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【墓地で目覚めた新たな従者】

夜の墓地に着いたアリア。


灯りはある。

それでも墓地の奥は暗く、

嫌な静けさが漂っていた。


短剣を抜き、

警戒しながら墓地を進んでいく。


共同墓地の奥へ進むと、

前方の墓石の影から黒い魔物が姿を現した。


アリアは足を止める。


魔物は、墓石の間に立ちはだかるようにこちらを見ていた。


アリアは息を呑み、すぐに鑑定を発動する。


カースヴェルグ

Lv15 不死系

状態:不死の呪い


鑑定を終えた直後、カースヴェルグの周囲から冷たい気配が広がった。


嫌な予感がする……。


アリアは反射的に来た道へ駆け出した。


だが、墓地の入口まであと少しというところで、体が見えない壁に弾かれた。


「きゃっ……!」


アリアは数歩よろめき、痛みに顔をしかめながら顔を上げた。


そこに壁はない。

なのに、進めない。


「なに、これ……」


アリアは震える手で、何もない空間に触れた。

指先に冷たい感触が返ってくる。


墓地を囲むように、黒紫の光が薄く揺れていた。


その光は墓石の影を伝うように広がり、逃げ道を塞いでいた。


「そんな……閉じ込められた?」


カースヴェルグが、墓石の間をゆっくりと進んでくる。


アリアは再び走り出した。


入口には戻れない。

なら、墓地の奥へ逃げるしかない。


墓石の間を縫うように走る。


湿った土に足を取られながらも、必死に奥へ進む。


やがてアリアは、ひときわ大きな墓石の前で足を止めた。


「なに……これ……?」


表面には見たことのない文字が刻まれ、淡い光を放っている。


アリアが黒い墓石に近づいた瞬間、

頭の中に声が響いた。


《命を消費して蘇生可能です。

蘇生いたしますか?》


その言葉に、アリアの手が一瞬止まった。


だが、背後からはカースヴェルグの足音が近づいてくる。


危険だと分かっている。

けれど、迷っている時間はなかった。


「……やるしかない」


アリアは震える手で、黒い墓石に触れた。


《命を消費します》


その時、アリアは胸の奥に小さな熱を感じた。


その熱が、少しずつ大きくなっていく。


「これは……メルヴァリスの時と同じ感覚……」


目の前の墓石に亀裂が走った。


黒い石が音を立てて崩れ、その中から白い輝きが溢れ出す。


メルヴァリスの時と似ている。


けれど、放たれる気配だけは違っていた。


眩しいほどに清らかな光。


その輝きの中に、緑色の髪をした女性が立っていた。


やがて輝きは彼女の体を包み込み、青と黄色の紋様が入った白い聖衣へと形を変えていく。


彼女は静かに目を開けると、アリアの前に跪いた。


「我が名はルミシェナ。

主様……あなたの命により、私は目覚めました」


「この身は、あなたを守るためにあります」


ルミシェナは立ち上がり、カースヴェルグへ向き直った。


「不死なる魔物よ。

その身を縛る呪いを、今ここで解きます」


『リベレイトカース』


白い輝きがカースヴェルグの体を包み込む。

体を覆っていた黒紫色の靄が、少しずつ剥がれ落ちていった。


「不死の呪いは弱まりました。

主様、今なら攻撃が届きます」


「分かった……!」


アリアは短剣を握りしめる。


怖い。

けれど、止まってはいられない。


「数字変換……敏捷、上昇!」


足に力が満ちる。


アリアは地面を蹴り、カースヴェルグへ一気に距離を詰めた。


「はあっ!」


振り上げられた腕をかいくぐり、

短剣を胸へ突き立てる。


刃が黒い体に沈み込んだ。


「通った……!」


傷口から白い光が広がり、

カースヴェルグの体が大きく揺れた。


カースヴェルグの体は、

徐々に光の粒となって崩れていく。


やがて、夜の墓地に静けさが戻った。


アリアは荒い息を吐きながら、短剣を握ったまま立ち尽くす。


カースヴェルグが完全に消えたのを確認すると、ルミシェナは静かにアリアの前へ戻り、再び跪いた。


「主様。ご無事で何よりです」


「え、えっと……あなたは……?」


「私は、この墓地で眠っていた者です。

主様に呼び起こされ、再び目覚めました」


「ルミ、とお呼びください。

これより、主様にお仕えいたします」


ルミシェナは静かに頭を下げた。


アリアはルミシェナを鑑定する。


ルミシェナ ♀ 年齢:不明

Lv10 人間族 職業:聖紗術士

命:130日 リンク:アリア

状態:全ステータス大幅低下 


「命が……百三十日?」


アリアは表示された数字を見つめ、息を呑んだ。


「それに、全ステータス大幅低下……?」


ルミシェナは静かに頷く。


「不死に対する浄化だけは、まだ扱えます。ですが、それ以外の力はほとんど戻っておりません」


(リンク……メルと同じだ)


(やっぱり、私と何かで繋がっている……?)


アリアは胸の奥に残る熱を感じながら、静かにルミシェナを見つめた。


墓地の夜は、先ほどまでとは違う静けさに包まれていた。

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