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執着王子から逃げた令嬢は、秘密だらけの天才魔導師に拾われました  作者: ゆにみ
一章

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27、その男の目的は(sideユアン)

 時間は少し遡る。薬師ギルドへ来客があったとき、ユアンは客を出迎えた。


 「いらっしゃ〜い……って、この前のお兄さんじゃーん」


 扉を開けたユアンは、思わず目を瞬かせた。現れたのは先日訪ねてきた男だった。


 「おい。この前嘘をついただろう」


 開口一番、それだった。思い当たることといえば……あれかな?

 それに妙に苛立っているように見える。

 

 「なんのこと〜?」


 「魔法師のことだ」


 (あ〜やっぱり?)


 そういえば魔法師を探しているとか言っていたっけ。

 思い当たるのはユリスのこと。でも、あの時はなんとなーく情報を渡さないほうが良いような気がして。

 敢えて何も言わなかったんだよねー。


 目の前の男は眉を顰め、苛立った様子を隠す気がなさそうだった。


 単なる勘だけど、単純な人探しではない気がする。


 「ああ〜。まだ探してたんだ」


 リーゼとユリスが研究に参加するようになってから、二人のことも少しずつ分かってきた。

 今や二人は大事な仲間とも言える。そう簡単には仲間を売る気はない。


 だってあんなに真剣なんだ。悪い人じゃないだろう?


 「答えろ」


 「この前に言ったことは本当だよ〜。それにしても、よっぽど大事な人なんだね」


 その言葉に男は一瞬だけ沈黙した。


 「…………ああ」


 短い返答だったけれど、その一言には妙な重さがあった。


 「だからギルドの中に案内してくれないか」


 「うーん。それは難しいかなあ〜」


 「なぜだ」


 「大事な薬草もあるし、研究途中の資料もあるし。関係者以外は入れないんだよね〜」


 きっぱりと断ると、男はしばらく黙り込み胸元へ手を伸ばした。


 (……なんだ?)


 雰囲気からしてまだ諦める気はなさそうだった。思っていたよりも厄介だな……。


 そう考えた瞬間だった。男が取り出しかけたものが視界に映る。


 金色に輝く薔薇の紋章――。


 (あれって……)

 

 その時、背後で小さな物音がした。

 ――ガタッ。


 振り返ると、扉の隙間から顔を覗かせるリーゼの姿があった。顔色は真っ青だった。まるで何かを見て凍りついているように立ち尽くしていた。


 (……リーゼ?)


 どうしたんだろう、そう思った次の瞬間。


 突然、空気が変わった。ぞくりと背筋が冷える。


 「……見つけた」


 男が放つ低い声を、僕は聞き逃さなかった。


 見つけた? どういうことなんだ……?


 すると男はカウンターを飛び越え、そのまま奥へ向かおうとする。


 (まさか……!)


 ユアンはそこでようやく気づく。この男の目的はユリスじゃない。


 (リーゼだ……!)


 「ちょっと待って!」


 ユアンは咄嗟に飛びつき、男の腰へしがみついた。


 「何をする」


 「それはこっちのセリフだよ!」


 必死に腕へ力を込める。思っていたよりも力が強い。


 「中には入れないって言ったでしょ!」


 「だが見つけた。俺は行かないといけないんだ!」


 「何を言っているのか分からないよ!」


 僕は男を必死に押さえながら、後ろを見た。


 リーゼと目が合うと、僕は「逃げて」と口を動かした。

 リーゼの目が大きく見開かれる。そして次の瞬間、我に返ったように奥へ駆け出した。


 それを見届けた瞬間。


 「――邪魔だ」


 男から舌打ちと共に低い声が落ちた直後。

 突如暴風が吹き荒れる。


 「うわっ!?」


 身体が宙に浮き、次の瞬間には壁へ叩きつけられていた。


 「痛ったぁ……」


 息も詰まるように痛かったけれど、僕は必死に立ち上がる。

 けれど、男はそれよりも早くギルドの奥へ走り去っていってしまったのだ。


 「……っ!」


 ユアンは歯を食いしばる。


 (まずい。これは本当にまずいことになったのかもしれない……!)

お読みいただきありがとうございます!

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