Episode10
「はじめまして」
落ち着いた雰囲気で目の前に現れた彼は、一目で『他の人と何か違う』と感じた。
「凛さんですね、健斗です」
違いを感じたものの、きっとこの人も恋愛向きの男性ではないと冷めた感情のまま、他の人と同じように対応した。
フリータイムが設けられ、一息つこうとしたとき、
「凛さん、今大丈夫ですか?どうしてもまだお話したくて来ちゃいました」
嬉しいことに、彼は何度も私にアピールしてくれた。
パーティーが終わると、会場の前で健斗は言った。
「よかったら、この後少しドライブしませんか?」
都内という土地柄、車を持っている人は少ない。私は車を所有したいがために、わざわざ隣町から通勤している。健斗は別の街で働いているらしく、生活のベースは車移動のようだった。
2時間ほど夜景を見たり、お茶をしたりして過ごす。帰り際、車の中でキスをした。触れる唇の感触、手の温度、二人を包む雰囲気、全てが心にフィットした。
「よかったら、来週また会いませんか?」
会ったばかりの健斗に、何かを期待することはなかった。でも、少し知ってみたいと思えた。
そして2度目のデートの日、いろんな話をしたんだ。
おそらく日本で知らない人はいないだろう大学を卒業し、全国民が知る企業に勤め、昇進のため日々勉強にも励んでいる。車は人とあまり被らないSUV、腕には世界的に有名なブランドの時計をはめている。
女の本能が告げる――これこそ、私が探していた『その世界の人』だ。そう確信して、心の目が輝いた。
「あの会場で一目見たときからキレイだと思ってるし、話してみたら可愛いし、離婚を経験してる女性特有のオーラがあるよ。すごく魅力的」
「ありがとう、そんな褒められると照れるな」
「手をつないだ時の、なんかフィットする感覚わかる?凛ちゃんの手ずっと握っていたい」
外見から内面から、全てを肯定してくれる健斗にどうしようもなく惹かれた。
そしてまた数日後の3度目のデートの帰り「俺の彼女になって」と、車の中で告げられる。
二つ返事で、私は「うん」と答えた。
きっと素晴らしい交際が待っている――
そう、心の底から信じていた。




