬だけルルドはその姿に既視感を覚えるのだった。


シン、リイナ、ルルドの三人は焚火の跡を囲みながら和気あいあいと朝食を取る。

ただの保存食で本来なら決して美味しいとも思えない質素な食事ではあったが、それでも三人で一緒に取ったその食事は何とも言えないほど美味しく感じられて、三人の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。



ねぇ、ルルドさんアルカ村にはいつ頃着くの?


なぁに、今日の夕暮れ時には着けるだよぉ


えー!

まだそんなにかかるのー


こら、ラナ我儘を言うんじゃない!

すみませんルルドさん


ええだ、ええだ気にすんな

慣れでねぇ奴がなげぇこと荷馬車に揺られんのはつれぇだろうけども、もう少しさ我慢してくれんかのう


もう、しょうがないなぁー


ラナ!!


三人は楽しげな声を森に響かせながら、準備を済ませて荷馬車に乗り込みアルカ村へと向かうのだった。

その楽しい、朝の一時はこれからアルカ村で起こる出来事の前のつかの間の休息でしかなかったのだと、

そして、アルカ村の事件は始まりでしかないのだと彼らが思い知らされる時までもう少し・・・


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