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【透明な器の中で】

セレミリア北東の森深部。


アリアとメルヴァリスは、ゼルグロアを見つけ、

離れた場所から様子をうかがっていた。


「人魚たちと魔物を狙う犯人が同一なら

きっとここにも現れるはず……」


すでに二時間ほど経っていた。


その時だった。


魔物へ近づく集団が姿を現した。


全員が紋様の入った同じ衣を身にまとい、

顔を隠していた。


「なんか怪しいわね」

アリアが小さく呟く。


次の瞬間、甲高い唸り声とともにゼルグロアが倒れた。


すると、魔物の下に魔法陣が現れ、

ゼルグロアの巨体が少しずつ沈んでいった。


「あれは転送魔法陣ですね」


続いて衣の集団も魔法陣の上に乗り、

次々と姿を消していく。


全員消えたのを確認すると、

アリアは飛び出し、魔法陣へ向かって走った。


「いくわよ、メル!」


「罠かもしれません」


「でも、ここで逃したら手がかりがなくなるわ」

そう言って、魔法陣へ足を踏み入れる。


メルヴァリスもすぐにその後へ続く。


たどり着いた場所は、

薄暗い施設のような場所だった。


「さっきの人たちはいないわね」

アリアが小声で呟く。


二人は周囲を警戒しながら、ゆっくりと進んだ。


少し進むと、扉が見えてきた。


ゆっくりと扉を開ける……。


そこは通路になっており、先はいくつかに分かれていた。


「アリア様、むやみに歩き回るのは

得策とは思えません」


メルヴァリスは周囲を警戒しながら続ける。


「もしよろしければ、私が索敵いたしましょうか?」


「そんなこともできるのね、お願いできる?」


「お任せください」


メルヴァリスは目を閉じ精神を集中させる。


しばらくして、メルヴァリスが小さく告げた。

「……向こうに、先ほどの集団と思われる気配が多数あります」


「反対側には、複数の気配があります。いくつかの部屋に分けられているようです」


「助かったわ、ありがとうメル」


「どちらに行きますか?」


「まずは、囚われているみんなを助けましょう」


「了解いたしました」


「精度は劣りますが、私が索敵しながら

前を進みますね」


メルヴァリスを見て頷くアリア。


気配のある方向を見据え、

歩き出すメルヴァリス。


アリアもゆっくりとその後に続いた。


メルヴァリスは時折足を止め、方向を確かめながら進んでいく。


「アリア様、前から数名近づいてきます」


「隠れられそうな場所はないわね」


アリアは通路を見回し、すぐに判断する。


「大丈夫。私に考えがあるわ。

メルは通路の端に寄って、動かないで」


「分かりました……」


メルヴァリスが壁際に身を寄せる。


アリアもその隣へ移動し、

自分とメルヴァリスの視認性の数字を限界まで下げた。


次第に二人の姿が薄暗い通路に溶けるようにぼやけていく。


そこへ先ほどの集団と同じ衣をまとった者たちが現れた。


彼らはアリアたちのすぐ横を通り過ぎるが全く気づく素振りはない。


足音が遠ざかり、集団の姿が見えなくなる。


それを確認してから、

アリアは視認性の数字を元に戻した。


メルヴァリスが驚いたように目を向ける。


「アリア様、そんなことまでできるのですね」


「なんとなくできそうな気がして……」


集団が来た方向へさらに進むと、

牢屋のような小部屋が並んでいた。


中を覗くと、人魚や獣人、魔物たちが閉じ込められていた。


「かなりいろんな種族を集めてるみたいね」


扉には鍵がかかっていた。


「やっぱり鍵がかかってるわね」


さらに通路を進むと、牢屋とは違う扉が見えてきた。


「なにかしら……鍵は、かかってないわね」


アリアは警戒しながら扉を押し開けた。


部屋の中には、淡く光る透明な器がいくつも並び、その中に魔物たちが一体ずつ閉じ込められていた。


最奥の中央の器には、長い青髪の

少女の姿があった。


「ここだけかなり大きな器ね」


器の前には奇妙な装置がついており、

文字が刻まれている。


「なんて書いてあるのかな……」


メルヴァリスが近寄りそれを見る。


「これなら私でも開けられそうです」


「読めるの?」


「はい、ただ……」


メルヴァリスが言いづらそうに目をそらす。


「なにかあるの?」


「この中にいる者たちには生命反応が感じられません」


「それって……もう……」


アリアは唇を噛んだ。

けれど、すぐに顔を上げる。


「……開けて。私がなんとかする」


アリアに頷くメルヴァリス。


装置を動かすと、全ての器から水が抜け、蓋が開いていく。


アリアは命の数字が減っていくのを確認しながら、倒れ込む者たちへ命を分け与えていった。


「アリア様!?」

メルヴァリスが思わず声を上げた。


やがて、亜人や魔物たちが目を覚ましていく。


「ここは……」

囚われていた者たちは、戸惑うように周囲を見回した。


「話は後よ、まずは逃げないと」


「私は牢屋の鍵を探して助けていくから、

メルはここにいるみんなをお願いできる?」


「しかし、お一人で危険では……」


「私なら大丈夫だから」


アリアはメルヴァリスをまっすぐ見つめた。


「分かりました。ですが、必ず無事にお戻りください」

メルヴァリスは深く頭を下げた。


「もちろんよ」


アリアは小さく頷くと、

来た道を振り返った。


牢屋の鍵を探す。

そして、囚われているみんなを助ける。


そう決めて、アリアは一人、薄暗い通路へ駆け出した。


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