【激戦の後、変わり始めた村】
ギルドを出たアリアは、街の入り口で三人と合流した。
「みんな、お待たせ」
「アリア様もお怪我がひどいのですから、私たちに任せて、どうか休んでいてくだされば……」
「私より、みんなの方がずっと酷い怪我してるでしょ?」
メルヴァリスは言葉を詰まらせた。
守るはずの相手に気遣われている。その事実が悔しくて、握った拳に力がこもった。
「ですが……アリア様を守るためにいる私たちが、逆にお気遣いいただくなど……」
ルミシェナも、痛みをこらえながら言葉を続けた。
「主様のお言葉はありがたく思います。けれど、最後までお支えできなかったことは事実です」
ロゼリアは少し間を置き、静かな声で告げた。
「ご主人様。おそばにいながら、最後まで力になれませんでした」
「うん。でも今は、誰が悪いとかじゃなくて、みんなで帰ろう。ちゃんと休んで、それからまた考えればいいよ」
三人は顔を見合わせ、ようやく頷いた。
それからアリアたちは、セレミリアを離れて村へ向かった。
森へ入る頃には空気も少し落ち着き、張り詰めていた緊張がようやく薄れていく。
「アリア様、それにしても……最後のあれは凄まじい力でしたね」
メルヴァリスが、まだ信じられないというように呟く。
「はい。私も、主様の動きが見えませんでした」
「私もです。あれほどの速度は、今の私では追えません」
ルミシェナとロゼリアの言葉に、アリアは少し困ったように笑った。
「うん、でも簡単に使えるわけじゃないみたい」
「発動条件があるのですか?」
ルミシェナが問いかけると、アリアは胸元に手を当てた。
「条件が簡単じゃないから、普段から使うのは難しいと思うよ」
「それほどの力なら、当然代償もあるのでしょうね」
「うん。体が内側から壊れそうだった。長く使えば、私の方が先に倒れると思う」
三人の表情がこわばる。
「大丈夫だよ。あれは本当に最後の手段。簡単には使わないよ」
その言葉に、三人はまだ不安を残しながらも、それ以上は何も言わなかった。
森の道を進む間、会話は少なかった。傷の痛みと疲労が重くのしかかり、誰もが足を動かすだけで精一杯だった。
やがて木々の向こうに、見慣れた村の景色が見えてくる。
村に戻ると、空き地だった場所に木材が組まれ、簡素な小屋の骨組みがいくつも並んでいた。
「すごい……もうここまで進んでるんだ」
村の中を歩いていると、道行く住人たちが次々に声をかけてきた。
「お帰りなさい、アリア様」
「皆さんも、ご無事で何よりです」
思っていた以上に自然に迎えられ、アリアは少し戸惑いながらも笑みを返した。
城館へ着くと、アリアはすぐ自室へ戻った。
それから数日、アリアたちは城館で療養することになった。
村の住人たちは交代で食事や薬湯を運び、何かと世話を焼いてくれた。
その気遣いはアリアだけでなく、メルヴァリスたちにも向けられていた。
おかげで四人は城館から出ることなく、傷の回復に専念できた。
数日ぶりに外へ出たアリアは、城館の前に広がる景色を見て思わず足を止めた。
「わぁ……もう、ちゃんと村らしくなってる」
近くにいた住人がアリアに気づき、歩み寄ってきた。
「アリア様、もうお体の具合はよろしいのですか?」
「うん。みんなのおかげで、だいぶ良くなったわ」
「それはよかったです。もしよろしければ、村の中をご案内しましょうか?」
「そうね。メルたちもまだ休んでるし……お願いしてもいい?」
「もちろんです」
アリアは住人に案内されながら村の中を歩き、増えた建物や作業場について、一つずつ説明を受けていった。
ひと通り村の中を見て回り、アリアが城館へ戻ると、メルヴァリスたちが広間に集まっていた。
「みんな、起きてたのね」
「はい。アリア様がこうしてお元気なお姿を見せてくださり、安心いたしました」
メルヴァリスが安堵したように微笑むと、ルミシェナも穏やかに頷いた。
「顔色も戻っています。これなら、無理をなさらなければ大丈夫でしょう」
「ご主人様が無事に回復されて、私も嬉しく思います」
ロゼリアの言葉に、アリアは少し照れたように笑った。
「うん。みんなのおかげで、もうほとんど平気よ」
「アリア様、これからどうなさいますか?」
「怪我も良くなったし、ラゼルムの件も気になるから、ちょっとセレミリアのギルドへ行ってくるわ」
「でしたら私たちも……」
「みんなは、まだ本調子じゃないでしょ?」
ルミシェナが一歩前へ出た。
「私はもう問題なく動けます。主様、どうかご同行をお許しください」
「うーん、ならルミだけね」
「はい、お任せください」
そうして、アリアとルミシェナはセレミリアの街へ向かった。




