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理想の世界で苦しむ私へ  作者: Miley
TAKUYA's story
5/13

Episode5


 シン…とした部屋の中で、言葉にできない感情が心を巣食い、あまりの身勝手さに体が震えた。


 その後の数か月は、とことん話し合いを重ねた。


 話し合いから逃げられることも多々あったけれど、私は何度も泣き、自分を責めて、未来を諦めたくないと譲歩を重ねた。


 それでも、拓哉の気持ちは変わらなかったのだ。


 自宅は一気に冷戦状態となり、帰宅しても口を利かない日々。


 家庭内別居が続く中、とうとう私から口にした──


「拓哉、解散しよう」


 “離婚しよう”と言えなかったのは、まだ拓哉を愛していたからなのかもしれない。


 そして、最後の話し合いの日。


 大声で泣いたのは、いつぶりだっただろう。

 人があんなに大粒の涙を流す姿を、これまで見たことがあっただろうか。


 泣き止むまでに何時間かかったかわからない。


 二人で鼻をすすりながら、淡々と家具や指輪、車などの共有財産の分与を決めていき、日を改めて心が落ち着いた段階で離婚届を提出した。


「凜ちゃん、結婚してこれからってときに幸せにしてあげられなくてごめん」

「私、幸せだったよ。拓哉といる時間、ふざけあってる時間、全て大切だった」

「本当にごめん。さようなら」



——————————————————————————————————




 もう二度と、こんなに人を好きになることはない。そう思い、私はただ真っ直ぐに仕事に打ち込んだ。


 レベルアップのため転職しようか、思い切って海外で暮らそうか、前向きに考えたこともあった。

 けれど、結局無理をしていたのだろう。


 私は適応障害で仕事に行けなくなった。


 笑い合い、ふざけ合い、同じ映画を見て感想を言い合い、未来を描き、隣で眠る──

 いつの間にか当たり前になっていた日々の尊さを、痛感せずにはいられなかった。


 嘘をつき、借金を隠して逃げた男でも、私にとって拓哉は世界で一番愛した人だった。

 言葉では言い表せないが、拓哉という人間そのものを、私は愛していたのだ。



 こんな人に、生きていて出会えること自体が奇跡なのだと。

 だから、私はもう未来に期待することをやめた。

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