表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/50

【守られてばかりじゃいられない】

白い衣が舞い、

赤黒い血の鞭が空を裂く。


ルミシェナの結界が血鞭を弾く。


だが、メルヴァリスはすぐに手首を返し、

横合いから血鞭を振るった。


「メル、やりすぎ……」


ルミシェナは一歩も退かず、

広げた衣を盾のように操る。


対するメルヴァリスは、

指先から伸ばした血鞭をしならせ、

縦横無尽に攻撃を繰り出していた。


このまま続けたら危ない。


アリアは反射的に声を上げた。


「ちょ、ちょっと待って!」


アリアの声が響いた瞬間、

二人の動きが止まった。


赤黒い血鞭が空中でぴたりと静止する。

白い衣は、結界を保ったまま静かに揺れていた。


「……主様?」


「どうかなさいましたか、アリア様」


二人が同時にこちらを見る。


アリアは二人を見比べ、

不安そうに小さく息を吐いた。


「これ以上やったら、本当に怪我するでしょ。

もう終わりにして」


「承知しました、主様」


「アリア様がそう仰るのであれば」


二人は同時に構えを解く。

だが、その表情にはまだ少しだけ名残惜しさが残っていた。


アリアが周囲を見回すと、

地面には血鞭で抉られた跡がいくつも残っていた。


「はぁ……結構被害大きいわね」


「ところで、ルミって攻撃してなかったよね?」


「はい……今の私には補助的な魔法と、

防御スキルしか使用できないのです」


「今は、ってことは……そのうち使えるようになるの?」


「可能性はございます。

ですが、主様をお守りできるのなら、

私はそれで十分です」


「そうなんだ……」


アリアはそう呟いた直後、

ふらりと体を傾けた。


「主様!?」


「大丈夫よ……ちょっと疲れただけだから、

今日はもう休みましょう」


そうして三人は、黒い城館へと入っていった。


内部は、外観ほど禍々しくはなかった。

薄暗いものの、

どこか落ち着いた空気がある。


「……外よりは、普通なのね」


「アリア様が過ごしやすいよう、内装は控えめにしております」


「これで控えめなんだ……」


アリアはそう呟きながら、

メルヴァリスに案内されるまま奥へ進んだ。


用意されていた部屋には、

大きなベッドと簡素な机が置かれていた。


「本日はお休みください」


「うん……そうする」


アリアは小さく頷くと、

ベッドに横になり、静かに目を閉じた。


久しぶりに、体の力が抜けていく。

二人がそばにいる。

それだけで、少し安心できた。


……どれくらい眠っていただろうか。


外から聞こえた物音に、アリアはゆっくりと目を覚ました。


「何かあったのかな?」


アリアはベッドから起き上がり、

窓から外を覗いた。


城館の前で、

メルヴァリスとルミシェナが何かと戦っている。


「あれは……なに?」


アリアは慌てて階段を駆け下り、城館の外で戦う二人の元へ駆けつけた。


「一体何があったの?」


「アリア様、申し訳ありません」


メルヴァリスがそう言って頭を下げる。


ルミシェナは前に立ち、結界を張っていた。


メルヴァリスとルミシェナの衣には、

ところどころ裂けた跡があった。


「アリア様がお休みになられた後、

森から魔物が現れたのですが……」


「どうやら普通の魔物ではないようでして」


アリアは魔物へ視線を向け、鑑定を発動した。


バルグレオス

Lv31 獣系

筋力:72

敏捷:65

魔力:18

体力:126

特性:硬い毛皮


「かなり強いわね」


アリアはメルヴァリスとルミシェナを見た。


二人とも疲れた様子を隠せていない。


それでも、城館の前から一歩も退かず、

アリアを守るために戦ってくれていたのだと分かった。


「ルミ、下がって!」


「今までよく耐えてくれたわね。

後は私に任せて、少し休んでいて」


アリアはメルヴァリスとルミシェナに微笑んだ。


「アリア様……」


「主様、後はお願いします」


アリアは静かに魔物の方へ歩み出た。


雲が流れ、月明かりが差し込む。

その光に照らされ、魔物の姿がはっきりと浮かび上がった。


「怖いけど……今なら、やれる」


アリアはバルグレオスを見据え、

新たに得たスキルを発動する。


『差分吸収』


次の瞬間、バルグレオスの身体がわずかに揺らいだ。


アリアが狙ったのは、

筋力と敏捷の数値。


それぞれを、50ずつ下げる。


バルグレオス

筋力:72 → 22

敏捷:65 → 15


「……下がった」


奪った力が、今度はアリアの中へ流れ込む。


アリア・フェルロード

筋力:34 → 84

敏捷:38 → 88


全身に力が満ち、足元が軽くなる。

さっきまで速く見えていた魔物の動きが、今なら追える気がした。


けれど、その分だけ消耗も激しい。

動くたび、体の奥から魔力が抜けていくのが分かった。


体力の低い自分が、

あの魔物の攻撃をまともに受ければ危ない。


なら、受ける前に避ければいい。


「これなら……見える」


アリアは短剣を握り直し、

バルグレオスへ向けて一気に駆け出した。


「長引かせるわけにはいかないわ」


アリアはバルグレオスの周囲を駆け回り、

その動きを乱していく。


攻撃のチャンスをうかがいながら、

少しずつ距離を詰めていく。


バルグレオスがアリア目掛けて、

地面を蹴った。


「遅い……」


アリアは突進をぎりぎりでかわし、

すれ違いざまに短剣を脇腹へ突き立てた。


だが、硬い毛皮に阻まれ、

刃は一瞬だけ止まった。


「……それでも!」


アリアは歯を食いしばり、

強化された腕にさらに力を込める。


短剣の刃が、硬い毛皮を押し裂くように沈んだ。


バルグレオスが苦しげに吠え、

怒りに任せて爪を振るう。


けれど、その動きはもう見えていた。


アリアは身を低くしてかわし、

さらに一歩踏み込む。


長引かせる余裕はない。


魔力が削られていく感覚を押し殺しながら、

アリアはもう一度、短剣を突き立てた。


硬い毛皮が抵抗する。

それでも、今のアリアの力なら押し切れる。


「これで……!」


刃が深く入り、

バルグレオスの巨体が大きく揺れた。


低いうなり声を漏らした魔物は、

最後に地響きを立てて崩れ落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ