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【数字変換で脱出路を開く】

アリアは来た通路を引き返していた。


「メルたちのためにも、なるべく倒していったほうがいいわね」


アリアは数字変換を発動し、

筋力と敏捷、そして短剣の攻撃力を引き上げる。


警戒しながら通路を進む。


「妙ね、誰もいない?」


しばらく進むと、大きな部屋に出た。


アリアの目の前には、

紋様の衣を着た集団が待ち構えていた。


その中から、一人の男が前に出る。


「ようこそ、異能のお嬢さん」


「それにしても、ずいぶん面白い力を持っているようだね」


「私の力を知っているの?」


「ああ、ずっと監視していたからね」


「あなたは、何者なの?」


「ふむ、まあいいだろう……」


「ラゼルム・モルガント。まあ、ただの商人だよ」


「なんで魔物や亜人たちを集めているの?」


「商人と名乗っただろう? 価値あるものを集め、求める者へ渡す。それだけのことだよ」


「なら、あの生命反応がなかったみんなは?」


「ああ、あれは観賞用だよ。珍しい姿さえ残っていれば、生きている必要はないからね」


アリアの手に、力がこもる。

声が、低く沈んだ。

「そんな理由で、みんなを閉じ込めていたの?」


「十分な理由だろう」


「ふざけないで」


「あなたみたいな人、絶対に許せない」


「やれやれ……なるべく傷はつけたくなかったのだがね」


そう言うと、ラゼルムは片手を軽く上げる。


その合図と同時に、

紋様の衣をまとった者たちが一斉に動き出した。


けれど、アリアの方が早かった。


最初に迫ってきた相手の懐へ潜り込む。


短剣の柄で腹部を打ち抜くと、

相手は声も上げられず膝をついた。


続けて別の者が刃を振り下ろす。

アリアは半歩だけ身を引き、空振りした腕をつかんだ。

そのまま体勢を崩し、短剣の柄を首筋へ叩き込む。

男は声もなく床に倒れた。


ラゼルムはその様子を眺めながら、

楽しそうに目を細めた。


「素晴らしい。筋力、敏捷、武器の性能まで変えられるのか」


「見世物みたいに言わないで」


「いや、これは商人としての興味だよ。君には、とても高い価値がある」


「私は売り物じゃない」


「しかし残念だ。今の戦力では、君を捕らえるのは難しい」


「今回は退くとしよう。だが、君の価値はよく分かった」


そう言い残し、ラゼルムは奥へ去っていく。


「待ちなさい」


アリアは追おうとする。


だが、紋様の衣をまとった者たちが、

彼女の前に立ちはだかった。


「……邪魔しないで」


ラゼルムの背中は、

通路の奥へと消えていった。


アリアは床へ視線を落とし、数字変換を発動する。


目の前の床の硬度を下げた。


踏み込んできた男たちの足元が砕け、

数人が下の階層へ落ちていく。


下から男たちのうめき声が聞こえた。

命に別状はなさそうだが、すぐには戻ってこられない。


残った男たちが、思わず足を止める。


その隙に、アリアは彼らの衣の重さを引き上げた。


「ぐっ……!」


突然重くなった衣に引きずられ、

男たちは床へ倒れ込む。


今は追うしかない。

アリアは倒れた男たちを横目に、ラゼルムの消えた通路へ駆け出した。


通路を抜け、奥の部屋へ飛び込む。

だが、そこにラゼルムの姿はなかった。


「逃げられたわね……」


部屋の中を見渡すと、

壁際には木箱や檻が並び、

机の上には書類や道具が散らばっている。


「鍵は……」


アリアが机の引き出しを

片っ端から開けていくと、

中から鍵束が出てきた。


鍵束を握りしめ、

急いで牢屋の方へ引き返す。


牢屋の前に立つと、

震える手で鍵を差し込んだ。


かちり、と音がして錠が外れる。


「もう大丈夫。すぐに出してあげる」


アリアは次々と牢屋の鍵を開けていった。


閉じ込められていた魔物や亜人たちは、

怯えながらも少しずつ外へ出てきた。


「落ち着いて。私は敵じゃないわ」


アリアはそう声をかけながら、

最後の牢屋の鍵を外した。


それでも、すぐに動こうとする者はいなかった。

長く閉じ込められていたせいか、誰もがアリアを疑うように見ている。


その中の一人が、震える声で尋ねた。

「……本当に、外へ出られるの?」


「私が必ず外に連れて行くから、

今は信じて……」


彼らは不安そうに顔を見合わせたあと、

小さく頷いた。


アリアは亜人や魔物たちを先に行かせながら、通路を進んだ。


背後から、怒号と足音が迫ってくる。


アリアは最後尾を確認しながら、

通路の床の硬度を一部だけ下げた。


床の一部が崩れ、追手との間に大きな穴が開いた。


「これで、すぐには追ってこられないはず」


アリアは息を整える間もなく、

再び前へ走り出した。


前方から足音が聞こえる。


「いたぞ!」


通路の奥から、

ラゼルムの手勢が駆けてくる。


「下がっていて」


アリアは足元の木箱に目を留めた。

重さを抜き取るように数値を下げ、勢いよく蹴り飛ばす。


木箱が追手の目前に迫った瞬間、今度は一気に重くした。


鈍い音が響き、男たちはまとめて床へ転がった。


男たちが倒れた隙に、アリアは皆を先へ進ませた。


その先に、外の光が見えた。


「出口よ!」


アリアは最後尾に目を向けながら、

全員が外へ出るまで通路の入口に立った。


亜人や魔物たちは、

その場に座り込んだり、空を見上げたりしていた。


最後の一人が外へ出た。

それを見届けた瞬間、アリアの膝から力が抜けた。


「あれ……?」


視界がわずかに揺れる。


張り詰めていた緊張が解けた途端、

魔力を酷使した反動が、一気に疲労となって押し寄せてきた。


「アリア様!」


先に外へ出て周囲を警戒していたメルヴァリスが、

アリアの異変に気づき、すぐに駆け寄ってきた。


膝をつきかけたアリアの体を、

メルヴァリスが慌てて支える。


「お怪我はありませんか」


「大丈夫……少し、魔力を使いすぎただけよ」


その後ろには、

先ほど助けた青髪の少女たちの姿もあった。


「ここも……安心できないわ。私の村まで行きましょう」


「承知しました。すぐに移動しましょう」


メルヴァリスは迷わず頷いた。

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