27、その男の目的は(sideユアン)
時間は少し遡る。薬師ギルドへ来客があったとき、ユアンは客を出迎えた。
「いらっしゃ〜い……って、この前のお兄さんじゃーん」
扉を開けたユアンは、思わず目を瞬かせた。現れたのは先日訪ねてきた男だった。
「おい。この前嘘をついただろう」
開口一番、それだった。思い当たることといえば……あれかな?
それに妙に苛立っているように見える。
「なんのこと〜?」
「魔法師のことだ」
(あ〜やっぱり?)
そういえば魔法師を探しているとか言っていたっけ。
思い当たるのはユリスのこと。でも、あの時はなんとなーく情報を渡さないほうが良いような気がして。
敢えて何も言わなかったんだよねー。
目の前の男は眉を顰め、苛立った様子を隠す気がなさそうだった。
単なる勘だけど、単純な人探しではない気がする。
「ああ〜。まだ探してたんだ」
リーゼとユリスが研究に参加するようになってから、二人のことも少しずつ分かってきた。
今や二人は大事な仲間とも言える。そう簡単には仲間を売る気はない。
だってあんなに真剣なんだ。悪い人じゃないだろう?
「答えろ」
「この前に言ったことは本当だよ〜。それにしても、よっぽど大事な人なんだね」
その言葉に男は一瞬だけ沈黙した。
「…………ああ」
短い返答だったけれど、その一言には妙な重さがあった。
「だからギルドの中に案内してくれないか」
「うーん。それは難しいかなあ〜」
「なぜだ」
「大事な薬草もあるし、研究途中の資料もあるし。関係者以外は入れないんだよね〜」
きっぱりと断ると、男はしばらく黙り込み胸元へ手を伸ばした。
(……なんだ?)
雰囲気からしてまだ諦める気はなさそうだった。思っていたよりも厄介だな……。
そう考えた瞬間だった。男が取り出しかけたものが視界に映る。
金色に輝く薔薇の紋章――。
(あれって……)
その時、背後で小さな物音がした。
――ガタッ。
振り返ると、扉の隙間から顔を覗かせるリーゼの姿があった。顔色は真っ青だった。まるで何かを見て凍りついているように立ち尽くしていた。
(……リーゼ?)
どうしたんだろう、そう思った次の瞬間。
突然、空気が変わった。ぞくりと背筋が冷える。
「……見つけた」
男が放つ低い声を、僕は聞き逃さなかった。
見つけた? どういうことなんだ……?
すると男はカウンターを飛び越え、そのまま奥へ向かおうとする。
(まさか……!)
ユアンはそこでようやく気づく。この男の目的はユリスじゃない。
(リーゼだ……!)
「ちょっと待って!」
ユアンは咄嗟に飛びつき、男の腰へしがみついた。
「何をする」
「それはこっちのセリフだよ!」
必死に腕へ力を込める。思っていたよりも力が強い。
「中には入れないって言ったでしょ!」
「だが見つけた。俺は行かないといけないんだ!」
「何を言っているのか分からないよ!」
僕は男を必死に押さえながら、後ろを見た。
リーゼと目が合うと、僕は「逃げて」と口を動かした。
リーゼの目が大きく見開かれる。そして次の瞬間、我に返ったように奥へ駆け出した。
それを見届けた瞬間。
「――邪魔だ」
男から舌打ちと共に低い声が落ちた直後。
突如暴風が吹き荒れる。
「うわっ!?」
身体が宙に浮き、次の瞬間には壁へ叩きつけられていた。
「痛ったぁ……」
息も詰まるように痛かったけれど、僕は必死に立ち上がる。
けれど、男はそれよりも早くギルドの奥へ走り去っていってしまったのだ。
「……っ!」
ユアンは歯を食いしばる。
(まずい。これは本当にまずいことになったのかもしれない……!)
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