【失われた村をもう一度】
「まずはここから出ないとね」
「この遺跡内なら私が案内できます」
「そう、ならお願いします」
メルに案内され、アリア達は暗い通路を進んでいく。
いくつかの分かれ道を迷うことなく抜けると、
やがて外の光が見えてきた。
「こんな所に出るのね」
辺りを見渡したアリアは、すぐ近くにキノコを見つけた。
「あ、キノコ……」
アリアはキノコを採取した。
そこに……
魔物が現れる。
アリアはすかさず鑑定する。
モルグラット
Lv5 鼠系
「アリア様、ここは私にお任せを……」
アリアは少し考えてから頷く。
メルは静かに頭を下げた。
「ありがとうございます」
メルは静かに前へ出た。
モルグラットが牙を剥き、メルに飛びかかった。
メルは半歩だけ下がる。
モルグラットの爪が空を切った。
赤黒い衣の裾が、ふわりと揺れる。
それでも、メルの姿勢は少しも崩れていない。
メルが自分の指先を少し切ると、
血が細長い刃となって伸びる。
『緋刃鞭』
それは剣のようでありながら、
鞭のようにしなやかに撓っていた。
その血の刃が、モルグラットを切り裂いた。
「すごい……」
アリアが思わず呟く。
だが、血の刃が消えた直後、メルの体がわずかに揺れた。
「申し訳ありません。今の私では、この程度でも少々負担があるようです」
「大丈夫?」
「はい。動く分には問題ありません」
そう答えるメルを気にしながら、アリアは魔物の素材を回収した。
素材を回収したあと、アリアは何気なく自分のステータスを確認した。
命:0 → 5
メルを蘇生した時に空になったはずの命が、少し増えている。
「従者が倒しても命が増える?」
「……詳しく考えるのは、街に戻ってからにしよう」
アリアはステータスを閉じると、
採取したキノコと素材を袋にしまった。
森の中を歩き回りながら、出口を探す。
途中で何度も魔物が現れたが、
二人で協力して倒していった。
程なくして、二人は街道に出た。
「やっと抜けられた!」
そのまま街道沿いに歩き、街を目指す。
だが、隣を歩くメルを見て、
アリアは少し不安になる。
「メルの見た目、大丈夫かな?」
「申し訳ありません」
「この衣服も魔力で維持しているため、途中で消えてしまうかもしれません」
「それなら、何か着るものを用意しないとね」
アリアは街道の先に見える街を見つめる。
「あ、私の故郷の村へ行きましょう」
「アリア様の……ですか?」
「うん。今は誰もいないはずだから」
村へ向かいながら、
アリアは自分の村で何が起きたのかを、
メルに話した。
話を聞き終えたメルは、静かに目を伏せた。
「……そのようなことが」
「申し訳ございません。
アリア様に、悲しい出来事を思い出させてしまいましたね」
アリアは小さく首を振った。
「メルが謝ることじゃないよ。
それに、今は必要なことだから」
途中でメルの魔力が尽きれば、衣服が消えてしまうかもしれない。
そうなる前に村へ着くため、
二人は先を急いだ。
しばらく走ると、やがて村が見えてきた。
「ここがアリア様の……」
「うん、小さな村でしょ?」
アリアはどこか悲しそうに笑った。
崩れた家々の間を歩きながら、
二人はまだ形が残っている家を探し始めた。
何とか入れそうな家を見つけると、
アリアが中へ入っていった。
メルは外で周囲を警戒している。
「これなら着られそうかな」
アリアは衣服を手に取り、外へ出た。
「これでどうかな?」
アリアがメルに渡したのは、
黒を基調とした、古いドレス風の衣服だった。
「大丈夫です。ありがとうございます」
メルはそう言うと、その場で着替えようとした。
「ちょっとここで着替えるの!?」
「ええと……何か問題がございますか?」
「問題しかないよ! 中で着替えて!」
メルは不思議そうに首を傾げた。
「かしこまりました」
しばらくして、メルが戻ってきた。
「うん、よく似合ってるね」
「ありがとうございます、アリア様」
「じゃあ、街に向かいましょう」
街の方へ歩き出そうとするアリア。
「お待ちください……」
「えっ?」
「もしよろしければ、この村を復興させてはいかがでしょうか?」
「復興……この村を?」
「はい。ここはアリア様の故郷なのでしょう。
ならば、失われたままにしておくのは勿体ないかと」
アリアは崩れた家々を見渡した。
もう誰もいない村。
けれど、ここは自分の帰る場所だった。
「……できるかな」
アリアは少し考え、頷いた。
「分かった。やってみよう」
「この村を、もう一度使える場所にする」
「アリア様は冒険者になられたばかりです。
今は街での活動を続けた方がよろしいかと」
「私には多少ではありますが、屋敷や拠点の管理に関する知識がございます」
「まずは寝泊まりできる場所と、物資を保管できる場所を確保いたします」
「そんなことできるの?」
「はい。村全体をすぐに直すことは難しくとも、
一軒を使えるようにする程度でしたら可能かと」
「だったらお願いがあるの……」
アリアは村の中を歩いていく。
「じゃあ、まずはこの家をお願いしてもいい?」
アリアが指定した家。
そこは、かつて自分が暮らしていた家だった。
メルはその家を一度見つめ、静かに頭を下げた。
「かしこまりました」




