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【アリア、冒険者になる】

アリアの目の前で男が止まる。


「いや、待てよ……」


「おまえは、魂に干渉する異能持ちか」


「魂……なんの事?」


男はアリアを見下ろしたまま、何かを考えるように黙り込む。


「気が変わった、おまえはまだ殺さない」


「何を言ってるのかわからないわ」


「六カ月後、お前の魂をもらいに来る」


それだけ告げると男は歩き去っていった。


「なんで……殺さなかったの……」


張り詰めていたものが切れたように、

アリアの身体から力が抜ける。


そのまま、彼女は瓦礫の上に倒れ込んだ。


気がつくと、まぶしい朝日が目に差し込んでいた。


「六カ月後……」


その言葉が頭に蘇った瞬間、

震えが止まらなくなる。


ふらつきながら村の中を歩く。


生きている人がいないか探すが、

死体すら見当たらなかった。


村のあちこちに、

血痕と破れた衣服だけが残っていた。


「……どういうこと?」


アリアは呆然と、壊れた村を見回した。


自分の家がある方向を確認し、

ふらつきながら歩いていく。


アリアの家はほとんど崩れていた。

中には入れそうもない。


家の周囲を、何かを探すように歩き回る。


すると、地面に人の形を崩したような、

黒い灰の塊が残っていた。


「何だろうこれ?」


「……鑑定」


『残滓の灰』

魂を抜かれた生物の肉体が崩れたもの。

元が人間か魔物かは判別不能。


「あいつが、みんなを……?」


アリアの胸は、

嫌な予感でいっぱいになった。


「でも……まだ、救える方法が

あるかもしれない」


わずかな希望を胸にアリアは歩き出す。


今のアリアにできることは二つ。


近くの街へ行って情報を集めること。

そして、六カ月後までに少しでも強くなることだった。


(そういえば……)


ステータスを確認すると、

命:165。


アリアは小さく首をかしげる。


たぶん、これは年じゃない。


仮にそうだとしたら、

今165年の命を持っていることになる。


(普通に考えたら日かな……)


考えを巡らせていると、

近くの茂みががさりと揺れた。


アリアは自分の筋力と敏捷の数字を書き換えた。


身体が軽くなり、

足が自然と前へ出る。


飛び出してくる魔物を短剣で倒しながら、

アリアは街へ続く道を急いだ。


暗くなる前には、

森を抜けたい。


途中でLvが上がった感覚があった。


けれど、確認は後回しだ。

魔力がなくなれば、森の中で野宿することになる。


(こんな魔物が出る場所で、

魔力が切れるのもまずいよね……)


それでも、しばらく走り続けると、

木々の向こうに小さな明かりが見えた。


やがて、街へたどり着いた。

街の入り口には、大きな看板が掲げられていた。


『セレミリアの街』


手持ちの銅貨は少ししかない。


宿に泊まれるか分からないまま、

アリアは街の中を歩き回った。


やがて一軒の宿屋を見つけ、

おそるおそる中へ入る。


(これだけで足りるのかな……)


宿屋のカウンターへ向かい、

聞いてみる。


「すみません、これで今日泊まれますか?」

と言って銅貨をカウンターに置く。


「銅貨五枚か……」


アリアを見つめる店員。


「倉庫でもいいなら空いてるけどね……」


「あ、どこでも大丈夫です!」


「それなら構わないよ」


アリアは礼を言い、案内された倉庫へ向かった。


何とか泊まることができた。


倉庫の箱の上でステータスを確認する。


アリア・フェルロード♀年齢15

Lv:8→11

筋力:13→20

敏捷:15→22

魔力:200→400

体力:11→14

命:165

固有スキル 

『数字変換F+1』同時維持可能数:2

『鑑定』


相変わらず魔力だけ異様に上がっていた。


翌朝。


「もう銅貨がなくなっちゃった……」


「ギルドで稼げるのかな?」


街の中でギルドを探して歩いていくと、

ギルドらしい建物を見つけた。


「ここ?」


中に入りカウンターへ向かう。


「あら、どうしたの、

こんな所に何か用?」


受付のお姉さんが聞いてくる。


「魔物の素材って、ここで買い取ってもらえますか?」


「素材を持っているの?」


「いえ、これから集めようと思っていて……」


「ごめんなさい、素材の買い取りは

冒険者の方からしかできない決まりなの」


「……なら冒険者登録はできますか?」


「お嬢さんには冒険者はきついんじゃない?」


「大丈夫です!」


「そう……なら、この用紙に記入してもらえる?」

受付のお姉さんはカウンターの下から、冒険者登録用紙を取り出した。


「えーと、名前と歳と職業……」


(職業どうしよう?)


とりあえず『戦士』と記入する。


「これでお願いします」


受付のお姉さんは、用紙に目を通した。


「はい、大丈夫よ」


「あと、登録料に銅貨三枚かかるけど」


宿屋で手持ちを使い切ったので、

考え込むアリア。


「すぐに用意できないなら仮登録でも、

いいわよ」


「仮の場合は、七日以内に手数料を、

用意してもらえば大丈夫よ」


「ならそれでお願いします!」


「じゃあこれ、ギルドバッジよ、

仮だから木章ね」


「ランクは、納品した命石の数や依頼の達成数で上がっていくわ」


「私はカリナ。このギルドの受付をしているの。

仮登録の間は分からないことも多いでしょうから、困ったら声をかけてね」


「ありがとうございます!」


「ふう……何とか登録できてよかったわ」


さっそく依頼掲示板を確認する。


アリアが選んだのは、

薬の材料になるキノコの採取依頼だった。

場所は街から少し離れた森。


アリアは依頼票を手に取り、カリナに確認してもらい依頼の受注を済ませる。


「これなら私でもやれるかな……」


キノコがあるのは『怨嗟の森』

物騒な名前だが、出てくる魔物は低Lvばかり。

初心者の採取依頼にもよく使われる森らしい。


街道沿いにあるため、商人の荷車もよく通る。


森へ行くため街の入り口へ向かうと、

そこに昨日の宿屋の主人がいた。


宿で使う食材を仕入れに行くところらしいので、

森まで歩くには少し遠いと話すと、

乗せてもらえることになった。


「ありがとうございます」


「どうせ通り道だからな、

しかしお嬢ちゃん、冒険者だったんだな」


アリアは森の近くまで乗せてもらった。


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