【命を与えた少女】
怨嗟の森にたどり着くと、
アリアの村の近くの森とさほど変わらない。
依頼品のキノコを探しながら、
奥へ進んでいく……。
魔物も出たが、以前ほど魔物を見るだけで足がすくむことはなかった。
「キノコどこにあるんだろう?」
キノコを探すことに集中していたせいで、
アリアは自分が森の奥へ入りすぎていることに気づいていなかった。
途中で足元の地面が崩れた。
スカートの裾を翻し、彼女の体が地面の闇へと吸い込まれていった。
「きゃあ!」
幸いにも、それは垂直に落ちる穴ではなかった。斜めに続く土の通路を、彼女は悲鳴を上げながら滑り落ちていく。
「いたた、何なのこの穴?」
落ちてきた通路を見上げると……。
「うわぁ……結構下まで落ちてきたのね」
辺りを見回すと、
何かの遺跡のような場所だった。
「いやな雰囲気ね」
魔物も見当たらない。
アリアは出口を探して歩き出した。
しばらく歩くと広い部屋に出る。
古い石壁には読めない文字が刻まれている。
部屋の真ん中には奇妙な棺があり、
それだけが異様に綺麗だった。
アリアが棺に近づいた、その時。
(助けて……)
「えっ!?」
その声はとても苦しそうだった。
周りを確認するが、
誰もいない……。
棺の中を見ると、
白骨化した骨があった。
なぜか骨に見入るアリア。
《命を消費して蘇生可能です、
蘇生いたしますか?》
アリアの目に意味不明な文が見える。
さっきの声は、
どことなく、母親を思い出す声だった。
だから、助けずにはいられなかった。
アリアは唾を飲み込み、
はい、と念じる。
《使用する命の量を設定して下さい》
「命の量……今あるのは、たしか165」
目の前の骨に温かな光を感じ、
アリアは迷わず全部使うことにした。
設定を終えると……
骨が赤黒い光を放ちだす。
赤黒い光が部屋いっぱいに広がり、アリアは思わず目を閉じる。
「わっ……」
その時、アリアは胸の奥に小さな熱を感じた。
その熱が大きくなっていくのがわかる。
ゆっくり目を開けると、
長い髪と赤黒い光に包まれるように、
女性が立っていた。
その光はやがて彼女の体を包み、赤黒い紋様の入った衣の形へと変わっていく。
彼女はアリアの前に跪いた。
「命を与えてくださったこと、感謝いたします」
「私の名は『メルヴァリス』と申します」
「どうか、あなたの従者としてお仕えすることをお許しください」
「えっ!? 急にそんな事言われても……」
メルヴァリスはアリアを見つめ、静かに話し出した。
「私を鑑定してみてもらえますでしょうか?」
アリアは言われたままに鑑定する。
メルヴァリス ♀ 年齢:不明
Lv10 皇血魔族 職業:呪血術士
命:165日 リンク:アリア
状態:全ステータス大幅低下
「リンク……?」
「私はあなた様の御力によって、
蘇生されたのです」
「命を与えてくださった方に、
この身で報いたいのです」
メルは少しだけ目を伏せた。
「この命を保つには、定期的にあなた様から命を分けていただかなければなりません」
「この命が尽きれば再び、
骨に戻ってしまうでしょう」
アリアは自らの命の残量を確認すると、
0になっていた。
けれど、体に異変はない。
命が0になっても、体に影響はないようだった。
ただ髪の黒くなった部分はなぜか戻らなかった。
小さな声で呟く。
「私以外には日って出るのね」
「メルヴァリスさんでしたっけ……
ここの森でキノコをみかけなかった?」
「森……なのでしょうか、
私の記憶とは些か違うように感じます」
何が起きたのか、まだ全て理解できたわけではない。
主従関係と言われても、まだ実感はないが、
目の前の女性を放っておく気にはならなかった。
「改めてメルヴァリスさん、
これからよろしくお願いします!」
「私に敬称は不要でございます。
メル、とお呼びください」
メルはそう言って、アリアに静かに微笑んだ。




