【新たな居場所】
森の中を歩き続けるアリアたち。
人数が多いため、アリアが先頭に立って道を案内し、
メルヴァリスが最後尾で周囲を警戒している。
「もうすぐだから、みんな頑張ってね」
しばらく進むと、木々の間から光が差し込み始める。
やがて森が開け、
遠目にアリアの城館が見えてきた。
城館の前までたどり着くと、
ルミシェナと人魚たちが出迎えに現れる。
人魚たちは仲間の姿を見ると、張りつめていた表情を緩めた。
「お帰りなさいませ、主様」
「無事だったのですね……!」
人魚たちはアリアの前に集まり、そろって頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます」
仲間との再会に、涙ぐむ者や、互いに抱き合う者もいた。
アリアは、助け出した者たちを見回した。
人魚族や獣人族、樹精族。
そのほかにも、魔物に近い種族の者たちが混じっており、全体で七十人ほどいた。
「それで、あなたたちはこれからどうするつもり?」
問いかけられた彼らは、互いに顔を見合わせる。
だが、すぐに答えられる者はいなかった。
帰る場所がある者ばかりではない。
むしろ、行く当てのない者の方が多いようだった。
やがて、一人が遠慮がちに口を開く。
「もしよろしければ……私たちも、この場所に住まわせていただくことはできないでしょうか」
「ここに!?」
思わぬ申し出に、アリアも返答に困る。
すぐに答えを出せずにいると、
別の者が慌てて言葉を続ける。
「簡単な建物を作れる者や、畑仕事に慣れた者もおります」
「ただ世話になるつもりはありません、できる限りのことはいたします」」
「……少し、考える時間をもらっていいかしら?」
「はい。それだけでも十分です」
アリアは城館を見上げた。
今の城館だけでは、とてもこの人数を受け入れきれない。
「それより先に、この人数をどうするか考えないとね」
アリアは城館の周囲へ視線を向けた。
まずは空いている場所に天幕を張る。
寝る場所さえ確保できれば、あとは建築に詳しい者たちと相談しながら進められるはずだ。
「……しばらくは仮住まいになってしまうけど、それでもいい?」
「もちろんです。受け入れていただけるだけで十分です」
アリア一人では、とても全員をまとめきれない。
そこで、メルヴァリスとルミシェナに大まかな指示役を任せることにした。
「メル、ルミ。悪いけど、みんなへの指示を手伝ってもらえる?」
「もちろんです、アリア様」
「お任せください、主様」
皆が動き出そうとしたところで、一人の少女がアリアの前に進み出た。
長い青髪を揺らしながら、少女はその場に跪く。
彼女は、アリアが命を与えた青髪の少女だった。
「私の名はロゼリア・ヴェルクレイルと申します」
「私も従者としておそばに置いていただくことはできないでしょうか?」
「えーと」
アリアは戸惑いながらも、ロゼリアを鑑定する。
名前:ロゼリア・ヴェルクレイル♀ 年齢:不明
種族:天羽族
職業:刃翼士
状態:全ステータス大幅低下
リンク:アリア
ロゼリアの瞳は真剣そのもので、断っても引き下がりそうになかった。
アリアは迷った末に、受け入れることにした。
「ありがとうございます、ご主人様」
(メルもルミもだけど、なんか私の事……)
(このリンクのせいなのかな?)
その時アリアの頭の中で声が聞こえる。
《規定条件を満たした為『数字倍増』を獲得しました》
《『数字変換』がE+2に強化されました》
(規定条件……従者の数かな?)
(でも数字変換の強化はうれしいかな)
それから数日が過ぎた。
城館の周囲には、簡易的な天幕がいくつも張られ、
助け出された者たちはそこで身を寄せ合って暮らしていた。
最初は戸惑いも多かったが、
建築に慣れた者たちが木材を切り出し、
少しずつ住める場所を増やしていく。
畑仕事ができる者たちは城館近くの土地を整え、
食料の確保に向けて動き始めていた。
メルヴァリスは周囲の警戒と配置の確認を担当し、
ルミシェナは食料の備蓄確認を進めている。
ロゼリアもまだ本調子ではないものの、
八枚の羽を広げながら、荷運びや見回りを手伝っていた。
城館の前に立ったアリアは、
忙しそうに動く者たちを見ながら、ぽつりと呟いた。
数日前までは静かだった場所に、
今は人の声や作業の音が響いている。
不安がないわけではない。
食料も寝床も、まだ十分とは言えない。
それでも、誰もが前を向こうとしていた。
「まずは、みんなが安心して暮らせる場所を作らないとね」
こうしてアリアの拠点は、
少しずつ新しい居場所へと変わり始めていた。




