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好感度マイナスの恋巫女候補に転移しましたが、領地だけは建て直します  作者: 御堂あゆこ
第3章

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19-1. 私が切り拓き、繋いでいたもの

「……何を、間違えていると言うのですか」


「君が数えているのは、できぬことばかりだ。神に頼れぬこと。桃園彩葉のように奇跡を起こせぬこと。誰かの一番になれぬこと」


「……事実ですわ」


「事実の一部だ。私は前に言った。誰かに選ばれるのを待つな。自分の手で切り拓け、と」


 森で聞いたあの言葉が、今さらのように意味を持ってよみがえった。


「君は、神にすら見放されたこの北領地を、自らの意思で選んだ」


「それは、難易度が高いほうがやりがいがあると思っただけですわ」


「この地を、君がよいと思えるやり方で立て直したいと望んだ。神に頼れぬと知っても投げ出さず、自ら考え、自ら動いた」


「自分で選んだことなのですから、投げ出さないのは当然ですわ」


「当然だと言うが、それを誰もができるわけではない。君はそのうえで、淀みの広がりを止めた。桃園彩葉も言っていたはずだ。君が病の広がりを止めたからこそ、今ここで人を救えているのだと」


 守り石の光が、淡く揺れる。


「それだけではない。観測者にすぎなかった私の輪郭を、君はこの世に縫い留めた」


「……それを、私がしたことに数えてよろしいのですか」


「君でなければ、道は開かなかった」


 吐く息だけが、白くほどけた。

 けれど、さっきまで肌を刺していた寒さは、もう同じようには感じられなかった。


「君は、自分の手で切り拓いたものを、まだ数えていない」


「……氷冥」


 名を呼んだ瞬間、守り石の光がふっと強まる。

 指先から、わずかに力が抜けた。


「名を呼ぶなと言ったはずだ」


 同じ言葉なのに、前ほど冷たくは聞こえなかった。


「……慰めてくださっているのですか?」


「事実を述べた」


「……でしょうね」


 思わず、息が漏れた。笑えたのかもしれない。


「氷冥」


 あえてもう一度、名前を呼んだ。

 指先がまた少し冷えたけれど、彼はもう止めなかった。


 床下の光が濃くなり、よりはっきりと人影が結ばれる。


 銀の髪。薄青の瞳。


 ここ数日、しらたまと一緒に村を回った。

 汚染を止め、守り石に触れ、何度もこの土地の霊気を見た。

 その積み重ねが、彼をここに留める助けになっているのかもしれない。


「……先ほど、思ったのです。私がいなくても、この世界は続くのかもしれない、と」


 氷冥は何も言わなかった。


「彩葉さんがいれば、神々は力を貸します。照国様は食べ物を作れる。津々巳様も伊主那様も助力してくださる。領民も、わかりやすい奇跡に救われる」


 自分で言っていて、嫌になるほど冷静だと思った。

 状況を整理し、根拠を並べ、結論を出そうとする。


 そういうところが、たぶん私は可愛くない。


「私がやったことにも確かに意味はあったのでしょう。汚染を止めた。病の広がりも防いだ。けれど、それは誰か別の人でもよかったのではありませんか」


「違う」


「根拠は?」


「君でなければ、しらたまとは繋がらなかった」


 思いがけない名前に、一拍、返事が遅れた。


「……しらたま?」

今回は長くなりそうなので、2回に分割させていただきます。

後半は数日以内に、なるはやで更新予定です(*- -)(*_ _)ペコリ

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