【夜の墓地依頼】
メルは村に残り、アリアの家の片付けと修繕を進めることになった。
メルに村を任せたアリアは、道中で襲ってくる魔物を倒しながら、一人で街へ戻っていった。
本当は手伝いたかったが、
今のアリアには街でやるべきことがある。
メル一人に任せて大丈夫だろうか。
そう思わないわけではない。
けれど、今の自分にできることをしなければならない。
街の門が見えてくると、
アリアは小さく息を吐いた。
「まずはギルドに行かないとね」
アリアはキノコが詰まった
袋の中身を確認すると、
そのまま街の中へ足を踏み入れた。
ギルドに入ると、アリアは受付へ向かった。
「依頼のキノコを持ってきました」
カリナはアリアの姿を見ると、安心したように微笑んだ。
「お帰りなさい、アリアさん。少し遅かったので心配しましたよ」
「森で少し迷ってしまって……」
アリアは曖昧に笑いながら、カウンターにキノコを置いた。
「はい、依頼達成ですね」
「それと、魔物の素材も換金できますか?」
「もちろんです」
カリナは素材を確認しながら、少し驚いたように目を開いた。
「ずいぶん倒してきたんですね」
確認を終えると、カリナは報酬と換金分の硬貨を差し出した。
「こちらになります」
「ありがとうございます」
アリアは硬貨を受け取り、胸の奥にあった緊張が少しだけほどけた。
アリアは腰の短剣に目を落とした。
刃には細かな欠けがいくつもできている。
「そろそろ買い替えた方がよさそうね」
短剣を鞘に戻したアリアは、自分の服や靴にも目を向けた。
「防具も……見ておいた方がいいかしら」
ギルドを出ると、アリアは迷わず装備屋へ向かった。
装備屋に入ったアリアは、まず武器棚の前で足を止めた。
剣や槍が並ぶ中、アリアの目に留まったのは、今使っているものより少し丈夫そうな短剣だった。
「これなら……私にも扱えそうね」
値段も、他の武器に比べれば手が届く。
アリアは短剣を手に取り、軽く握ってみた。
少し重いが、持てないほどではない。
「短剣はこれにして……後は」
革の胸当てや、丈夫そうな靴が並んでいる。
だが、胸当ては今のアリアには高かった。
「……防具は、まだ無理そうね」
「でも、最悪の場合に備えて、逃げやすい靴くらいは必要よね」
アリアは短剣を持ったまま、歩きやすそうな靴を一足選んだ。
「すみません。この短剣と靴をください」
買った短剣を腰に下げ、装備屋を出る。
装備を整えたアリアは、もう一度ギルドへ戻った。
ギルドに戻ると、中には何人かの冒険者がいた。
アリアは少しだけ周囲を見回すと、壁に貼られた依頼板へ向かった。
依頼板には、採取依頼や荷運び、魔物討伐の依頼票が並んでいる。
その中に気になる依頼を見つける。
『討伐依頼』
内容は、街外れの共同墓地に出る魔物の討伐。
夜になると現れるらしい。
依頼票には、目撃された魔物は一体だけと書かれていた。
「それなら、私でも何とかなるかもしれない……報酬も他の依頼より少し高い」
「街の墓地なら、場所も分かりやすいし……」
怖い。
けれど、怖いからといって採取依頼だけを続けていても、強くなれない。
六カ月後までに、少しでも力をつけなければならない。
「少し怖いけど、これにしよう……」
依頼票を手にしたアリアは、受付へ向かった。
「この依頼を受けたいんですけど」
カリナは依頼票を確認すると、小さく頷いた。
「共同墓地の討伐依頼ですね。夜に出る魔物なので、気をつけてください」
「はい。えっと……気をつけます」
受注を終えたアリアは、ギルドを後にする。
少し休憩しようと街の広場へ向かう。
広場の椅子に腰を下ろし、買ったばかりの靴の紐を結び直す。
「墓地に行って、出てきた魔物を倒す……それだけのはず」
やがて日が沈み始めた。
アリアは短剣を腰に下げ直し、街外れの共同墓地へ向かった。




