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【魔物が消える理由】

「それで、その人魚たちは、

まだ生きているの?」


「はい、何か事情がありそうでしたので……」


アリアはメルヴァリスの報告を受け、倒れている人魚へ視線を向けた。


体力が大きく減っている。

けれど、命に別状はなさそうだった。


アリアは数字変換を発動し、

三人の体力の数値を引き上げる。


「……っ」


ほどなくして、三人の女性が目を覚ました。


次の瞬間、彼女達は跳ね起きるように身を起こし、アリアたちへ向かって構える。


「……あなたたちは、何者ですか」


警戒した声で、一人が問いかける。


「ギルドの依頼書を見て、ここに来たの」


「ギルドの依頼書……?」


三人の表情が変わった。


「何か知っていそうね。

話だけでも聞かせてもらえない?」


三人は互いに視線を交わした。

それから、警戒を残しながらも、ゆっくりと構えを解いた。


「……分かりました」


「私たちは……もともと海で暮らしていました」


人魚族の女性は、言葉を選ぶように続ける。


「けれど……ある事情でそこにいられなくなり……」


「ここで生活するようになりました」


人魚族の女性は、悲しそうに視線を落とした。


「でも、私たちが外へ出ている間に……

ここに残っていた仲間が、いなくなっていたんです」


「いなくなった?」


アリアは思わず聞き返す。


「はい。戻ってきた時には、部屋の中が荒らされていました。

壁には傷が残り、床にも血の跡があって……」


「戦闘があった、ということですか」


ルミシェナが静かに問いかける。


人魚族の女性は、小さく頷いた。


「多分、さらわれたのだと思います」


「そんな……」


「それで私たちは、どうするべきか相談していました。

けれど、人間の街に助けを求めるわけにもいかなくて……」


そこで、二人の人魚が一人の女性へ視線を向けた。


見つめられた女性は、しばらく迷うように唇を結んでいたが、

やがて観念したように口を開いた。


「……はい」


「ギルドに依頼書を出したのは、私です」


「あなたが?」


アリアが驚いて見つめると、

その人魚は申し訳なさそうに頷いた。


「名前を書けば、人魚族だと知られるかもしれないと思って……

依頼者名は書けませんでした」


「だから、依頼者不明の依頼に……」


アリアはようやく事情を理解した。


「それに、誰が攫ったのかわからなかったので、

そちらの方が入ってきたのを見て、敵の仲間だと思ってしまったんです」


人魚族の女性は、メルヴァリスへ視線を向けた。


「本当に、申し訳ありません」


「事情があったのなら、仕方のないことです。

お気になさらず」


「主様、ギルドに報告しますか?」


「……いえ、ギルドがどう判断するか分からないから、それはやめたほうがいいわね」


「この人たちが、危険な魔物として

処分される可能性もあるもの」


「……確かに、その可能性はありますね」

ルミシェナは、納得したように小さく頷いた。


「あなたたちにお願いがあります」


「私たちの仲間を、

救い出してはいただけないでしょうか?」


アリアは少し考え込むように黙り込んだ。


「攫ったのがどこの誰かも、

分からないんですよね」


「はい……」


アリアはメルヴァリスたちを見つめる。


「私たちは、アリア様のご判断に従います。

どうか、お望みのままに」


「ありがとう」

アリアはにっこり微笑んだ。


「分かりました。できる限りのことはしてみます」


「……ありがとうございます」

人魚たちは安堵したように息をつき、深く頭を下げた。


「主様、この方たちですが、

ここに残ると危険かと思います」


アリアは少し考えてから、人魚たちへ視線を向けた。


「もしよければ、私たちの城館に避難してもらった方がいいかもしれないわね」


「そこまでしてもらうわけには……」


「部屋なら空いているし、

気にしなくていいわよ」


人魚たちは迷うように顔を見合わせた。


やがて、一人が代表するように前へ出る。


「……では、お言葉に甘えさせていただきます」


その声には、まだ不安が残っていた。

それでも、拒む理由はもうなかった。


「主様、それでしたら私がこの方たちを城館までお連れいたします」


「お願い。ルミなら安心して任せられるわ」


「はい。必ずお守りいたします」


ルミシェナは静かに頭を下げると、人魚たちへ向き直った。


「では、参りましょう」


人魚たちは不安そうにしながらも、ルミシェナに従って小屋の外へ出ていく。


ルミシェナたちを見送ったあと、アリアとメルヴァリスはセレミリアの街へ向かった。


街に着くと、二人はそのままギルドへ入る。


受付にいたカリナが、すぐにアリアたちに気づいた。


「あら、アリアさん?」


アリアは周囲を軽く見回し、声を落とした。


「最近、この辺りで行方不明者が出ていたり、

怪しい集団の噂があったりしませんか?」


「人がいなくなった話は聞かないけど……

妙な話なら、一つあるわね」


「妙な話?」


「ええ。討伐依頼に出ていた魔物が、突然いなくなることがあったの」


「危険な魔物がいなくなっただけだから、

ギルドでは大きな問題にはしていないのだけど……」


「なるほど、分かりました」


「何かあったの?」


「あ、いえ……。

少し気になることがあって」


「気になること?」


「詳しくはまだ言えないんですけど、

この辺りで何か変わったことが起きていないか知りたかったんです」


「そうなの……でもアリアさんらしいわね」


「カリナさん、ありがとうございました」


「いえいえ。ただ、無理はしないでくださいね。

何かあれば、すぐギルドに知らせてください」


アリアは軽く頷き、メルヴァリスとともに受付を離れた。


アリアとメルヴァリスは、

依頼板を確認する。


「討伐依頼が出てる魔物は……」


「アリア様、これなんかどうでしょう?」


討伐依頼

対象:ゼルグロア

分類:魔獣系

推定Lv:30

出現場所:セレミリア北東の森


「討伐依頼の魔物が突然いなくなるなら、

この魔物にも何か起きるかもしれないわね」


「では、討伐ではなく監視を?」


「ええ。まずは様子を見ましょう」


アリアはそう言って、依頼書へ手を伸ばした。


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