Episode4
二人の生活は概ね順調で、楽しかった。
子どもは焦らず、授かった時に考えようと話していたし、相変わらず生活リズムは合わなかったけれど、私の休みの日には拓哉の職場までドライブがてら送っていったりしていた。
少し変わっている夫婦生活だなぁと感じることもあったが、二人が幸せならそれでいい──そう思い、毎日を過ごしていた。
そして、結婚生活が4年を過ぎた頃、一通の書留が私たちの人生を揺るがせる。
『支払催告書』
そう書かれた封筒が自宅に届いたのだ。それより前から少しおかしいなと思うことはあったが、拓哉を信じ切っていた私は、見て見ぬふりをしていた。
「拓哉、なにこれ」
ある夜、帰宅を待って問いただすと、拓哉は目を合わせずこう言った。
「……明日休みだから、凛ちゃん帰ってきたら説明する」
大事な話はいつもこうして先送りになる。その場では一切の説明なく、時間だけが過ぎる。そうやっていつも言い訳を考えていたんだろう。
そして翌日、拓哉は重い口を開く。
「実は、借金があるんだ。凛ちゃんと結婚する前から。でも結婚の条件で唯一出されたのが『借金をしていないか、今後もしないと約束できるか』だけだったから、本当のことを言えば結婚できないと思って、嘘をついた」
拓哉は涙を堪えながら正座し、真っすぐに私を見つめていた。
「俺が泣くのはおかしいってわかってる。嘘ついてごめん。今後のことは凛ちゃんの判断に任せる」
借金で身内を失った過去のある私にとって、これは由々しき事態だった。
一刻も早く関係を断たなければ、膨れ上がる借金に生活が押し潰され、変わっていく債務者、そして身内を巻き込む大騒動がまた起こるかもしれない──恐怖に体が震える。
しかし、「じゃあサヨウナラ」と簡単に言えるほど、拓哉は他人ではなかった。
返せない金額ではない現状、夫婦である以上、独身時代の問題でも二人の問題として向き合う責任を感じた私は、返済の立替、給与管理、お小遣い制の導入を約束させ、結婚生活の継続を選んだ。
でも、拓哉は変わったんだ、
最初の2〜3ヶ月は約束通りスムーズにやり取りしていたが、しばらくすると何かと理由をつけて給与を振り込まなくなった。「一括で返してこい」と渡したお金は分割で返済していると言い、飲み会に行く回数も増えていった。
そして、あの日──
「俺じゃ凛ちゃんを幸せにしてあげることはできない。離婚しよう」
拓哉は静かに、別れを切り出して部屋を出ていった。




