【二人の冒険者登録】
メルヴァリスとルミシェナに駆け寄るアリア。
「二人とも大丈夫?」
「はい。ご心配をおかけして、すみません」
ルミシェナは落ち着いた声で答えた。
メルヴァリスも、申し訳なさそうに目を伏せた。
「アリア様のお手を煩わせるなど……申し訳ございません」
「怪我をしてないか聞いただけだから」
二人に大きな傷はなさそうで、アリアはほっと息をついた。
「この森にいる魔物にしては、少し手強かったですね」
「そうね。でも、無事に倒せたんだし、今はそれで十分よ」
アリアは倒した魔物へ視線を向けた。
「素材だけ回収して戻りましょう」
アリアは倒した魔物の牙や爪を確認し、
使えそうなものだけを布に包んで荷物にしまった。
「この魔物の素材、欠けてるけど……買い取ってもらえるかな?」
「欠けてはいますが、牙や爪としては使えそうです。多少減額されるかもしれませんが、買い取ってもらえるかと」
ルミシェナの言葉に、アリアは小さく頷いた。
「そうね。他の素材もあるし、まとめて買い取ってもらえるといいんだけど」
素材を回収したあと、
三人は城館へ戻っていった。
その後はそれぞれの部屋で休み、
その夜は何事もなく過ぎていった。
翌朝。
アリアが目を覚ますと、すでにメルヴァリスとルミシェナは起きていた。
「おはようございます、アリア様」
「おはようございます、主様」
「二人とも早いわね……」
「今日はどうなさいますか?」
ルミシェナに尋ねられ、アリアは少し考える。
「朝食を済ませたら、三人でギルドに行きましょう」
「承知しました」
「アリア様の行く場所なら、どこへでもお供いたします」
メルヴァリスの言葉に、アリアは小さく笑った。
「頼りにしてるわ。でも、街ではあまり目立たないようにね」
そのあと三人は、食堂で朝食をとった。
焼いたパンと温かいスープ。
それから、少しの干し肉。
メルヴァリスとルミシェナが、
用意してくれていた。
朝に食べるには十分だった。
食事を終え、
身支度を済ませた三人は城館を出た。
森を抜け、街へ向かう。
今度は一人ではない。
メルヴァリスとルミシェナがそばにいる。
そう思うだけで、アリアの足取りは少しだけ軽くなった。
やがて、街の門が見えてきた。
セレミリアの街に着くと、
メルヴァリスは街並みに目を奪われたように足を止めた。
「メルは大きな街には来たことないの?」
「あまり記憶にはありません……」
メルヴァリスは街並みを見つめたまま、静かに答えた。
「ただ、懐かしいような……初めて見るような、不思議な感じがします」
「そう……。なら、少し街を見て回りながら行きましょうか」
「よろしいのですか?」
「ギルドに行くだけだし、少しくらいなら大丈夫よ」
気分転換にもなるだろうと思い、
アリアたちは街並みを眺めながらギルドへ向かった。
やがて、冒険者ギルドの前にたどり着く。
扉を開けると、
中には多くの冒険者たちが集まっていた。
周囲の冒険者たちが、ちらちらと二人へ視線を向けていた。
赤黒い衣のメルヴァリスと、白い装束のルミシェナ。
どう見ても、ただの新人には見えない。
アリアは周囲の視線に気づき、少し困ったように笑った。
やっぱり、二人は目立つらしい。
受付カウンターへ向かうと、
カリナが顔を上げた。
「あ、アリアさん。今日はどうされましたか?」
「素材の買取をお願いしたくて。それと、この二人の冒険者登録について相談したいんです」
カリナはアリアの隣に立つメルヴァリスとルミシェナへ視線を向けた。
「そちらの方々ですね」
「はい。こちらがメルヴァリス、こちらがルミシェナです。
二人とも、今は私と一緒に行動しています」
メルヴァリスとルミシェナは、それぞれ頭を下げた。
「メルヴァリスと申します」
「ルミシェナと申します」
「冒険者登録ですね。もちろん可能です」
カリナはカウンターの下から二枚の登録用紙を取り出した。
「お名前と、得意な戦い方を書いてください。分かる範囲で構いません」
アリアはそれを二人に渡した。
メルヴァリスとルミシェナは、静かに記入を始める。
二人が用紙に記入している間、
カリナはアリアの荷物へ視線を向けた。
「それと、素材の買取でしたね」
「はい。森で集めた魔物の素材です」
アリアは布に包んだ牙や爪を、
カウンターの上に置いた。
カリナは素材を確認し、慣れた手つきで仕分けていく。
「多少欠けていますが、状態は悪くありませんね。これなら買い取りできます」
「よかった……」
アリアは肩の力を抜いた。
「査定しますので、少しお待ちください」
「お願いします」
しばらくして、カリナが戻ってきた。
「お待たせしました。査定が終わりました」
カリナは小さな皿に硬貨を並べる。
「全部で銀貨四枚と銅貨八枚になります」
「ありがとうございます」
アリアは受け取った硬貨を袋にしまった。
アリアが硬貨をしまったところで、
メルヴァリスとルミシェナも書き終えていた。
「こちらでよろしいでしょうか」
二人は記入済みの用紙をカリナへ差し出した。
カリナは二枚の用紙に目を通し、
小さく頷く。
「はい。問題ありません」
カリナは用紙を受け取ると、
手元の登録簿に二人の名前を書き込んだ。
「それでは、メルヴァリスさんとルミシェナさんを冒険者として登録します」
「よろしくお願いします」
二人とも、アリアの隣で丁寧に一礼した。
「アリア様のお力になれるよう、努めます」
「主様をお守りできるよう、頑張ります」
「街では目立たないようにって言ったばかりでしょ……」
アリアが小さく苦笑すると、
カリナも笑みを浮かべた。
「ずいぶんと慕われているようですね……」
明らかに、他の新人冒険者とは雰囲気が違う。
その様子にカリナは少し戸惑ったが、
すぐに受付としての表情へ戻った。
「いえ、失礼しました。鉄章バッジの準備をしますね」
しばらくして、カリナは二枚の鉄章バッジを差し出した。
「こちらが登録証になります。二人とも、まずは鉄章冒険者からになります」
「分かりました」
アリアは鉄章バッジを受け取り、
メルヴァリスとルミシェナへ渡した。
これで、二人も正式に冒険者になった。




