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【怪しい依頼書と古い小屋】

お二人の冒険者登録は済みましたが、

パーティ登録はどうします?


「パーティ登録?」


「二人以上で依頼を受ける場合は、誰と一緒に動いているのかをギルドに届け出てもらう決まりなんです。

報酬の分配や、万が一何かあった時の確認にも必要になりますから」


「なるほど……」


アリアは少し考えてから頷いた。


「それなら、お願いします」


「分かりました」


カリナは登録簿を開き、

パーティ登録用の欄に三人の名前を書き込んでいく。


「正式なパーティ名を付けることもできますが、

今は代表者をアリアさんとして登録しておきますね」


「はい、ありがとうございます」


メルヴァリスはその言葉を聞くと、嬉しそうに微笑んだ。


「アリア様と同じパーティメンバーになれるなんて……とても光栄です」


手続きが終わると、アリアは掲示板の方へ目を向けた。

「せっかくだし、依頼も見てみようか」


三人は掲示板の前で依頼書を眺めた。


「色々なのがあるのですね」

ルミシェナが感心したように呟く。


その中で、アリアは一枚の依頼書に目を止めた。


「これ……」


「主様どうかされました?」


「報酬が金貨1枚!?」


メルヴァリスが心配そうに聞く。

「私達で大丈夫でしょうか?」


「うーん、難しいかな?」


「どうかしましたか?」


突然の声に振り向くと……。


そこにはカリナが立っていた。


「カリナさん?」


「気になって見に来ちゃいました」


「丁度よかったです、これなんですが……」


カリナは依頼書に目を通すと、少しだけ表情を曇らせた。


「東の川沿い……古い小屋、ですか」

カリナは依頼書を見ながら小さく呟いた。


「ああ、これは依頼者が書かれていませんね」


「依頼者が?」


「依頼者名がないものは、いたずらや罠の可能性もあります。

正式な依頼としては扱えませんので、こちらで預かりますね」


そう言って、カリナは依頼書を持っていってしまった。


「……」


「アリア様?」


本当は、ギルドが処分した依頼に勝手に向かうべきではない。


それでも、アリアは今の依頼書が妙に気になっていた。

報酬が金貨1枚という高さもそうだが、依頼場所だけが妙にはっきり書かれていたのが引っかかった。


「依頼場所は覚えてるので、

様子を見るだけなら、いいかな?」


「主様の望むままに……」


「私達はアリア様に従うまでですので!」


セレミリアの街を出て、

三人は依頼書に書かれていた場所を目指した。


その場所は東の川沿いに建つ古い小屋だった。


近くの茂みに身を隠し、

中の様子を探る。


「少なくとも、外から見える範囲には誰もいないわね」


「中に行ってみましょうか」


「アリア様、ここは私が……」


「でも一人は危険よ」


「危険があるなら尚更、

アリア様を行かせるわけには行きません」


メルヴァリスの強い眼差しに、アリアは折れた。


「……分かったわ」


「その代わり、何かあったらすぐ知らせてね」


「はい、お任せください」


「主様は私が守ります」

ルミシェナが辺りを警戒する。


メルヴァリスが小屋に近づいていく。


扉まで近づくと、メルヴァリスは静かに扉を開けた。


一度だけアリア達の方を振り返り、

そのまま小屋の中へ入っていく。


時間だけが過ぎていく……。


「反応がないわね、

なにかあったのかしら?」


アリアは小屋の扉を見つめたまま、

不安そうに呟いた。


「主様、私達も確認に向かいましょう」


「そうね。このまま待っている方が危ないわ」


アリアとルミシェナは互いに頷き、

小屋へ向かって足を進めた。


開いたままの扉から、

そっと中を覗き込む。


小屋の中は薄暗く、

古びた机や棚が乱雑に置かれていた。


机の横に、地下へ続く階段が見えた。


「中へ入るわよ、周りに気をつけてね」


周囲に警戒しながら中へ足を進める。


「メルはいないわね」


「地下へ降りたのかしら」


「主様、ここは私が先に行きます」


「お願い」


ルミシェナを先頭に、

二人はゆっくりと階段を降りていく。


「主様、音が聞こえます」


「もしかしたらメルヴァリスが、

戦っているのかもしれません」


「大変、急ぎましょう」


二人は階段を駆け下りた。


階段の下にたどり着くと、

そこにはメルヴァリスの姿があった。


その前には三人の女性が倒れている。


床には水が広がり、

壁には鋭い傷跡が残っている。


「メル、これは……?」


「ああ、アリア様」


「下へ降りた直後、

この者達に襲われました」


「襲われたって……この人達、何者なの?」


メルヴァリスが答える。

「おそらく……人魚族」


「人魚!?」


アリアは思わず声を上げた。


「でも足もあるし、

姿形も私達と変わらないみたいだけど?」


倒れている者達には、

確かに人間と同じ足がある。


「人魚族は陸の上で活動する時は、人間の姿へと変化するのです。ですが、今の戦い方、独特の水の魔力……間違いありません」

メルヴァリスが説明してくれた。


「そうなの……」


アリアは改めて三人を見下ろした。


人魚族が、どうしてこんな場所にいるのか。

それに、なぜメルに襲いかかったのか。


分からないことばかりだった。


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